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第36話『クインテッド・ソウルズ・ゲーム:1』



11月。

ハロウィンも終わり冬支度を始める季節に入る。参加者達によるコスプレコンテストの結果は、佐藤太郎チームにいる東雲優子が優勝した。


優子はナース服を着ており、『もっと若い子が担当なのがいいかもしれないけどごめんね』というタイトルを入れて多くの票を得た。

最下位は大江戸華美であり、票は入ったものの「これほどメイド服がに合わない人もいない」という感想をもらう結果に終わった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


相談の結果、各自で割り勘して生活費を出し10月は乗り切った。

チームである分金はあるが、生活費用もそれだけ掛かるので重いリスクを背負うことになっている。更に収入源がないのでここから厳しい冬を超えていくと考えると気分が重くなる。


更にチームを崩壊させない事件が起こる。大江戸華美が相談せずにパチンコに行き5万程の散財をするという暴挙に出たのだ。


「皆好きなこと我慢しているのにどうしてギャンブルに金を使うんですか!?」

「だって競馬もボートレースもできねえなんて耐えられねえんだって! この企画のせいで今年の天皇賞に行けなかったしよお! それに勝って金が倍になれば生活が楽になると思ったんだよ!」


秋穂に責められて見苦しい言い訳をする大江戸にため息しかでなかった。

配信でギャンブルをしていた華美には我慢するのは難しく蒼空町にあるパチンコ店に行ってしまったようだった。


「…使ったものは仕方ありません。ですけど大江戸さん、手持ちの金が無くなれば僕達は失格なんですからそれだけは忘れないでくださいよ」


あまり怒りすぎても全員の士気を下げるだけなので清志は今後の金の管理を徹底し、消費を防ぐことにした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


11月3日。スタッフから封筒が送られてきた。中には手紙とCDが1枚入っている。

手紙には『本日13時よりせらぎねら☆九樹から新たなイベントの発表があるのでパソコンを起動して準備をしてください』と書かれていた。


起動させて待っていると、せらぎねら☆九樹から連絡が来た。


『これより皆さんには私の運営するアイドルグループ【Lure‘s】が出演するRPGゲーム【クインテッド・ソウルズ・ゲーム】をプレイしてもらいます。そのゲームを先にクリアしたチームにはより速い順番に報酬を与えていきます。ゲームをプレイしたかどうか証拠として必ずチームに所属しているライバーのチャンネルに投稿するようにしてください』


「まじかよめんどくせえ…」

「あなた配信者でしょう!」

「配信者が皆動画作り得意なわけじゃねえんだよ!」


『ちなみに攻略法はお教えすることはできません。もし進めなくなるところがあればバグの可能性もあるのでその時はスタッフが対応します。基本は自力でやっていってください。ゲームはパソコンでプレイできるのでお楽しみください。それではこれで失礼します』


せらぎねら☆九樹が説明を終えると、清志はゲームをPCに入れて起動させた。ダウンロード画面が現れ、インストールが始まる。


「とりあえずゲームは僕がプレイするので編集は大江戸さんお願いします。僕らに動画を編集する技術はありません」

「仕方ねえなあ…。まああまり期待はしないでくれよ」

「パチンコでお金を無くした分はそれでチャラにします」

「それを言われると言い返せねえわ」


ゲームを撮影する準備をし、清志は【クインテッド・ソウルズ・ゲーム】を始めた。起動画面にの初めからを押すとBGMと共にプロローグが流れる。


『時は現代。新たな時代を迎え人々は希望と夢に満ち溢れた世界を期待していた。

しかし、世界は未知のウイルスの流行で混乱し、物資を奪い合う紛争が相次いだ。国力が失われ、絶望の中に現れた救世主『ヴィオ』は神の教えを説き、人々に希望を与えた。だが、救世主の目的は絶望した人々を支配し自身の帝国を作ることであった。

