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第67話『コンビニ』

かつて職場だったコンビニの前に来るとそこは空き店舗になっていた。近所の人に聞くと店長は頑張っていたが新しくできた店舗に客を奪われて売り上げがでず、2か月前に閉店したそうだった。


「あの店の店員凄い態度悪かったからな。新しい店は若い人も多いしサービスも接客もいいからすぐに閉店したよ。店長が気の毒だったな。いつも店員が粗相したら謝らないといけないし、親会社のマネージャーにいつも怒られていたし…」

「そうですか…」

「何でも親会社が大型スーパーを止めてコンビニチェーン店に力を入れる方針にして売り上げがいつもゴッソリ持っていかれるって嘆いていたよ」

「…」

「今は新店舗で彼働いているよ。俺そこ利用してて会っているから」

「そうなんですね。ありがとうございます」


清志は早速その店に行ってみることにした。


――――――――――――――――――――――――――――――― 


―コンビニエンスストア【マート21】


「いらっしゃいませ~」


新店舗だけあって綺麗な内装の店内は清潔感と解放感にあふれていた。

主な客は学生、仕事の昼休憩に来た社会人。近隣の住宅街から来た家族連れや独身貴族の中年である。交差点のある道路前で立地条件も良く、店員の笑顔も溢れているいい店だった。


営業時間は朝9時から夜の9時までの12時間になっている。これは今までの24時間営業スタイルでは利益よりも電気代や人件費と言った経費が掛かりすぎるので時間の短縮化によって節約し利益を上げる方針となった。深夜営業は犯罪の危険性もあるので英断だとメディアは評価している。


『これなでは利益を追求するばかりでスタッフの事を考えていなかったので、これからは販売店としてのクオリティを上げるべく、問題点を1つずつ解決していき将来的には安定した売り上げを維持できることを目標にしていきたいと考えています』


マート21の親会社はコンビニエンスストアを売り上げのメインにしていくとともに、これまでのフランチャイズのやり方を打開すべく、【会社の資本は人材】をスローガンに一時的な売り上げではなく将来的な展開を見た人材育成や各店舗の売り上げデータ収集、新商品開発にも力を入れている。


新商品コーナーの棚には、『塩キャラメルのふんわりドーナツ』が置かれており、甘しょっぱい味覚とふんわりした感触が売りのスイーツが上段から下段まで置かれており、客が足を止めるとその商品と共にドリンク商品も買っていく。


甘いスイーツと相性がいいブラックコーヒーやカフェオレ、モカが主に好まれて買われていく。


雑誌類は必要最低限置かれており、主にゴシップ誌が前面に置かれている。グラビアモデルを表紙に最近の主な出来事を大げさなテロップと共に掲載している。ほとんどはウェブサイトのニュースで書かれているせらぎねら☆九樹に関する事、政治に関する事、山内茂の隠されたスキャンダル情報など、売り上げのために多少の過激さを加えた内容が消費者の興味を刺激するのだろう。

その横にはコミックや経済・生活のノウハウ知識をまとめた参考書や話題の小説が置かれている。


とりあえずコミックを休憩に読みたいので欲しいジャンルの物を購入した。お菓子、飲み物、冷凍食品、弁当、カップラーメン。欲しいものを買い物かごに入れレジに向かった。


「いらっしゃいませ。レジ袋はご利用しますか?」

「2枚下さい。大き目でお願いします」

「かしこまりました。お弁当はあたためますか?」

「お願いします。後フライドチキンお願いします」

「かしこまりました」


女性店員は丁寧な対応で商品をレジ袋に入れていき、電子レンジで温めた弁当とフライドチキンを袋に入れ、他の商品をもう1枚の袋に入れる。


「合計で2985円になります」

「1万円からで」

「はい。ポイントカードはございますか?」

「いえありません」

「かしこまりました。ではおつり7015円のお返しになります」


おつりを受け取り清志は店を後にした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


店長に会えなかったものの、久しぶりの日常の買い物に喜び割高ながらも購入した。部屋に帰ると、冷凍ピザをレンジで温めて調理し弁当を開ける。冷凍庫で作っていた氷をコップに5個入れて。その中にコーヒーを注いで食事の準備をした。

