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第56話『開催ペル・ゲーム!』

―ライブスタジオ


そこに集まったのはベル・ゲーム主催者のせらぎねら☆九樹及びLure‘sのメンバー。清志を含める100万円サバイバル参加メンバー、そして神崎美波・室山加奈と彼女達が集めたメンバー。


「今日は来ていただきありがとうございます」

「…来るように仕向けたのはそっちの癖に…!」


彼女は歯ぎしりをしてせらぎねら☆九樹を睨みつけた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―ペル・ゲーム開始1週間前。


せらぎねら☆九樹はリモートを通じて神崎美波と話をしていた。


「なーに? 山内さんの知り合いみたいだけど、動画投稿者が私になんの様な訳?」

『はい…。じつは見ていただきたいものがありまして』


せらぎねら☆九樹が画面に映し出したのは病院らしき場所に寝たきりになっている老人の姿だった。痩せこけて腕には点滴が付けられ、呼吸が困難なのか喉に管を入れている。


「な…! どこでこの写真を…!?」

『写真に写っている人物。あなたの父である神崎幸太郎。彼は3年前から寝たきりになり、肉体は生きているが脳死状態になっている』

「くっ…!」


神崎幸太郎は3年前に別荘を作るべく土地の下見に行ったところ、整備されていない地面の割れ目に滑落し重傷を負った。幸太郎はすでに90歳の老人な事もあり、病院に運び込まれた時はすでに長時間の低酸素状態が続き植物状態になっていた。


医師は手を尽くしたが意識戻すのは不可能になっており、生きながらせるために点滴と呼吸の為の気道確保をさせるのがやっとだった。美波はこのことが外部の人間に知られたら神崎家に恨みのある者や、これまで従えてきた者たちが反旗を翻し神崎家を潰しにかかり混乱を招くだろう。


美波はこのことを極秘にし、幸太郎が寝たきりであることを周囲に知られることを防ぐため医師は口止めさせ、自宅で誰にも見られないように生命維持のための治療のみにしていた。


「…何が目的なの? 私から金が欲しくてそうしたいわけ?」

『いえ、ただゲームに参加してほしいんです』

「ゲーム?」

『はい。あなたの全ての財産を賭けてもらいます』

「全ての!?」

『こちらも全てを賭けて挑みます』

「ふん。私にたてつくことを後悔させてあげるわ!」


こうしてせらぎねら☆九樹は情報を材料に神崎美波をゲームの舞台に引き出すことに成功した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


「しかし、ペル・ゲームをまたやることになるとはな…」

「ええ。視聴者も求めているなんて思ってもいなかったわ」


清志達のチームにいた蒼空つばさと宮野は憂鬱な表情を浮かべていた。


「それではペル・ゲームの説明を始めましょう」


ペル・ゲーム。

名前はトランプを使ったゲーム〈神経衰弱〉を英語にした〈ペアゲーム〉と地獄を意味する〈ヘル〉の言葉を合わせた造語である。


用意された52枚のカードは裏面に数字の1~26の数字がペアになるように書かれており、片方のカードには賞金額、もう片方のペアとなるカードにはその賞金を得るためのミッション、通称〈地獄企画〉と呼ばれる参加者が体を張って行う。


そうして得たカードの合計金額が多いチームの方が勝利する。


捲れるカードはそれぞれ3ペアずつであり、カードが不揃いだった場合とミッションに失敗した時は賞金を得られない。


またミッションに対し、参加者は〈パス〉を使うことが出来るが2回パスをした場合失格となり勝負に敗北することになる。


金額とミッションはカードを捲るまでわからない。ただの運だけだ無く参加者のミッション達成が出来るだけのフィジカルも求められるのがこのゲームの面白さであり難しい所である。


カードをめくるのはそれぞれの参加者のチームリーダーである。

100万円サバイバルチームは伊藤清志、神崎美波のチームは美波が行うことになっている。


「先攻・後攻はコイントスで決めます。それぞれ表裏を決めてください」


清志は表を選び、美波は裏を選ぶ。樒リアンが手に載せたコインが指により放たれて宙に浮く。金属音と共に机に落ちるとコインは表であった。


「表なので清志さんからカードをめくって言って下さい」

「はい」


こうしてゲームはスタートした。


―――――――――――――――――――――――――――――――― 


ゲーム開始3時間前


「それにしても、せらぎねら☆九樹はよく【ペル・ゲーム】を復活させようと思ったもんだ。色々問題があって動画サイトも規制をかけた程と言うのに」


宮野次郎は苦虫を潰したような顔で話した。


「ええ、そのゲーム性自体はペアゲームに近いけど、賞金とチームの連帯責任感が次第に参加者を追い詰めていくのよね」


蒼空つばさも経験者故にそのことを理解していた。


「最後2年前にライバー同士の対抗戦で行ってから一度もやらなくなったわ。参加者がトラウマで配信活動に支障をきたしたり、賞金の取り分を揉めてトラブルになったりしたから、目立つニュースにはならなかったけど配信アーカイブも切り抜き動画も閲覧できなくなったのよね」

「だけどそこまでのリスクを考えても行うってことは何か理由があるのか?」

「…せらぎねら☆九樹さんの考えを全て理解はできないけど、彼は何も考え無しにやる人じゃないわ」

「今回の参加者は素人も多い…。必要があればカバーしないとな」

「そうね」


宮野次郎と青空つばさはペル・ゲームが始まることに覚悟を決めて挑むことにした。


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