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第43話『クインテッド・ソウルズ・ゲーム6』

ゲーム内を探索し、クリアするための情報を集める清志達はついにループによるセーブデータ削除を回避する方法を見つけた。


『5つだと時は巻き戻る。4つだと今の時間にいる。今を大切にしたいなら5つ集めるな』


この言葉は攻略のヒントだった。パーティーは常に最大でなく、控えとして預けることが出来る。メンバー編成で誰か1人に『エレメントクインテッド』を持たせて外しておく、すると今まで起きた初期化イベントは発生せず、


『バカな! エレメントクインテッドが反応しないだと!? くっ、やむおえん!』


救済使途五人衆・マーチはエレメントクインテッドを置いて逃走した。ボス戦をやることなく『エレメントクインテッド』を入手した。


「これで5つのエレメントクインテッドが揃ったわね」

「後はラスボスのヴィオを倒すだけか…」


あっけない攻略だったが、それでも前に進めたことに安堵して清志は帝皇町を出て紫天町

へと向かう準備に入った。


最後の仲間であるシキミを仲間にし、探索を行う。謎の暗号付きであるメッセージ、そして鍵付きの日記の秘密を解く必要がこの先あるのではないかと考える。


帝王町を探索していると、民家の棚から新たなメモとボックスが発見される。


『ただ平和に暮らしたい。ただ静かに生きたい。金持ちにならなくてもいい。有名人にならなくてもいい。普通に生きるってどうして難しいんだろう。どうして人間は他の誰かと違わなければいけないんだろう。どうして誰よりも優れた点を比べないといけないんだろう。だけど私の日常は戻らない。もう戻ってこない。この仮面に復讐を誓ったあの日からもう戻れないのだろう。 P:5のH』


最後に書かれていた〈P:5のH〉は恐らく最後だろうと清志は思った。


「…これが最後の暗号だな」

「何でそんなことわかるんだい?」

「このメモと一緒に入っていたボックス何ですが…」


アイテム欄に入れられたボックスを調べると『パスワードを入れないと開けられない。ここに5つのアルファベットを入れないといけないようだ』と説明がでて、入力するかしないかの選択が出てくる。


「おそらくこれまで取得したメモが関わってくるんです」

「メモ?」

「あの最後に書かれた暗号、恐らくPはパスワードで数字はそのアルファベットの順番を意味していた…」


清志はアルファベットを入力する。


最初にD、次にE、3番目にA、4番目にT、最後にHと入れる。


【DEATH(死)】


パスワードを入力すると箱が空き、『日記の鍵を入手した』と出てきた。


「なんて気味の悪いパスワードなんだい」

「そのアイテムを使ったらゲームオーバーだなんてことないですよね」

「セーブだけはしておこう」


大江戸と秋穂が不安な表情を浮かべるが、鍵を使う前にデータのセーブを行い清志は日記の鍵を使った。

日記が開き、アイテムとしてアーカイブに提示された。



鍵付きの日記・1

【19XX年 8月 

 父親が蒸発した。母は親戚に私を預けるとどこかに行ってしまった。

 クラキ夫妻は私を本当の息子の様に育ててくれた。

 生活面は不自由なく、私は学校に行って勉強をして、ハンバーグを晩御飯に食べて寝た。


 20XX年 7月

 6年生の頃、義父は突然人が変わったかのように私や義母に怒鳴るようになり、よくわからない言葉で脅してくる。

 「神の怒りを受ける」「悪魔に呪われる」

その言葉をいい続ける義父の顔は次第に精気を失っていく。


紫龍院教。それが今の義父の拠り所だ。 】



鍵付きの日記・2

【20XX年 11月

 義父が突然いなくなった。それからはよくわからないおじさん達が度々義母を脅迫する

 『紫龍院教』に入らなければお前も地獄に行く。

なぜそんな意味の分からない命令を聞かなければいけないのかわからなかった。


20XX年 3月

義父が自殺した。借金取りが毎日ドアを壊すように叩く。

会社がつぶれ、残ったのは高額の利子がついた借金だけ。

義母は頭が白くなり、ボクは目の前が真っ白になりそうだった】



「なんだこの読んだら鬱になりそうな日記は?」

「なんでゲームにこんな内容の日記があるの?」


鍵付き日記の内容に不気味がる秋穂と大江戸。だが清志は住み進めなければ先に進めない気がした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―蒼空つばさの家


清志同様鍵付きの日記を閲覧したつばさと桝谷はその内容を見て言葉を失う。


「なんやねんこれ…まるで体験談をそのまま書いたかのような…」

「…後2冊ありますがどうしますか」

「ここまで来たらもう後戻り出来へんやろ…」


つばさは3冊目の日記を閲覧する。


鍵付きの日記3

【20XX年 4月

 義母はヒステリーになり僕にあたるようになった。信者達の嫌がらせ。

 近所からの冷たい視線。親戚からも疎遠にされ誰も助けてくれない。


 『もう全てを終わらせよう。私にはその権利がある』


ブツブツと独り言を言う義母。

次の日、義母はどこかに行ってしまった。


20XX年 4月

 紫龍院教の始祖が死んだ。

 義母は…クラキアキナは人を殺した。だけどボクは彼女を嫌いになれない。

 だって、実の両親に変わってボクを育ててくれたから。

 悪いのは誰だ?


 社会か? 弱者か? 教祖か?


 眠れる奴隷であることか?

 いや、違う

 『世の中上手くいかなくて当たり前』と言う事実を受け入れられないこと。


 成功したいために頑張っても、避けれない理不尽に人は直面し、その為に疲弊せざるを得ない。


 愚者は損をし、賢い人は得をするというのはただの盲弁である。

 得をするのはいつだってどんな事態にも対応できる人間だ。その苦しみを誰かに理解して欲しいと甘えた時、人は勝手気ままな理想を押し付け、闇へと落ちていくのだろう。

 教えに囚われし信者のように。

 己の適性を、やるべき事を理解できずに。


 ボクは囚われたりしない。【~だから】は賢い振りをした愚者の言い訳、常套句だから】


鍵付きの日記:4

【クラキシゲオは道化になった。

 世間を惑わす姿を得た。仮面の奥に眠る復讐心を諭されぬために。


 紫龍院教の陰の支配者はマーチではない。

悪の元凶は【カンザキ コウタロウ】。この世界の陰の支配者である。

奴は決して表に出ない。

その娘、【カンザキ ミナミ】は詐欺まがいの方法で金を集めている。


10年かけてようやくたどり着いた。政治家すら操れる真の支配者。

上級国民は彼の前では奴隷同然である。


最も【上級】なんて言葉だけの連中であるが。


 だが、奴は地獄に行く運命にある。

 もうその導火線に私は火をつけている。

 後は破滅を待つのみ…】


そして最後の日記を読んだ瞬間だった。


『キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアー!!』


「キャアアアアア!!」


突然画面にアップされる女性の幽霊の顔と、響き渡る悲鳴。

不意に放たれたホラーの様な展開につばさは悲鳴を上げる。


「どうしたんだ!?」


悲鳴に驚いた白石が駆けつける。


「ああ、ちょっとゲームで驚いただけや」

「ホラーゲームって奴かい? 娘も昔やっていたな。無料で遊べて楽しいからって」

「そうなんですね…」

「あんまり詳しくないけど、困ったら頼ってくれよ」

「おおにき」

「…落ち着きました。最後の戦いに行きましょう」


つばさは落ち着きを取り戻しゲームを続行した。



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