 魔物と契約し、人ならざる力をもったヴィオはモンスターを解き放ち侵略を開始した。世界に平和を取り戻すため、立ち上がれ勇者よ。


運命を背負いし王子ナインウッドよ! ヴィオと彼を操る真の黒幕を打倒し世界に平和をもたらすのだ!』


「開幕から随分詳しい話をしますね」

「ネタバレになりませんか」


やたらツッコミどころがあるオープニングだが、暗転からフィールドマップが現れゲームをスタートさせる。


『よくぞ来た勇者ナインウッドよ。私は市長の中田だ』


世界感は現代に近く。勇者ナインウッドは瀕魂市凸凹町の市長・中田。ヴィオの演説による宗教勧誘で市民が移住し税金が足りず町の運営ができないので、ヴィオを討伐してほしいとのことだった。


『ヴィオの信者には警察もいて、奴から金を得てボディガードをしているらしい。ヴィオに関わる者達全員を倒してこの世界の平和を取り戻すのだ!』


「どういう世界観のゲームなんだ?」

「警察はどこの世界でもクズだな」


『資金を上げるからこれで準備しときなさい』


【ナインウッドは市長の中田から〈100ポコペン〉もらった】


「この世界の単位独特すぎるだろ」

「日本円でどれくらいだ?」


『それと初期装備としてこれを授けよう』


【ナインウッドは〈ボロいカヌーのオール〉と〈盾にできるフライパン〉と〈賞味期限が明日切れる傷薬〉を5個貰った】


『物資が無いものでこれくらいしかないんだが勘弁してくれ』


「ないよりマシ感が強い…」

「どんなネーミングセンスしてるんですかこのゲームを作った人は…?」


『ちなみだが傷薬等のポーション系のアイテムは賞味期限が過ぎると効果が半減するから早めに使った方がいいぞ』


「そんなリアル仕様をどうしてゲームに入れたんだ?」


色々とツッコミどころが多いがとりあえず探索の為にナインウッドを操作する。


『この町はかつて多くの住民が住んでいました』

『やつらが宗教を広めてから怠け者が多くなった』

『装備品は装備しないと意味がないぞ』


市役所の中を探索し、フリーゲーム特有のアセットで作られた町を歩き回る。


『俺達が上で苦しんでいるのに役所の人は何もしてくれない』

『もうこの町は終わりだ。だから引っ越しの準備をするんだ』


住民たちは暗いセリフばかりを零し、こちらの気分も暗くなっていく。


「とりあえず装備品でステータスを上げるか」


清志はメニュー画面を開き勇者ナインウッドに市長からもらったアイテムを装備させる。


【勇者ナインウッド】Lv1

HP:25

攻撃力:8→13

守備力:5→7

特殊防御:6

魔力:12


〈ボロいカヌーのオール〉と〈盾にできるフライパン〉を装備してステータスを上げた。セーブをし、街を出ようとするとイベントが発生する。


『オレ様は救済使途五人衆のビガン! ヴィオ様に反抗する奴がいると聞いてやってきた!』


怪しい白ローブの人物が現れてボス戦が始まる。

ビガンの攻撃は毎ターン物理で攻撃してくるものであり、回復を挟みながらこちらも攻撃を繰り返す。5ターン程かけて倒した。


『くっ…オレ様を倒したからっていい気になるなよ。他の4人は簡単には倒せないからな』


そう言ってビガンは消滅した。リザルト画面で賞金として1000ポコペンを貰い、経験値を得てレベルが3に上がった。


『あなたが勇者ナインウッド、流石です。私はヒイラギ。ヴィオを倒すために貴方の力を貸してください。彼を倒すには私が持つ『エレメントクインテッド』を5つ集めなければいけません私が1つ持っており、残りは各地のヴィオの手下に囚われている4人の姉妹が持っています。私も度に同行させてください』


【ヒイラギが仲間になった】


「うーん…。なるほどね」


ボス戦を終え、なんとか『クインテッド・ソウルズ・ゲーム』を清志はプレイしていった。


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