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第65話『ペル・ゲーム9』

追い詰められた神崎。パスの権利を使い、清志もパスでターンを返す。ミッションをする以外の選択肢が無くなった神崎は敗北となり、清志チームが勝利。

合計金額695万1050円を手にすることになった。


「やったー! 俺達勝ったんだ!!」


宮野次郎が喜びの叫びを上げた。


「…よかった清志君…!」


皆が清志の元に集まり勝利を喜んだ。


「あ~あ…。負けちまったか」

「良いんじゃないの? 地道に配信活動生活していけばいつかまたチャンスはあるわよ」


沢田、高松、レヴン、霧山達は早々に退場していった。


「くっ…うぐ…っ…!」


『ゲームオーバーです神崎美波。清志君、おめでとうございます。ペル・ゲームに隠された真意を見つけ勝利した君に敬意を表します』


モニターに映し出されたせらぎねら☆九樹はLure‘sのメンバーと共にゲーム勝者である清志を称えていた。


『神崎さん。あなたはこのゲームでチーム、そして側近からの信頼を失ってしまった。それは他でもなくあなたの本質である身勝手さによるものです。勝負はそこで決まってしまった』

「…たかが配信者が言ってくれるじゃない」

『では、ペル・ゲームに負けたあなたには罰ゲームの執行に取り掛かりますか』

「聞いてないわよそんな話」

『ええ。話したらバラエティ的に面白くないじゃないですか』


せらぎねら☆九樹はそう言って指を荒らすと生放送を切り、編集した動画を流し始めた。


【総編集! 神崎一族と資産家の蛮行! 日本の裏で暗躍する金の亡者たち】


流れている動画はこれまで貯めてきた100万円サバイバルを観てきた資産家・政治家達の様子や彼らの悪事の様子、そして彼らの悪事の被害にあった者たちの言葉。

どんなドキュメンタリーよりもリアルで、視聴者の感情に訴えかけるモノだった。


『我々の税金は彼らの財布にむしり取られ、その私服は欲望を果たすためばらまかれる…』

『彼らは国民の言葉を無視し、自分達の私利私欲のために政治を行っている』

『彼らを裏で操っている神崎家は政治家達を更に無能にさせている!』


そして映し出される神崎幸太郎の寝たきりの姿、それが動画によって人々の目にさらされる。


「いや! やめて! やめてえええええ!!」


『神崎幸太郎氏は滑落事故で寝たきりとなっており、今後の回復の見通しはない模様。彼が貯めに貯めた財産は神崎美波の元に集まっており…』


「そんな…なんでこんなひどい事…」

『さあ? 今までの行い故じゃないですか?』

「終わりだわ…神崎家…」


「九樹さん…。あなたはこのために…?」


ペル・ゲーム最大の目的がこの暴露の為だと思うと清志はせらぎねら☆九樹に畏怖を感じていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―山内茂の仕事部屋


「山内さん! 政府関係者やマスコミ・記者からの連絡が鳴りやみません!! 動画サイトに流れている暴露動画の件で…!」

「狼狽えるな! マスコミの電話は全て無視しろ。根拠のない誤報を流されたら困るからな。政府関係者には対応を各々にさせろ。必要なことはワシが行う!」

「は、はい!」

「それと今から連絡する奴がいるから誰もいれるな」

「か、かしこまりました!!」


山内の部下たちは指示を受けて行動に移った。山内は連絡用のスマホを取り出し、せらぎねら☆九樹に電話を繋げた。


「してくれたな」

『ああ。山内さん、あなたの事は一切伏せてますから安心してください』

「そんなことしたらワシが疑われるだろう」

『あなたならそれくらいどうってことないでしょう』

「貴様は本当に良い性格をしているな」

『それに神崎が邪魔だったのはあなたもそうだったでしょう』

「まあな。他の政治家を出し抜くためには協力せざるを得なかったが、いずれ悪事の数々は世間に知らされることになっていただろう。貴様はどうする気だ?」

『と言いますと?』

「ここまで事をしたんだ。貴様は同業者だけでなく政界も完全に敵に回してしまった。配信活動も迂闊には出来んだろう」

『心配してくれるんですか?』

「…貴様にはそれなりに借りがある。あ奴の事も調べてくれたからな」

『だから法律を強化したのでしょう。だけど、自分で手を下せば…』

「もう覚悟はできている。どうせワシは長生きできん。ならこの命は生涯をかけてやるべき使命を果たすために使う!」

『そうですか。私は樒さん達としばらく隠遁生活を送りますよ』

「配信業から離れるつもりか」

『まあ、元々ペル・ゲームをやった後そうするつもりでした。私の目的が達成できた以上100万円サバイバルもやる必要はなくなりましたし。もう他の配信者を巻き込む必要もないでしょう』

「…そうか。とりあえずワシで出来る事はやっておく。達者でな」

『ええ。4月、お楽しみにしていてください』

「それはどういう…?」


そこでせらぎねら☆九樹との連絡は途絶えた。もう一度連絡しようとしたが、『おそれいります。こちらの電話番号は現在つかわれておりません』と録音された声が流れるだけで、二度と連絡できなかった。


その日。ペル・ゲームが終わった後、せらぎねら☆九樹のチャンネルは動画サイトから消えた。


せらぎねら☆九樹の存在は世間から消えたように思えた。だが彼の物語はまだ幕を引いていない。


清志達はスタッフの手により眠らされ会場から護送された。



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