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第60話『ペル・ゲーム4』

清志は賞金差を作りながらも全てのカードの情報を手に入れた。そして逆転の為の一手として8番のカードのジョーカーミッションに挑む。クリアできれば200万の賞金と相手から賞金を選んで獲得し、自分のミッションを押し付けることが出来る。


「清志君。ここは私に任せて頂戴」

「つばささん。大丈夫ですか?」

「心配しないで。これでも配信歴7年のベテランなんだから。色々なジャンルのゲームもやってきてるから任せて頂戴!」


自信を見せてミッションに挑む蒼空つばさ。スタッフと樒はノートパソコンを用意する。チャレンジするのはダウンロードゲームサイトから選ばれたゲーム。


『フューチャーテイル』


というRPGである。このゲームは1年前に作成したプログラマーのSNS投稿で話題になった。


『1流企業だからっていいゲームが作れるとは限らない。オレの方がもっといいゲームを作ることが出きる! オレのゲームはこれまでのゲームを凌駕する作品になる!』


と言ってリリースしたはいいが、プレイヤーからの評価は散々だった。

オリジナルの無いストーリー。面倒なパーティーシステム。バグって役に立たないパスワード。


「自分の技術力を自慢したいだけの独りよがりな作品と言うイメージです。頑張っているのはわかりますが商品としてもゲームとしても正直不合格だと思う」


とのユーザーの声が相次いだいわくつきの作品だ。


「大丈夫ですかね」

「大丈夫です!。確かこのゲームはRTA(リアルタイムアタック)だと4時間半でクリアした動画もあったし、5時間の有用があれば十分クリアできると思います!」


こうしてゲームチャレンジが始まった。つばさがチャレンジ中は神崎チームは休憩時間となる。


神崎は用意されたVIPルームで仮眠を取り、チームメンバーは控室で待機となった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


『フューチャーテイル』

そこはモンスターと人間が共存するパラレルワールドの地球。だが突如凶暴化したモンスターは魔王サダオーンの命令で人間に攻撃をし始め世界征服をし始める。

そこで大統領のリン・カーは魔法使い・ティムにモンスターを封印し改心させ使役する『モンスターシール』を渡して、改心したモンスターと共に魔王サダオーンを倒す旅に出たという設定のゲームだ。

 世界観がアメリカをイメージして作られたりなんでモンスターと人間が共存できたのかよくわからない部分もあるが、先ずは村長の家に行って最初の使役できるモンスターのシールを貰うことになる。


「すきなモンスターを1体選ぶんでまんねん」


海外を舞台にしているはずなのにどかこの方言のような言葉を話す村長。彼から提示されたのは、


【火炎系モンスター:ヒノゴクウ】

【水系モンスター:ドンガーメ】

【植物系モンスター:クサマロン】


の3体のモンスター。最速クリアを目指すため火力の高いヒノゴクウを選び、特典として100テイルの金とシール5枚を貰う。ちなみにクサマロンを選ぶと苦戦するので縛りプレイをする人以外は選ばない方が良いと言われている。


この後道中でモブキャラの〈はなたれ小僧〉と戦い勝利した後


「おまえ強いな!このモンスター弱いけどお前なら強くできそうだな!」


と彼はモンスターシールに封印されている〈エレキラット〉を渡す。このゲームの問題点の1つであり、道中にモンスターはエンカウントされずモブキャラのとの戦いで勝つとモンスターを貰えるという手段でしかモンスターが渡されないことである。

そのため『レベルが足りなければレベル上げをすればいい』と言うRPGの鉄則が使えない。そしてモブキャラの持っているモンスターを把握すれば強いモンスターを得られればいいので戦闘をさほどする必要がなくなる。

更にモンスターシールは『シール屋』で転売して金にできるので、モンスターシールをある程度取得して、『シール屋』で強力なシールを得れるという現代の転売屋も驚くような攻略法があるのだ。


蒼空つばさは5人ほどトレーナーを倒してヒノゴクウのレベル上げも兼ねてモンスターシールを集め、シール屋でレアモンスターである【魔界騎士ヘルバスター】を購入した1200テイルで購入できる序盤最強のモンスターであり、レベルは購入時から20でタイプ一致の必殺技・魔導騎士一閃で敵を一撃で倒すことが出来る。


