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第58話『ペル・ゲーム2』

ゲームが始まり清志チームが3つのミッションをクリアし、合計18万円を獲得したが、神崎美波は30万円のカードを捲り更に高額ミッションのカードを当てていく。


14のカード

『20万円』・『MISSION:息止め3分』


21のカード

『70万円』・『MISSION:高所ポップコーンキャッチ3連続』


このミッションを体力系ライバーである沢田勝が行い息を吸い込んで3分間水中での息止めに耐え、続くポップコーンキャッチはスタッフである楠が高所作業台から地上から5メートルの高さからポップコーンを落とし、それを口でキャッチするものである。


「それではいきますよ~」


タイミングは楠が決めて、放り投げて沢田は口を開けて予測しながらポップコーンをキャッチしなくてはならない。


「くっ…!」

「そーれ♪」


フェイントを使ったり、樒と話をしている中突然投げたりとタイミングが掴みづらいやり方をしてきたが、沢田は何とか3連続キャッチしてミッションを達成した。


(くっ…。天井の照明の光で目が痛いが何とかクリアできた。体力以前に掛かっている金のプレッシャーで汗が止まらなねえ。だが何とかなったぜ)


プレッシャーから解放され沢田はチームの元に帰った。


神チームは3つのミッション達成により合計120万円を獲得。たった1ターンで112万円の差がついた。


「嘘だろ…!? たった1ターンで3倍以上の差がつくなんてふざけてやがる!」

「ですがまだカードは残っています。こっちも高額カードを当てればすぐに逆転できるはずです」


伊藤清志の言葉に宮野次郎は冷静を取り戻す。


(金額もそうだが向こうのメンバーも厄介だな。大金の掛かった事ほど人は緊張して失敗する事も多いのに。…意地とか執念以上のものを感じるな)


神崎の集めたメンバーのスペックの高さに清志は警戒していた。


だがそれもそうだった。室山加奈はメンバーを集める際にライバーになる前職で何かしら特技のあるメンバーを選んでいた。

料理ミッションを行った霧山里子は調理師免許を持っておりライバーになる前は栄養士や有名チェーン店で料理人として働いていた。

沢田勝はライバーになる前は新体操競技のオリンピック強化選手候補に選ばれるほど優秀なアスリートだった。しかし沢田は練習中の事故で脱落し、それ以降はライバーとして個人で活動を2年した後事務所にスカウトされた。

登録者は2万6千人と少ないが事務所から仕事を貰ったり、アルバイトをして食いつないでいた。今回のペル・ゲーム参加も金目的で参加しており、アスリート経験からの勝負強さが生かされていた。


(…金額の差はありますが、こちらのチームも負けてはいないはず。これ以上リードを広げさせないためにも高額ミッションを当てないといけない…!)


清志チームのターンに回り、6のカードを選んだ。


『60万円』・『MISSION:大盛り激辛カツカレー完食チャレンジ(制限時間50分)』


「こちらのミッションは三ツ星飲食店〈ハヤシカワ亭〉様で提供されているチャレンジメニューの大盛り激辛カツカレーを完食してもらいます」

「そのミッションは何人でも可能ですか?」

「最大3人まで参加可能です」


樒にミッションについて尋ねた後、清志は皆を集めて相談した。


「先のミッションを行った太田さんと中井さん以外のメンバーでこのミッションは挑みましょう。分担すれば個人にかかる負担も少なくなるはずです。ボクもやるので後2人程参加できれば…」

「…清志。このミッション私がやるわ」

「あずささん」

「辛いのは得意だから大丈夫よ」

「俺もやるよ。体張るのは得意な方だし」


このミッションを清志、あずさ、次郎の3人で挑むことにした。樒に伝えると裏方で控えていたシェフが調理を始める。


「質問だけど調味料とかってあるの? ソースとかマヨネーズとか」

「スタジオで準備できる範囲でなら可能です」

「ありがとうございます」


およそ30分後、重さにして2キロの大盛り激辛カツカレーが運ばれてきた。


「いただきます!」


3人がスプーンを持つとストップウォッチが時間を表示し、ミッションが始まる。


カレーを小皿によそい、まずはカツから攻め始める。衣と肉、揚げ物独特の負担がかかるが、カレーと混ぜて食べたり単独で調味料を付けて食べたりしてカツを攻略していった。揚げ物が無くなると、特製激辛カレーを食べていく。


「からああ!?」

「…ハバネロが入っているわね」


清志と次郎がカレールーの辛さに苦戦する中、あずさはリズムを刻むように食べていった。


「…」


汗をかきながらもカレーを頬張り、カツを攻略した後は残ったライスを無くなるまで食べていくだけだった。


(どうなっているのよ。あのカレーは店主に頼んで通常よりも辛いハバネロ入りの激辛カレーにしてあるのに! 何であの女は食べられるのよ…!)


