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第33話『リセット・オン・ライバー』

―せらぎねら☆九樹の自宅-


町からは案れた郊外にある自宅。そこはせらぎねら☆九樹が仕事と生活をする場所だ。


『今日はハワイの海を初めて泳ぎまーす!』

『綺麗ですねー!』


パソコンに映し出されるハワイ旅行の映像の数々。

【海外旅行!Lure‘sのメンバーとハワイで満喫してきた】と言う動画を前編・後編にまとめて作っていた。


「サムネもできたぜ」

「後は投稿用に出力をするだけです」


Lure‘sと共に作業し動画制作を完了させる。


「さて、次は新たなイベントをすすめようか」

「一般人と配信者をコラボさせるの?」

「より面白くするためさ。彼らは選び、配信者達は選ばれる努力をしなければならなくなる」


せらぎねら☆九樹はパソコンを操作し、配信の準備を始めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―蒼空町・公民館


参加者達が集められ、デスクの上には6人のライバーの情報が乗った書類が置かれている。


『やあ皆さんおはようございます。最近寒くなってきましたが体調の方はどうですか?』

「まあ、大丈夫だと思います」

『それは何よりです。それでは早速新たなゲームの話をしましょうか。まずは現在ペアを組んでいる方とはペアを解消してもらいます』

「何!?」


九樹の言葉に参加者は驚く。


『様々なゲームにより参加者が減って寂しい限りです。そこでここで新たな参加者を加え、あらたなチームを組んで今日から生活してもらう事にします。名付けて【リセット・オン・ライバー】!』


せらぎねら☆九樹によって説明が始まる。

配信者である蒼空つばさ、大江戸華火、菅井俊、エミリー・フォード、佐藤太郎、玉州ナインらには失格した元参加者の残した所持金を持たせており、現在残っている参加者は6人の内誰かを選びチームを作る。

そして計6チームによりサバイバル生活を続行してもらうことになる。チームはライバーを含めて4人から5人までになる。


『参考までにこれが6人のデータと所持金だ』


〇蒼空つばさ

・登録者572万人のアイドルライバー。歌やゲーム、体を張った地獄企画の配信を行ったりする。

・所持金28万円


〇大江戸華美

・登録者172万人のアイドルライバー。ゲーム実況をメインに行う。江戸っ子風の話し方が特徴。競馬やパチンコの配信もする賭博好き。

・所持金14万円


〇菅井俊 

・登録者102万人の男性バーチャルライバー。バンドグループ・平成堕天使残党軍のドラム担当。音楽配信を主にする。

・所持金61万9000円


〇エミリー・フォード 

・登録者79万人のバイリンガルバーチャルライバー。ホラーゲームやRPGのゲーム配信をメインに活動する。パーティ企画によく出るライバーで海外ライバーとの翻訳者としても活躍。

・所持金30万円


〇佐藤太郎 

・登録者33万人の男性バーチャルライバー。中二病風の学生気質が特徴の配信者で格闘ゲームの配信をメインにやる。活動歴8年とこの中ではかなりのベテラン。

・所持金43万円


〇玉州ナイン 

・登録者50万人のアイドルライバー。カタコトの日本語を話すのが特徴の配信者。野球ゲームの配信や野球観戦同時視聴の配信を主にする。好きな球団は【東龍コバルトチーターズ】(昨年Jリーグ準優勝、ライバルは坂西ビッグモンキーズ)。

・所持金8万3304円


それぞれの特徴が簡単に説明された紹介文。この中から1人選んでチームを選ばないといけない。


「このゲームの意図はなんですか?」

『深く考えなくてもいいです。君たちは自分の直感で選べばいい』


清志の質問に淡々とせらぎねら☆九樹は答える


「一度選んだら変更はできないのですか?」

『勿論変更はできない。選択権は皆平等に一度だけだ』

「わかりました。では玉州ナインさんを選びます」


阿久津は即答で玉州ナインを選んだ。


『了解しました。残り21名の参加者もよく考えて選んでください』


「俺はこの人で…」

「私はこの人…」


阿久津に続いて他のメンバーも選んでいく。ほとんどのメンバーは蒼空つばさか菅井俊を選ぶ。その中で【大江戸華美】は2人しかいなかった。説明の欄に【賭博が好き】と言うのが、参加者達からすればマイナス要素なのだろう。


