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第30話『山内の野望』

貧困による格差をなくすという建前を出し、多くの政治家は演説をして投票されようとしていた。


「私がトップになった後は全ての中小企業に支援と改革の提案を…!」


「女性が活躍できる社会を実現するために私は努力します!」


「海外との関係をより強め、国民の方々が海外でも仕事ができるように…!」


多くの政治家の演説はかつて提案された法案の焼き直し、練り直しが多く世間の人々はあまり関心を持てなかった。

そんな中、山内茂が率いる【日本の未来を考える党】は若年層から高齢層までの人々から支持を得ていた。


「私が考える日本の未来をは変わりゆく社会に対応し、国民が貧困にならず平等に生きる社会を皆で作り上げる社会を作ることです。特に近年は自由業による新たな働き方が増えてきています。新たに生まれた職業も我々政府が支援する事で守り、高水準のライフクオリティを維持することを宣言します!」


【日本の未来を考える党】は動画投稿をしているライバー達を【公共配信者】として公務員として組織し安定化させるほかに、近年の感染ウイルスの大流行による不景気対策のために中小企業への支援として【国家による企業救済経済支援案】を出したり、事情により仕事ができない人々のために【ベーシックインカム制度】を行えるようにこれまでにないスピードで全国の市役所で手続きができるように働きかけたことで多くの信頼を得た。


山内は政策だけでなく、自らも動画サイトで専用のチャンネルを作りインフルエンサーになりうるライバーと雑談配信をしたり、今現在の政治に関して質問して彼らの疑問に応えたり、視聴者である国民に向けての解説配信をしているので、最も知名度が高い政治家であるのだ。


「私自ら配信を行い、情報の最先端を常に受信して日本の未来を考えていきます」


山内の現代に合った広報活動により【日本の未来を考える党】の支持率は上がり、内閣総理大臣に最も近い場所にいた。


――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―【日本の未来を考える党】事務所


「山内様。野党のリーダーから我が党の傘下に入りたいという声が上がっています」

「役に立ちそうならすぐに傘下に入れろ。手駒は大いに越したことはない」

「御意」


部下は即座にメッセージを送信し、対応した。


「ククク。…ワシの野望もあと少しで達成できる」

「あの、山内様」

「何だ鈴木?」


【日本の未来を考える党】の女性議員である鈴木が山内に質問する。


「山内様の野望とは何ですか?」

「…貴様もワシの部下になって5年もたつし、伝えてもいいだろう」


山内はお茶を啜って話を始める。


「鈴木、どうして日本の経済は悪化していると思う?」

「…近年まれに見ないウイルス流行による流通状況の悪化。それにより売り上げが低下し、倒産する企業が増えているからでしょうか?」

「まあ、正解ともいえるがワシはもっと根本的な問題があると思う」

「根本的問題?」

「確かに倒産する企業もあるが、そうではない企業もいる。潰れなかった企業は目に見えぬ加護、国家による支援があるからだ」

「国家による支援ですか?」

「そうだ。企業の中でも財団は倒産すればワシら政治家にとってもダメージを受ける。財団はあらゆる企業を纏め、税金を多く収めてくる。だから倒産しないように大きなつながりがあるのだ。ワシはそれだけでは無く全ての企業に支援できれば倒産するリスクを回避できたと思っている」

「ですが全ての企業を支援するのは流石に…」

「無論それはそうだ。今は昔と違って経験の無い若い奴も借金を簡単に起業できる。だがそんな奴らが会社をずっと運営できるか? だからこそ選定し、一つの企業にしてワシらの手で運営するのだ」


山内の眼は狂気に満ちていた。


「民営の力などたかが知れている。だから鉄道や郵便は資金不足になって潰れていった。ワシは一般企業だけでなく、全ての分野の企業の運営をワシらの手で運営するのだ」

「国営化するというのですか?」

「そうだ。国営化して全ての資産を支配する。そうすれば金は税金を絞らなくともワシらの元に集まることになる。【大日本国営化計画】が成功すれば、ワシは総理大臣として真の支配者になる…! ワシはこの国の永遠の王になるのだ…!!」


狂気じみた山内の計画に鈴木は恐怖を感じるが、彼の元にいれば確実に権力が手に入る。鈴木だけでは無い。山内の底知れぬ力と権力に魅力を感じ、その加護を受けるために彼に尽くそうとする。それが例え自分の手を汚すことになろうとも。


「鈴木。女性に平等な社会を実現させる事をお前もかつて言ってたが、その思想が実現できてないのはなぜかわかるか?」

「やはり、我が国では女性労働者に対する施策がまだまだ不足しているからなのでは?」

「違うな…。『平等になれば自分体は男性同様の扱いを受け、女性として生まれた事の強みを無くしてしまう』ことに恐れている奴もいるからだろう」

「強みを失う…」

「権利とは責任との等価交換だ。平等になるという事は男性と同じ労働力を行わねばならん。そうなれば『女性だから』という免罪符を言えなくなる」

「なるほど…」

「ワシは差別をしないが、だからと言って容赦もしない。ワシがトップになればワシの支配の元、全ての人間が従うことになる。平等であろう‥」

「はい…」


鈴木は山内の野望の為に働くだろう。それが形を変えた平等な社会の実現になるのならと自分の中で言い聞かせて…。



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