清志と次郎は水を飲みながら苦しんで食べていたがあずさは汗をかきながらも食べている。


だがそれもそのはずだった。

あずさは辛さに耐性があり、仕事が無い時は食費を抑えるために飲食店が話題を出すために作ったチャレンジメニューである激辛料理や大盛り料理に挑戦していたことがあった。

そのためこのミッションもやることが可能だった。


「ごちそうさまでした」


完食してスプーンを置くとストップウォッチが停止した。残り時間8分を残してクリアし、ミッションが成功したので60万円を手にした。


「あんた凄いな…。あんな辛いのを大量に食べれるなんて」

「辛いのは好きなのよ」


その後9のカードを清志は捲った。


『45万円』・『MISSION:献血400ミリリットル(1名)』


名前の通り、輸血用に使われる血を献血するミッションである。


「医師と看護師はこちらで手配しています」


せらぎねら☆九樹のツテで匿名での参加した医師免許を持った医師である。


「清志君。私がやるわ! このまま何も役立てずにいるわけにはいかにあもの!」

「秋穂さん…」


秋穂が名乗り出て、献血を行うために左腕の袖をまくって出した。


「チクッとしますよ」


アルコールで消毒した後、注射針が肌に刺さり秋穂から血を抜いていく。止血処置をされミッションを達成した。


更に12のカードを捲り、


『30万円』・『MISSION:テキーラ一気飲み(ショットグラス)』


アルコール度数30から55と高い酒であるテキーラを飲むミッションである。これを酒が飲める中井洋子が行い、ミッションを達成。ふらつきながらも体を張ってくれたおかげで清志チームは3つのミッションを達成し、合計18万に135万が足され153万円となり一気に逆転した。


「やったぞ! これで流れはこっちに傾いた!」


宮野次郎は体を張った甲斐があったと喜んだが、その喜びも神崎のターンに消えることになる。


「さて…次は5番のカードを捲ろうかしらね」


神崎は5のカードを選ぶ。


『180万円』


「なっ…180万円!?」


更にペアであるミッションの掛かれた5のカードが捲られる。


『MISSION:利きポテチチャレンジ

 5つのポテチを食べてそのポテトチップスのメーカーと商品名を答えろ!』


神崎チームに5つの更にポテチがそれぞれ乗せられており、目隠しをし匂いと味だけでメーカーと商品名を応えるゲームである。


「いくら何でも無理なんじゃ…」


秋穂はかなり無理なゲームだと思ったが、神崎チームの高松翔一が挑みミッションに挑んだ。


「あ~。一つ目のポテチは〈セラミー〉の〈ポテトチップス うすしお味〉やな」

「正解です」

「うそっ!?」

「2つ目のポテチは〈小河屋〉の〈ポテトチップス バターチキン味〉や」

「正解…」


高松は3つ目のポテトも〈サバカ〉の〈キラキラチップス サワークリームオニオン味〉、4つ目も〈GURAONKO〉の〈ポテチ屋 焼肉ソース味〉とメジャーじゃないチップスまでも当てていく。


(さすが菓子レビュアーをしているライバーだけあるわ。メジャーなお菓子からマイナーなお菓子まで食べれば答えることが出来る…。登録者は6万にと少ないけどレポートブログで人気を得ているだけはあるわ…!)


高松はゲーム配信や雑談の他にポテチなどのジャンクフードやお菓子のレビューなどのマニアックな配信をしていた。


「5つ目は…〈ハイカラ製菓〉の〈堅あげポテトチップス あら塩味〉!!」

「正解です…!」


高松は全てのポテチのメーカーと商品名を当てる神業を披露した。これで神崎チームは180万円を得て、合計金額は300万円になる。


「更に捲るわ」


神崎は22のカードを選び


『30万』・『MISSION:熱々おでん早食い完食チャレンジ(制限時間15分)』


このミッションを再び高松にやってもらいクリア。更に17のカード選び


『80万』・『MISSION:瓦割りチャレンジ20枚全部割れ!』


瓦割りチャレンジは体力系ライバーである沢田勝が行い。用意された瓦割り用の瓦を全て一撃で割ってミッションを達成した。


このターンで神崎チームは290万を会得し、合計金額は410万円となり清志チームの2倍の金額を得ることになる。


「おいおいいくら何でも高額ミッションが当たりすぎだろ! イカサマしてるんじゃねえのか!?」


宮野次郎は神崎チームの金額の良さにイカサマを疑う。


「…と言うよりもあんな難しいミッションをクリアできるようなメンバーがいる事が凄いと思うわ」


蒼空つばさはこれまでのミッションは失敗しても仕方のない内容もある中、そのミッションを全てクリアし続けている方が脅威であると考えた。


「…こっちももっと高額ミッションをやるしかないってことかよ…」


引き下がった次郎だが、神崎がイカサマをしているのは明白だった。


(九樹さんが考えたミッションをランダムにシャッフルし、番号を与えている以上イカサマなんてできないはず。だけど神崎の高額ミッションのカードを当てるのは何か違和感を感じるわ…)


神崎が高額ミッションを当てられるのは当然だった。ゲームに使うカードは民間の印刷所で刷られている。室山は神崎家の力を使い突き止めてカードの印刷情報を抜き取っていた。

ミッションについては知ることが出来なかったが、金額の掛かれたカードさえわかれば勝てると踏んでいた。

後はイカサマを悟られないように他の金額が低いミッションも絡ませておくよう神崎に言っておいた。


(優れた智将は戦う前に勝つべきして勝つ手段を用意する。あなた達には悪いけど、せらぎねら☆九樹もろともゲームが終わったわ神崎家の力を使い始末させてもらうわ。神崎家に歯向かった報いとしてね…!)


室山加奈の裏工作により神崎はより有利にゲームに進められていった。


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