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第59話『ペル・ゲーム3』

神崎のターンに更に逆転され金額は清志チームが153万。神崎チームは410万円と2倍の大差で突き放されていた。清志チームもこれ以上引き離されないために高額ミッションに挑むつもりで気合を入れなおす。


「7番のカードを選びます」


清志は7のカードを捲る。


『10万円』


「くっ…たった10万円かよ!」

「…そう簡単に当たるわけないわよね」


2枚のミッションが書かれているカードを捲った。


『MISSION:歴代徳川将軍を7人答えろ。(制限時間10分)』


「…私に任せてください」


歴史の問題に強い淀川葵がこのミッションに挑み、〈徳川家康〉・〈徳川慶喜〉・〈徳川家宣〉・〈徳川綱吉〉・〈徳川家光〉・〈徳川秀忠〉・〈徳川家継〉の7人をホワイトボードに書いてミッションを成功させた。


「流石ね葵」

「ありがとうあずさちゃん」


これで10万円が入るが、ここで清志にある疑問が生じた。


(ペル・ゲーム…。一見すると両チームが賞金ミッションをクリアしながら合計金額を競うゲームの様に思える。だけど、なぜわざわざ裏側に数字を付けてわかりやすくするんだ? しかもペアになるように。本来のペアゲームは裏側に何も書かれていないから記憶力でカードを覚えるしかない。…ミッションをやりやすくするためなのか…。いや、まるで何かを隠しているかのようだ)


「清志君。次のカードは‥」

「ああ、次は13番のカードを…」


これ以上引き離されないためにも今はカードを捲るしかない。


『60万』・『MISSION:アクションゲームの1面クリア(制限時間10分)』


樒とスタッフによって用意されたソフトカセットとゲーム機とディスプレイ。ミッションは用意されたゲームの1面をクリアする事。


「俺に任せてくれ。ゲームは得意だし、これ以上金額差つけられるわけにもいかないし、これならパスもわざわざ使う必要もないしな」

「…!」


宮野次郎が挑戦しゲームを始めた。そして清志は彼の言葉で疑問の正体に気付いた。このゲームに勝つためにはただ賞金ミッションを制覇していくだけではクリアできない。その為にまずはあることをしなければならないと思った。


(このやり方はこちらが圧倒的に不利になるが、最終的に勝つためにはリスクを背負わなければならない。このミッションが終わったら皆に伝えないと…!)


清志は次郎がゲームをクリアすると一度休憩をしたいと樒に説明し、10分の休憩をもらって裏側に回った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


「何!? 本当か!?」

「はい。勝つためにはそうするしかないし、このままでは合計得点差で負ける未来しかありません。相手は恐らくですが何かしらのイカサマで高額ミッションを当ててしていますし…」


宮野次郎は清志の提案に難色を示したが、他のメンバーは清志の意見に賛成した。


「…清志君の作戦は危ないけど、このまま賞金の取り合いをしても確かに勝ち目がないかもしれないわ」

「後もう1ペア捲れるので、それで確かめていこうと思うます」

「…仕方ねえ。こっちも腹を括るしかねえか」


次郎も納得し、清志達はゲームに戻った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


ゲームに戻った清志はまず11のカードを捲った。


『2万円』


「次は4のミッションのカードを捲ってください」

「4のカードを?」

「同じ番号を捲っていけないというルールは無いはずです」

「わかったわ」


清志が選んだ4のミッションには『MISSION:ワサビ寿司完食チャレンジ(5個)』と書かれていた。

このターン清志チームが得たのはわずか70万。合計金額は153万に加算され223万になる。


(ふふ。なんのつもりかわからないけど。それならこっちは容赦せずに行くわよ)


神崎のターンに回り、3番・10番・18番のカードを選んで捲った。


3のカードは

『100万』・『MISSION:サッカーボールリフティングチャレンジ500回』


1度の失敗もせずにリフティングを500回行うチャレンジであり、沢田勝が行いチャレンジをクリア。


10のカードは

『120万』・『MISSION:激辛鍋うどん完食チャレンジ(制限時間30分)』


3つ星飲食店『川崎うどん店』の作った激辛うどんを完食するチャレンジ。カセットコンロによって常に熱々で激化なうどんを食べるのはかなり難しい。だがフードファイターのライバーである黒田太によって時間制限ギリギリでクリアした。


18のカードは

『80万』・『MISSION:発電チャレンジ! 自転車を使って充電しろ』


スタッフによって用意された自転車と発電機付きのバッテリーを用意する。漕いで充電量をマックスにするチャレンジだ。沢田勝がこのミッションを行い、バッテリーを充電した。


3つのミッションに成功しこのターンに神崎チームが得た金額は300万円。合計金額は710万円となり更に清志チームを突き放していく。


(こちらが外してくると一気に高額カードを選んで突き放してきた。やはり何かしらのイカサマはしているみたいだ。だけどそっちが賞金チャレンジに目が言っている間にこっちはやることをやろう…!)


