警察官関係者最大導入、被害額犯罪史上最高額クラスの事件として連日メディアを騒がせた事件があった。
『紫龍院事件』
教祖である・紫龍院蠱惑(本名・沢尻栄作)が架空の神、紫龍神を信仰の対象にし、信じれば商売繁盛・出世することを目的として信者からお布施として金を回収していたカルト教団・紫龍院教の起こした詐欺事件である。
教祖の死後、警察は幹部クラスのメンバーの捜査に一生懸命になっていた。
彼らが被害者からだまし取っていた金のありかを探すためには金を管理していたであろう幹部クラスのメンバーでなければならないと考えていた。
有力候補だった幹部・大智福士は獄中で死に、もはや探すのは不可能だと思っていた。だが桝谷は悲しみの中にいる被害者達を救う為、雲隠れする紫龍院教の幹部達を探し捕まえるのに必死だった。
だが努力も虚しく上からの圧で捜査は強制的に打ち切られることになった。
全員が事件の事をあきらめる中、桝谷は単独で捜査を続けた。
幹部クラスのメンバーを2人だけなんとかみつけることが出来たが
「し、知らねえ。俺達はただ命令に従って信者に言葉を説いていただけだ」
「金は大智さんしか管理を許されなかったんだ! 俺達だって安い金でこき使われて逃げたかったんだ! 大金を得れるって言われてたのに割に合わねえよ!」
何一つ収穫が無かった。それどころか勝手に紫龍院事件を調査していることが上司にばれてしまい降格処分を受けた。本来なら懲戒免職も免れなったが、上司はこれまで尽くしてくれた桝谷の事を思い幹部らに掛け合った結果であった。
だが、桝谷は警察を辞めた後も捜査を決して辞めなかった。
『孫に残すはずだったお金が無くて…申し訳ないんです』
『このままだと店を潰さなくてはならないんです! 親になんてわびればいいのやら!』
『主人が汗水流して事業を起こそうとしていました…。それなのにこんな結果で終わるなんてあんまりです!』
被害者からくる数々の言葉。決して安くはない数百数千万の大金。少しでも被害者の元に返らなければ悔しくて仕方がないだろう。彼らの思いをくみ取り捜査を続けて、やっとたどり着いたのがこのサバイバルゲーム。
山内とつながりがありそうなこの催しで何とか繋がりを見つけようとしたときに友人を失ってしまった。どうすればいいのかと桝谷は思っていた。
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気晴らしに散歩に出るが足は重くなるばかりだ。そこに6人のライバーがすれ違い通りがかる。
「やっと呼び出されたかと思ったら今度は公民館に来いだとよ」
「九樹さんの奴、一体何を考えてるんだか…」
ライバー達はスタッフについていってるが、その中の1人に桝谷は目についた。
「福子ちゃん?」
「!!」
蒼空つばさを見て桝谷は何か思い出すようにつぶやいた。
「皆ごめん!先に行ってて!」
「あ、ああ」
「早く戻ってきてくださいよ。公民館はこの先ですから」
「ありがとうございます!」
スタッフにも声をかけ、つばさは桝谷の元に駆け付ける。
「桝谷さん!? どうして警察の方がここに?」
「や、やっぱり福子ちゃんか? わしはもう警察はやめたんや」
「そうなんですか。それとちょっと、今は【蒼空つばさ】って呼んでくれませんか? 本名はまずいんで…」
「はあ…?」
【福子】。それは蒼空つばさの本名・大智福子の事であった。彼女は過去に紫龍院事件で父親の事について他の捜査官から追求された時、桝谷が保護していたことがあった。
「それにしても大きくなったなあ。まさかこんな所で出くわすなんて運命ってやつやな」
「はい。当時はお世話になりました。父のせいで多くの方に迷惑をかけてしまい」
「福子ちゃんは悪くないで。福子ちゃんは何も知らなかったんや、罪はない」
「福子ちゃんはやめてくださいね」
「すまんすまん」
昔話をした後、蒼空つばさは桝谷になぜ自分がここにいるのか説明をした。
「…そうか。福…いやつばさちゃんも紫龍院事件…ひいては山内の因縁に巻き込まれたっちゅーわけやな。お前のおとんは死んでもなお娘に迷惑をかけるとは感心せん」
「…いえ、いずれ父が起こしたことで私に何か起こるんじゃないかとは思っていました」
「女の感ってやつか?」
「母に不幸がありまして」
つばさの母が実家に帰った後、大智に恨みがある人間がどこからか話を聞いていたのだろうか、彼女に危害を加え傷害罪で警察に捕まった。
『あいつのせいで俺の家族はバラバラになったんだ! 大智福士の関係者は全員裁かれるべきなんだああ!!』
精神が錯乱状態であり、酌量が認められ罪が軽くなったが母はそれ以来外に出られなくなったようだ。
「最も、いつの日からかホスト狂いになってしまって私もどういう気持ちになればいいのか変わらないんですよね」
「…金は魔物やからなあ。人間の心を簡単に変えてまう」
「父も母もそうなったのですからきっと私も…」
「それはわからん。お天道様はつばさちゃんをちゃんと見とる。つばさちゃんは幸せになるんや絶対」
「ありがとうございます桝谷さん」
「だが運営は何を考えてるんや。ライバーよんで何をするつもりや」
「さあ? せらぎねら☆九樹さんが考える事は予想がつきません。だけど彼は配信者として優秀な人です。きっと何か視聴者が喜ぶことを考えています」
桝谷にそう言うとつばさはライバー達が待っている公民館にむかった。