山内が総理大臣となり、これまで行われなかった法律の整備や新たな政策の開始により世間は大きく変わっていった。
『私は思うのです。これからの社会に必要なのは若い世代なのだと。その為には彼らの能力が正当に評価をされることがまず必要であること、負担が緩和され公平な環境を整えることにあると思います。誰か1人が負担になる状況を作ってはいけません。我々は生まれた環境は違っても同じ人間であります。公平であることは当たり前なのです。頑張れば頑張るほど損をすることを当たり前にしてはいけないのです!』
若い世代への支援を惜しまない山内の支持率はうなぎのぼりとなり、これまで高齢者へ対する政策を行っていた政治家達もシフトチェンジし、山内の後を追うように行政を変えていった。
『私はこれまで行っていた年金と言う若い世代への負担となる制度を廃止することにしました。これから生活困窮者は一律して【ベーシックインカム】を受けるようにしてください。老人と言う枠組みを無くし、同じ国民として生きる事を私達は保証します』
この施策に最初はデモが起こったが、『これまで払った額に関係なく公平に生活できる額と生活環境を保証します。社会情勢によって減額したりすることはないので年金よりも多い金額を受給できます』と説明されると一気に皆ベーシックインカムに乗り換えた。
更にはこれまで税金対象外だった宗教法人に対しても『1000円を超えるお布施・納金が出た場合は税収対象とする』とし【宗教税収法】の法案を出した。
『私達は何を信じ、何を支えに生きているのか。神を信じるか否かは個人の自由でしょう。それを強制し生きる為に必要な生活費を奪い取る神などいてはいけない! いや、神の名を借りた詐欺などあってはならない! 私の政府の元、宗教法人は特殊商業科目と位置取り税収対象とします! 無論違法な取引により金銭を徴収した場合は強制的に変換する措置をとる法律も制定します!』
この前代未聞の改革に宗教法人・仏教徒達は政府の暴走と批判したが
『何が暴走か! ありもしない存在を背にかつて暴走した歴史があるのはそちらもでしょう! 比叡山の件は決して忘れてはいけません!もう現世に織田信長はいませんが、私は断固として宗教法人の資金独占と暴走を許しません!!』
山内の迅速な動きにより宗教法人に関する法律の新制定も進み、カルト教団は資金難になり滅んでいった。
これまでの政治家になかったやり方に若い世代の支持者が集まり、山内政権は新たな時代の政治として知れ渡っていった。
【国民の為の国民の未来を築くための政治】
その為に山内は最早機能しなくなったかつてのやり方を一新していった。
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―山内の仕事部屋
「総理。老人ホーム・森林館からベーシックインカム制度反対の苦情が来てます」
「大方仕事が無くなるからだろう」
ベーシックインカム制度を使い多くの高齢者は政府が指定した割安のアパートに住んでいる。老人ホームにいるのは対象外になる65歳以上の自立生活が困難な者達である。彼らも5年後にはいなくなることになる。
【70歳を超えた自立生活困難な高齢者はその家族と医師の判断により安楽死を選択ことが出来る。当事者が意識不明、もしくは認知症の場合は本人の意志決定を股無くしてこれが出来る】
高齢化社会問題の解決の為、山内は医師連盟との話し合いにより特定の条件を満たした場合のみ安楽死の処置をすることを可能とする法律を作った。
人権に関することもあるので家族と医師両方から許可をもらう事を絶対条件とすることで医師側の反対派も妥協してこれを受け入れることになった。
一方で高齢者をこれまで扱っていた老人ホームでは利用者が減り運営が困難になり閉鎖する施設も現れた。仕事を失った介護士達は政府に抗議する事が増えてきた。
「その程度の事は慌てる事はない。仕事を失った介護士達に新たな職場を与えろ。医師連盟の奴らとも話はついている」
「【特殊医療介護士】の件ですね」
近年医療現場ボの人手不足に病院は悩まされてきた。そこで彼は介護士を入院患者の身の回りの世話をし、看護師はあくまで医療関係の仕事に集中させるという役割分担をすることで負担を軽減し役目の場を増やすという事、医療関係に関わる仕事になり報酬を上げる事を目的として新たな職業を作った。
「彼らは看護師や医師の部下ではない。あくまで仕事を分担し合う仲間として彼らと共に医療現場を支えていくことになるだろう」
「山内総理。それと…」
部下が山内に次の仕事を話そうとした時、
「…すまん。少しばかり席を外す。30分位したら戻る」
「かしこまりました」
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―会議室
『まずは総理大臣のご就任、遅れながらおめでとうございます』
「そんなつまらない事を言うためにワシを呼んだわけではなかろう」
ノートPCを使ってのリモート通信により山内はせらぎねら☆九樹と話をしていた。
「一体何の様だ?」
『これについてですよ』
せらぎねら☆九樹は画面に動画、そしてデータを見せる。
『貴様…! これをどこで…!!』
その動画は紫龍院教が資金調達の為に開いていたパーティーであり、そこには山内と教祖の川尻が共に酒を交わす様子が写されている。
データは写真と共に山内と川尻、更に山内のバックにいる神崎幸太郎を含めた資本家たちが山内の開くパーティーでにいる姿だった。
『ご安心を。これらはまだマスコミやメディアには公開してません』
「何のつもりだ貴様…!」
『いえ、ただたまたま手に入ったのでね』
「ワシを脅すつもりか…!」
『ゲームが終わるまでは大人しくしてほしいですね』
「ふん…。まあいい。話はそれで終わりか?」
『ええ、ではまた』
そう言ってせらぎねら☆九樹は通信を切った。
「あいつ…どこであんなものを…いや、ワシ以外の弱みもアイツは握っているのか?」
彼の仮面の下にある感情は何もわからない。山内もあくまで利害関係の一致で吸気と組んでいるに過ぎない。
「…奴の事を少し調べた方が良いな…」
今更ながらせらぎねら☆九樹の正体について調べることにした山内だった。