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第40話『クインテッド・ソウルズ・ゲーム:5』

ついに最後の町に訪れた清志達に待ち受けていたのは救済使途五人衆・マーチによる時空操作攻撃であった。


【GAMEOVER】から動かない画面に困惑しゲームを再起動する。


そこに映し出されたのは〈はじめから〉と表示される画面のみでありセーブデータがどこにもなかった。


「どういうこと?セーブデータが無くなったってこと!?」

「わかりません…調べて見ます」


清志はパソコンの中を調べたが『クインテッド・ソウルズ・ゲーム』のセーブデータはどこにも無くなっていた。


「何だこりゃバグか?」

「わかんねえ。アタイもこういった事態は始めてだ」


大江戸華美も想定していない出来事であり、運営サイドに連絡をしてみると。


『そういったバグはこちらでは確認されてないので、たまたま引き起った可能性がある』


としか返答が来なかった。


「最初からやり直すしかないのか…」


5日かけて行った作業をもう一度やることになり気が滅入りそうだった。


この現象は清志だけでなく他のチームでも起こったらしく

「何でデータが消えてるんだ!?」

「これまでの作業がパアじゃない!」


彼らも運営スタッフに対し連絡したが清志と同じ回答しか返ってこなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――  

―蒼空つばさの家


「クソ…! そう言う事か!」

桝谷は机をたたいてあることに気付く。


「あの5人目のボス・マーチのモデルは山内や! あいつが暗躍しているから真実にはたどり着けないというメッセージか!!」


紫龍院事件の黒幕である山内茂。彼が裏で工作を働いたせいで真相にたどり着けず、捜査は打ち切りになった。


「せらぎねら☆九樹は山内と手え組んでる! 奴はワシらには真相にたどり着けないってメッセージをゲームで伝えるためにこんな回りくどい方法をしてるんやないか!!」


桝谷は声を荒げ頭を掻く。逆に蒼空つばさは冷静でいた。


「桝谷さん。…私は逆にせらぎねら☆九樹さんは何か伝えようとしてるんじゃないでしょうか?」

「何やと?」

「確かにこのデータ消去は予想外でした。だけど今新しくやり始めたセーブデータのアーカイブを見てください」


勇者ナインウッドのステータスも持ち物を全て失っていた。だがアーカイブの大切なものの中に〈メモ〉と〈鍵付きの日記〉だけは残っていたのだ。


「なんでこれだけ残っとるんや?」

「このゲーム、もしかしたら周回要素があるかもしれません」

「周回要素?」

「ほとんどのゲームは1本の道に沿ってエンディングまで行くんですけど。中には何度もプレイして特定のアイテム所持や条件を満たすことで別のストーリーを見たり、本来のエンディングに行くことが出来るんです。あのせらぎねら☆九樹さんが普通のゲームを作るとは思いません。恐らく周回要素を作って真実にたどり着くようにしてるんじゃないかと思うんです」

「だとしたらあれか! その為にこのアイテムが必要ってことか!?」

「恐らくこの『鍵付きの日記』とメモはそのアイテムなんだと思います。プレイヤーに気付かせるために冒険データがリセットしてもアーカイブとして残るようにしてるんです」

「ならまだチャンスはあるわけやな!」

「もう一度プレイしましょう。必要な情報はメモやスクリーンショット(画面写真)にして残しておけば後で確かめられますし」


桝谷とつばさはクインテッド・ソウルズ・ゲームに紫龍院事件の真相があると信じてもう一度最初からプレイすることに決めた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


紫龍院事件と関係の無い清志達もアーカイブの事に気付き、2周目のプレイングでは『鍵付きの日記』と『メモ』の事も配慮して探索多めのプレイをすることにした。


敵の強さが変わっている所はないが、所々人物のセリフが変わっている所がある。


『また消されるのにどうして頑張らないといけないんだ?』

『あのお方がいる限り真実にはたどりつけないのに…』


まるでゲームの世界にで生きているようなセリフに彼らがただのキャラクターではないような感覚になっていく。更にボス戦でも…


『何度戦おうが同じだ! 貴様らは決してヴィオ様の元に着くことは出来ない!!』


先の戦いを覚えているようなセリフを言って清志を動揺させる。


(このゲームを作った人は周回プレイを想定した上のセリフを入れているのか…。だとすると必要なアイテムを集めないとクリアできないってことか)