『選択に偏りがありますね。大江戸華美さんに誰もいませんが…』

「賭博好きな人なんて仲間にできるわけないでしょう!」

『では、しかたなのでくじ引きで選びましょう』

「最初と話が違うじゃない!」

『アクシデントが起こったら対応するのが当然でしょう』


せらぎねら☆九樹はLure‘sのメンバーにくじの入れた箱を準備させて、中から2枚の紙を取る。


『私が引いた2枚のこの紙には君たちの誰かの名前が書かれている。その人物は大江戸君のチームに入ってもらう』


せらぎねら☆九樹が紙を開けると『東雲秋穂』、『伊藤清志』の名前が書かれていた。


『この2名は大江戸華美さんと彼女を選んだ『マルガリータ・フェルスキー』、『チャンフェイヤン』さんとチームを組んでください』

「そんな…」

「仕方ないですよ…」


せらぎねら☆九樹の決定に逆らうことは出来ず清志達は大江戸華美のチームに入ることになった。


結果的に

蒼空つばさのチームの増谷平太、白石健司、大久保直美。


大江戸華美のチームに東雲秋穂、伊藤清志、マルガリータ・フェルスキー、チャン・フェイヤン。


菅井俊のチームに三上康平、太田真、中井洋子


エミリー・フォードのチームに天城あずさ、淀川葵、黒江アリス


佐藤太郎のチームにイ・チャンスウ、秋月美香、東雲優子、松山綾善


玉州ナインのチームに阿久津正義、宮野次郎、立花連、原幸広


とチーム分けが終わった。


『では、今日からチームで生活してください。場所はスタッフが案内します。鍵と新しいアイテムが手渡されますので』


そう言ってせらぎねら☆九樹の説明は終わった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―戸建て住宅エリア


清志達が住んでいたマンションから徒歩10分ほどの場所に2階建ての賃貸戸建て住宅がある。今日からはそこで生活をしていくようである。


家賃は月12万円。冷暖房完備。インターネット完備、冷蔵庫・洗濯機が備え付けられている物件である。


アイテムとしてこのゲーム専用のスマホとノートパソコンをもらった。


「おーっす! 今日からよろしくな。アタイはバーチャルライバーの大江戸華美だ!!」


大江戸華美が全員に挨拶する。


「あの、大江戸さんはどうしてこのサバイバルゲームに参加したんですか?」

「やっぱり借金したんじゃないの?」

「てやんでえ! 確かに昔借金したことはあったがもう返済してらあ!!」

「したことあるんですか…」

「まあ80万くらいだが、ライバーで稼いで今はもうないぜ!」

「不安しかない…」


清志と秋穂は大江戸華美に対し不安を抱いている。


「大江戸さん! 私あなたのファンなんです!」

「アンタの【江戸っ娘達で回転寿司100皿食べてみた!】企画面白かったです!」

「そりゃありがとよ!」


マルガリータ・フェルスキーとチャン・フェイヤンは大江戸華美のファンであり、選んだのもそのためだった。


「アタイは会社に新しい企画だからって参加したんでえ。体を張るのは慣れてるし、事前まで説明なかったからどんなもんか知らなかったがな。この町に車に乗せられて目隠しで運ばれてきたし」

「大分大事になってるんですね」

「企画には【ライバーと素人による動画制作合同企画『ザ・チャンス』】みたいな書類をさっき渡されたがよう」

「いえ、全然違います」


清志は大江戸華美に自分達のこれまでサバイバル生活についての説明をする。


「なーるほど。そりゃ九樹の好きそうな企画だぜ」

「九樹さんの事を知ってるんですか」

「知っているっていうかうちの事務所のトップだからな」

「事務所の?」

「ああ。いけ好かない奴だがライバーとしてはかなりのやり手だ」


苦虫を潰した顔で大江戸は話した。今日からライバーとの共同生活が始まった。



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