魔王サダオーンに挑むには8つの砦にいる魔王八将軍と戦い【魔王城の鍵】を8つ集める必要がある。


【ヘルバスター】が単体で八将軍の手持ちモンスターを倒していき、体力が危なくなったらヒノゴクウを壁役にして体力をアイテムで回復し、捕獲のモンスターをヘルバスターを無傷でバトルに出すためにクッションにしてヘルバスターで倒していく。それによって出したモンスターに経験値を与えつつ、効率的に戦闘を行っていった。


戦闘に勝てば経験値と金とアイテムをドロップするので。必要のないアイテムを売って必要な回復アイテムを買って戦いに行く。このサイクルを繰り返してパーティメンバーを整へて敵を倒すことをルーティンで繰り返すのだが、レベルが上がると別の問題が発生する。


『エンゴクウの技は外れた!』


「くっ…!威力があっても外れたら仕方ないわ…!」


5人目の八将軍との戦闘時、レベルが上がってヒノゴクウが進化したエンゴクウが相手のモンスターを攻撃したが外れた。

このゲームではレベルが上がると攻撃が外れるようになる。命中率に設定が攻撃力が上がるごとに低くなっていき、このゲームの最大レベル30になると命中率は60パーセントになる。半分よりも高いがこのゲームをプレイしたプレイヤーはほとんどの攻撃が外れているように思い『レベルが上がれば戦闘に優位になる』というRPGのセオリーが通用しない使用になっている。


このような仕様にした理由としては『レベルが上がって戦闘が単調になるのを防ぐため』らしく、ステータスも設計がいい加減であり、レベルが上がるごとに攻撃力が3倍になるので、レベルを少し上げただけでも簡単に倒せるようになる。その対応策らしいが攻撃が当たらず戦闘が無駄に長引いてしまうためにプレイヤーはストレスがたまり、ゲームを途中でやめてしまうことが多かった。


この仕様のせいでプレイ時間が長引くが、この命中率の低さをカバーする方法をつばさは見つけた。


『エンゴクウはアイテムを利用した。火炎弾で326のダメージを与えた。相手モンスターは倒れた』


命中率の低さはアイテムまで影響しておらず、攻撃専用アイテムをモンスターに使わせることでモンスターが覚えている技よりも命中率が安定し高火力のダメージを与える事が可能になる。


攻撃用のアイテムを使い5人目の将軍を倒し、相手モンスターの『溶解魔獣 ドロドーロZ』を入手すると集めたモンスターシールを転売し、ウルトラレアの強力な新たなモンスターシール【天空戦姫アルデリア】を入手した。


数少ない神属性を持つモンスターであり、【リサイクルループ】の特性で使ったアイテムを回収できるのでこのゲームに置いてバランス崩壊シールとまで言われている。


これにより6人目の将軍も倒し、3時間でゲームの半分ほどまで進んだ。挑戦終了まで残り2時間ほどになったが、リズムを失うことなくギリギリ間に合うペースで進んでいた。


――――――――――――――――――――――――――――――――  


―休憩室。


神崎チームの面々は疲れを取るため蒼空つばさがゲームに挑戦している間休憩室で仮眠を取ったりスマホを弄ったりしていた。


「なあ…。ホントに俺たちこれで良かったのかな」

「ああ? 今更後戻りはできねえだろ」

「そりゃそうだけど。金の為とは言えあの女の味方をしてよかったのかなって…」


沢田は報酬を条件に神崎のチームに入ったが、他のライバー仲間にどこか後ろめたい所がありこのまま続けていいのか悩んでいた。


「沢田。これは俺達に与えられた数少ないチャンスなんだぜ」

「そうは言っても…」

「事務所は俺達みたいな登録者の少ないライバーの事なんざどうなろうが何も思っちゃいないんだ。だったら自分の手で危険を冒してでも名前が広がるようなイベントに出るべきだろう。この『ぺル・ゲーム』は先輩ライバーですら出る事をためらうようなゲームだ。これに勝てれば俺達だって登録者10万人越えも夢じゃないはずだ!」

「高松先輩…」


長年売れないライバー生活の打開のため神崎チームに入ったライバーは野心に燃えていた。




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