スマホで動画を再生してみながらまずはピザを口に運ぶ。清志の好みはピザ・モッツアレラ。イタリアの国旗を模した具材を使い、最もポピュラーなピザである。


「うまっ」


普段は自炊をしている清志だが、ピザを作ることは出来ない。こうしてたまに食べるピザに贅沢を感じていた。生地の触感ととろけるチーズ、絡み合うバジル。アイスコーヒーで頬張ったピザを腹に流し込む。


「うまっ!」


次に食べるのは弁当。価格600円の【メガ盛りのり弁当】。通常ののり弁当より飯の量も具材も多く入っている。近年の弁当は価格の安定のためコストダウンで具材のグレードダウンが目立っているが、マート21ののり弁は魚フライ、イカ天、唐揚げ、しゃけの塩焼き、かまぼこ、きんぴらごぼうが入っており豪華である。

 幕の内弁当、焼き肉弁当と数々のジャンルの中でも清志はのり弁当が好きだ。肉系だけでなく魚やフライがバランスよく入っているので様々な味を楽しめる。店によってのり弁当のおかずは異なるが、マート21ののり弁当はイカ天が磯部揚げになっているので、即購入を決めた。


そして最後に『塩キャラメルのふんわりドーナツ』とスナック菓子を食べた。


「新発売のポテチ上手い」


新発売の焦がしニンニクネギ味のポテトチップスとドーナツは相性が良かった。


『…というわけで今回の解説はここまでにします。次回の動画では今後のライバー達の予想と、せらぎねら☆九樹の隠された陰謀について解説します』


スマホで見ていた解説動画が終わり、次の動画が始まる。


『どーも太田真のゲーム実況はじまるよー!!』


「太田さん…! 配信頑張っているんだな…」


動画サイトの自動再生機能で太田真の動画が再生された。彼のチャンネルは登録者が20万人となり、収益化に成功しているようだった。姉妹チャンネルに中井洋子の動画チャンネルもあり彼らはゲーム終了後に付き合っているようだった。


「太田さん売れて良かったなあ。中井さんも新しく活動始めているみたいだし…」


サバイバルゲームに参加したメンバーのその後が少しわかり清志は嬉しくなった。


「太田さんもまた会えるかなあ…」


動画を見た後、感想を書き次の動画を再生させた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―マート21


夕方5時を迎えるころ、シフト交代でスタッフが現れる。


「お疲れ様でーす」

「ああ天城さん。おはようございます。今日はパンの廃棄が多いから後で好きなのを持って行っていいよ」

「マジですか。ありがとうございます」


サバイバルゲームで清志とチームを組んでいた天城あずさはコンビニで働いていた。賞金はもらっていたものの、『何か働いていないと落ち着かない』という理由で、短時間勤務のシフトで採用を貰い働いていた。


「以前はもっと多かったけどそれでも出ちゃうからさ。捨てるのももったいないし、店長の私が許可を出せば持ち帰りオーケーだからね」

「後でいただきます」


コンビニの廃棄弁当・総菜パンはほとんどが持ち帰ることが店のルールによってできなくなっている。というのも廃棄予定の商品でもその所有権はコンビニ店舗にある事、また賞味期限が過ぎているので、万が一体調不良や食中毒を起こされても責任が取れないのが主な理由と言われている。


最もそう言ったケースは稀なのでしっかり保存しておけば廃棄商品が傷むことはあまりない。


「今日は長野さんとお願いするね。彼女も今月から働いているから仲良くしてあげてくれ」

「わかりました」


午後5時から夜10時までの休憩30分有のシフト。

労働時間は4時間半と短いが、9時まで営業しているが、学校・仕事帰りのお客さんが多く、残り1時間は店の清掃に使うため肉体労働が多い。


持ち込んだソフトドリンクを飲んであずさは仕事を始めた。




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