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第49話『社会活動』

配信ライバーの殆どは仕事の都合もあり普段不摂生な生活をしているが、その日の前日だけは必ず十分な睡眠を撮って撮影に挑む。


それは『社会奉仕活動動画』を作るために労働をする日だ。


近年若年層の労働人口が不足しているのが問題になっており、不足した労働力を補うため公共配信者として公務員扱いされているライバー達は企業に足を運び労働することが義務づけられている。


コンビニエンスストア・農業生産・飲食店・工事現場・介護施設等の労働力が不足している場所にライバーは行き6~8時間ほどの労働を収録に収めてどのような仕事をしたのか証拠として投稿する必要がある。


政府に対してライバー達は活動の妨害だと抗議したが


「どうせゲームしかしてないんだから少しはその時間を社会の為に使え。社会不適合者のお前たちに仕事を与えてやっているんだからありがたく思ってもらいたいくらいだ」


と高圧的な態度を取られた。


ライバー達は仕方なく労働に勤しむことになったのだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―コンビニエンスストア


「てめー生意気なんだよ! 年下の癖に生意気な態度を取りやがって!!」

「はあ? 年取っただけで仕事ができないカスにどうして下手に出ないといけないんですか~?」

「何だとてめえ!?」


コンビニエンスストア・ファイブステーションズでライバーの剣崎と自称ベテラン店員の戸澤が言い争っていた。


「戸澤さん、相手はわざわざ内に働きに来てもらっているんですから」

「ああ!? コイツ新人だろ! ライバーだが何だが知らないが態度が生意気なんだよ!」


清志がいなくなった後、戸澤の横柄な態度に折角入ったアルバイト店員も長続きせずいなくなり、常に人手不足が起こっていた。そこでライバー達が来ることによって人材を補っていた。戸澤は度々来るライバー達がちやほやされているのを気に入らず八つ当たりの様に怒鳴り散らしていた。


「戸澤さん、交代の時間なので今日はもう帰宅しても大丈夫ですよ」

「ちっ…!」


店長に言われ、戸澤はシフトを終えて帰っていった。


「いつもあんな感じなんですか?」

「ええ…。気難しい性格をしてまして」

「あれは気難しいってレベルじゃないでしょう」


剣崎が戸澤に抱いた印象はただただ態度が悪い店員と言うだけだった。今までよく雇い続けたなと思った。


「あんなのやめさせた方が良いですよ。他にも働きたい人だっているでしょう」

「…そう言うわけにもいかないんですよ」


店長は眉間に皺をよせてため息をつく。


「彼は深夜シフトにも入るからやめさせられないんですよ。夜勤をやりたがる人がいないから重宝してるんです」

「はあ…」

「人を選んでたら人手が足りなくなるし、無造作に雇うと人格に多少問題があっても受け入れるしかない。雇用とは難しいものだよ…」


歯痒い思いを吐き、店長は品出しをするためにバックヤードから商品を取りに向かった。・


――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―食品生産工場内


施設内に響き渡る機械の駆動音、むせかえる様な熱気の中作業員たちは食品を運び商品を作るべく働いている。


「モタモタするなあ! ノルマまで後100食分生産するんだから時間をロスするようなミスは絶対するな!」


現場主任の檄に作業員とライバーも作業に没頭する。


「こんな暑い中、沢山作るんですか?」

「じゃないと間に合わないんだよ。この工場は全国のスーパーやコンビニに商品を送っているんだからさ」


ベテラン作業員はそう言って出来上がった商品を包装して詰みあがていく。休憩になり一息つくとベテラン作業員と話をする。


「この仕事をずっとやってるんですか?」

「ライバーだっけ? アンタには辛いだろう。だけど人が足りなくて困っていた所だったんだ」

「そんなに人手不足何ですか?」

「ああ。体験してわかるがまず環境が劣悪だろう?」


ベテラン作業員曰く、環境の劣悪さ・作業の辛さ・人間関係の辛さがあるとのことだ。

工場作業は作業服に加え、異物混入を防ぐために頭にはネットを被り、怪我をしないようにヘルメットを被るので(場所によっては)、体温が上昇し内部に沸いた汗が布に染み込んで重さをより感じてしまう。


作業は単純ではあるが少しでも間違えると怪我や製品の未完成に繋がるので少しでも油断はできない。


作業員も今はまともなベテラン作業員と話をしているが海外から出稼ぎで来ている者や、性格に難のある高齢者な人たちが多い。そのため若い作業員を雇ってもコミュニケーションが取れなかったり、若いからと言う理由できつい仕事を押し付けられたりして辞めていく人が多いらしい。


「この工場もいつまで持つんだろうな…。ワシも体がきついからいつまでも続けられるかどうか不安だし、物価高で材料費も上がって人件費を出せないから人を雇えないしでお先真っ暗だよ」

「そうなんですね…」


普段バーチャルライバーで配信をしている翡翠の様に、自分達の生活に必要な物を作る場所の現実を知り、ライバーは自分達の仕事がいかに恵まれているかを知る者もいた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


ライバー達が時間を使い働くのは損の様にも思えるが、彼らの活動は大いに意味があった。


「皆さんこんにちはー! 今日はへるどっぐちゃんの特別診察だよー!」

「へるどっぐちゃーん!」

「俺の話聞いてくれよー!」


へるどっぐ♡猫鳥による医療看護士の仕事を配信しており、彼女は病院が用意した教え上手なベテラン看護師と共に病院の仕事を手伝い、入院患者たちはそれを楽しみに生きる事を頑張っていた。


「何よ! ライバーだかなんだか知らないけどもてはやされちゃって!」

「私達の方がずっと患者に付き添って尽くしてあげているのに!」


ベテランの看護師たちは彼女に嫉妬していたが


「他の患者さんから色々苦情が来ているんだよ。君たちが陰で新人をいびったり患者の悪口を言っていたりで評判が下がっているんだ。だけど彼女が来てくれたおかげで患者さんも楽しんでくれているし、真面目に働いてくれるし、イメージアップに貢献してくれてるんだ。もし彼女に何かあったらウチが訴えられるんだから迷惑はかけないでくれよ」

「くっ…」

「配信で仕事内容も撮影されてるんだからしっかりした態度で勤務してくれ」


誰かに観られているという緊張感が現場の人たちを真面目に働かせる要因になったり、その施設の評判が知れるのでライバー達の社会奉仕活動は大きく意味があった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―某農場の畑。


カメラをセットしてバーチャルライバーの四島仁と五木陽介の2人が作業風景を撮っていた。


「今日は整地した畑に苗を植えていきまーす!」

「美味しい野菜に育ってくれよー!」


人手不足で悩んでいる農業にライバー達が企画も立てて『ライバー野菜牧場』を作り土地を耕し野菜を作ることや、農家の畑仕事を手伝ったりしている。


「すまんけど後でウチの畑の草刈りを手伝ってくれないか? お昼ご飯ウチでごちそうするよ」

「マジすか!」

「ゴチになります!!」


普段若い世代と関わらない農家の方々は新鮮さを感じ、仕事が働くのでプラスになっていた。


「こういう企画も面白いな」

「ゲームもいいけど社会体験もいいよね!」


ライバー達も実際に働く経験を糧に動画や新たな企画を作り出していった。


賛否両論ありながらもライバー達の社会奉仕活動が今日もどこかで行われている。



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