清志はペアを揃わずにカードを捲り続けた。清志の謎のプレイングにコメント欄も荒れ、やる気がないだの、数字が見えてないといった野次が目立つようになっていく。


「3回連続ペアをそろえないなんて何を考えているんだ?」

「勝負を諦めているのか? まあここまで差が出来れば仕方ないかもしれないが…」


神崎チームの面々は清志チームが勝負を諦めているのではないかと思っていたが、清志は『カードの情報を集める』ためにわざと外していた。


(…何か狙っているように見えるけど、合計金額はこちらが有利、このまま更にカードを捲らせてもらうわよ)


室山は何となく嫌な予感がしたが、今はカードを捲りミッションを成功させ金額を得る方が良いと特に神崎に対し言わなかった。


「26のカードを選ぶわ」


ここで神崎は26のカードを選んだ。


『10円』


「え?」

「10円!?」


ここまで高額のカードを選んできたのにここで低額のカードを引き当てる。


(別に高額のカードを引いてもいいけど、これだけ余裕があればあんまり充てる必要もないわよね。なんかイカサマを疑うようなこと言ってたし、このターン位流してもいいわよね)


神崎は先のターンの清志同様に3ペアを外し賞金を得ることなくターンを終えた。


「くっ…。舐めてやがる。わざわざ外しに来やがった」

「逆にこのターン、賞金を増やされなかったと思う事にしましょう」


更に清志のターン、このターンも3ペアを揃わせず賞金をえないままターンを終えた。


(これで残る9つの賞金とミッションの情報が揃った…!)


清志はあえて揃わせなかったのは情報を得るためだった。残った番号は4、8,11、16、19,20、24,25、26の9つのペア。それを淀川がメモをして賞金額とミッションを目盛らせていた。


4:『30万』・『MISSION:ワサビ寿司完食チャレンジ(5個)』

8:『200万』・『J・MISSION:RPG高速クリアチャレンジ!(6時間以内)』

11:『2万』・『MISSION:四国地方の県を4つ答えろ』

16:『15万』・『MISSION:レースゲームで1位を取れ』

19:『50万』・『MISSION:サイコロ6個を振って合計25以上出せ(最大3回まで)』

20;『800円』・『MISSION:数学問題集の最初のページを全問解け』

24:『250円』・『MISSION:チームメンバー全員の集合写真を撮れ』

25:『150万』・『MISSION:バラムツの刺身を食え』

26:『10円』・『MISSION:毒サソリを手の平にのせろ』


この9つのミッションの情報を得た清志はこのペル・ゲーム本当の勝ち方を理解した。

それは『クリア不可能なミッションを相手に残してパスさせる』ことである。

このゲームはターンを2回パスした方が負けるルールがある。宮野次郎のパスと言う言葉に気付くことが出来た。

もしパスすることがあるとするならそれはチームメンバーがミッションをできないのでターンを回さなければいけないという事だろう。


全部のミッションを見て26番のカードのミッションは明らかに10円のためにやるべきミッションではないし、危険度も高すぎる。

このゲームの隠された真意に気付いた清志はなんとしても26のカードを神崎に押し付ける必要がある。その為に捲るカードの順番を考えなくてはならない。こちらの考えに悟られることなく、26のカードだけを残して相手にターンを渡す。それが残された勝ち筋だと考えていた。


神崎は完全に油断しており、次のターンもペアをそろえず流して終わっていた。舐められているようにも感じるが、逆にこちらの考えを悟られずに実行できる瞬間であると思った清志は早速始めることにした。


「19のカードを選びます」


ここで清志は久しぶりにペアを揃えてミッションに挑む。100均でそろえたどんぶりと6つのサイコロ。このサイコロを振って合計の目が25以上でなくてはならない。サイコロの最大は36である。25を出すなら4から上の出目が多く必要になってくる。


このミッションに名乗り出たのは秋穂だった。


「幸運には自信があるの! 初詣のおみくじで大吉が出ていたし、3回も振れば25以上何て簡単に出るはずよ!」


清志は秋穂の言葉を信じてミッションに挑戦させた。


秋穂はどんぶりを振ってサイコロを机に転がした。1度目の合計は出目が低いこともあり合計が17であったが2回目に振り直し、合計出目が26でギリギリクリアした。


ミッションに成功し50万の報酬を獲得する。だがこれはあくまでもまだ合計金額で争っていると思わせるに過ぎなかった。


「…8番のカードを選びます」


清志はここで8のカードを選んだ。


「こちらはジョーカーミッションになります」


ジョーカーミッションについて樒が説明する。これは一発逆転のカードでミッションを成功させると賞金額に加算して相手のクリアしたミッションの賞金額を加算し、逆に自分達が行ったミッションを押し付けることが出来る。そのミッションに成功すれば相手チームは賞金を得れるが、失敗すれば賞金が引かれる。


(これが逆転への1手だ…!)


清志達は勝負所と考え、ミッションに挑むことにした。


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