途中で調べなかった家の中や施設の中を見ると、見つけられなかったアイテムがあった。

民家の引き出しから新たにメモを発見した。


『警察に行っても無駄だ。ヴィオは政府関係者とつながっているし、奴らは実害がないとてこでも動かない。ケチな軽犯罪は取り締まる癖に、本当に困った時は煙たがるように面倒ごとを避けるように言い訳してサボりやがる。あのマスなんたらとかいう刑事も信用できない。誰も助けてくれないなら、私の手であいつを裁く。あのカルト教団の親玉を私の手で裁く。例えそれで地獄に堕ちようと。 P:1のD』


そしてもう1枚のメモを発見した。


『5つだと時は巻き戻る。4つだと今の時間にいる。今を大切にしたいなら5つ集めるな

P:3のA』


これまでのメモと違い何かのヒントの様だった。


「もしかして…この最後の暗号は合わさると何かの文字になるのか?」


清志はアイテムを集めて、その謎を解こうとしていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―蒼空つばさの家


「…」

「桝谷さん…」

「このセリフ…。加害者の…倉木明菜の言葉や…」


紫龍院事件の主犯である紫龍院蠱惑こと川尻栄作を殺害した女性・倉木明菜32歳・既婚者。夫・倉木聡一が教団に貢ぐために借金をし、それを苦に自殺したことがきっかけだった。その恨みを晴らすべく彼女は殺人という手段を使った。


倉木明菜は裁判で死刑判決を言い渡されたが、教団に原因があったことの酌量の余地や世間から同情され減刑の声が高まり懲役20年に減刑された。今も服役中である。


「倉木明菜の情報はワシら警察と一部メディアしか知らん…。なんでこのゲームにあるねん…」


桝谷は確信していた。せらぎねら☆九樹は紫龍院事件を知っているレベルではない。恐らく何等かの関係者であり、因縁がある。そしてなぜ山内に近づいているのかも理解した。


「奴は…せらぎねら☆九樹は山内に…」

「桝谷さん! 九樹さんがそんなことするわけありません!」

「せやけど…」

「だけど…」

「つばさちゃん。九樹ってどんな顔しとるんや? もしかしたらワシは過去に合っているかもしれん」


桝谷は事件解決のため多くの関係者から話を聞いた。その中に九樹、もしくは九樹の関係者がいるかもしれないと思った。


「わかりません。あの人はいつもトレードマークに仮面を付けているので素顔を見た人は誰もいないと思います」

「仮面を!?」

「配信中も付けていますし、外している所を見たことはないですね…」

「そうか…」

「だけど、九樹さんは何かしらのヒントをこのゲームに隠しているはずです」

「やるしかないっちゅーことやな」


つばさはゲームをしていて、先のプレイでは見つけられなかったメモ、そして『鍵付きの日記4』を見つけた。表紙には〈‥キシゲ・〉とだけ書かれているとしか表示されていない。


「なあつばさちゃん…。もしかして表紙の名前を合わせると誰かの名前になるんやないか?」

「確かに…この空欄を埋めれば」


ゲームを一時中断して2人は日記の表に書かれていた言葉を合わせてみた。すると〈クラキシゲオ〉と言う名前になる


「クラキシゲオ…」

「クラキ…倉木明菜と同じ苗字やないか!?」

「桝谷さん、クラキシゲオと言う名前に何か覚えは?」

「うーん…。倉木には息子もおらんし…親戚の子の名前かいな…」

「九樹さんはクラキシゲオについて何か知っているんでしょうか?」


〈クラキシゲオ〉、そしてメモと日記の謎。それを説くことがゲームのクリアと紫龍院事件の真相に近づく鍵だと思いつばさ達はゲームを続けた。



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