サバイバルゲームの参加者は9月に入り最初にいた40人から徐々に減っていき、今は20人ほどになっている。
イベントゲームにより振り落とされる参加者や、生活に耐えれず逃げ出そうとする参加者がいなくなり、残された参加者は手元の金を使い日々を過ごしていく。
清志は優子と共に性格を続けていた。
「はあ」
「清志君。大分疲れているようね」
「夜勤には慣れているつもりだったんですけど、工場清掃は思ったより体力を削る仕事でちょっと疲れていまして…」
「無理はしないでね。お金の心配をしているかもしれないけど、なんとかするから安心して!」
「ですが、まだ7ヶ月もあるんですよ。しかもあの運営スタッフが何をするのかわからないですし…」
今は平穏だが、突然どんなイベントが起こるかわからない。その見えない恐怖がじわじわと清志を含め他の参加者にも浸透していった。
「気にしすぎるのも体に毒だわ。休みの日くらいゆっくりして、頭を空っぽにするのがいいわよ」
「はあ…すいません。心配かけてしまいまして」
楽観的な優子の言葉に清志は一度考えを捨てるが、運営サイドは新しいイベントを考えていた。
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―運営サイド
「せらぎねら☆九樹さんからメールが来た。新たな参加者を追加する【参加者オーディション】を開始するらしい」
「このタイミングでか?」
運営スタッフの坂下は部下の男に新たな参加者候補のリストを渡す。
「減りすぎて参加者がいなくなるのを防ぐためだ」
「金はどうするんです? 新たにまた参加者分用意するんですか?」
「その必要はない。失格になった参加者分の金を使えばいい」
「なるほど、それなら手軽に始められますね」
「だがそれだけで終わらないのがあの人の凄い所だよ」
「はあ?」
「九樹さんはホントに人を競わせるのが好きらしい」
坂下はそう言って煙草を吸った。
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―株式会社VRワールドライブ・プロダクション事務所
第3会議室に集められた6人の人物は何もない状態に困惑する。
「皆さんも企画で呼ばれたのですか?」
「いえ、会議があるって言って呼ばれて…」
この6人は事務所所属の公共配信者のライバー達である。
蒼空つばさ、大江戸華火、菅井俊、エミリー・フォード、佐藤太郎、玉州ナイン。全員事務所に所属している登録者10万人越えのライバー達である。
「忙しい所ご苦労」
「川田社長!?」
「君たちにお願いがあってきたんだ」
川田はそう言って机の上に6つの封筒を置いた。
彼は事務所の社長であり、せらぎねら☆九樹の部下である。山内によって指名された責任者でライバー達に上から命令されたことを伝える連絡役の様な役割をしている。基本的に自分は何もせずイスに踏ん反りかえっているだけの名ばかりの役員で信頼は無い。
「これから君たちはせらぎねら☆九樹主催のサバイバルゲームに参加してもらうことになる。君達は登録者順に並べられた封筒を手に取っていってくれ」
「はあ!? 九樹の企画に参加しろって本気ですか!」
「私達だってライブがあるんですよ!」
ライバー達は抗議の声を上げるが
「黙れ! 九樹さんの命令は優先的にやるべき事なのは彼がトップになってから決まっている事だろう! お前らのつまらないゲーム配信をやるよりははるかにマシだろうが!」
「何だよその言い方!」
今にも言い争いになりそうな悪い空気に割って入ったのは蒼空つばさだった。
「わかりました。封筒を取ればいいんですね」
「つばささん!?」
「…社長はともかく九樹さんの企画ははずれが無いし、何もずっとやれって言うわけじゃないです。これはチャンスととらえて彼の企画に乗るべきだと思います」
「流石ナンバーワンアイドルライバーだ」
川田が言うように、つばさは事務所の女性ライバーのトップである。
登録者数572万人。アイドルライバー歴7年のベテラン配信者でもある。
「皆さんの不満はわかっています。もし何かあったら私が責任を取ります」
「そんな…つばささんが責任を取ることなんて」
「まあ、つばささんがそう言うなら…」
皆渋々納得してつばさのいう事に乗ることにした。
先に蒼空つばさが封筒を引く。そして順番に封筒を取っていく。
大江戸華火 172万人
菅井俊 102万人
エミリー・フォード 79万人
佐藤太郎 33万人
玉州ナイン 50万人
それぞれ登録者の数で順番を決めて封筒を取っていく。
「その封筒にはこれから参加するゲームに必要な資金が入っている。それを現地のプレイヤーと共に使用してくれ」
「そんなの初めて知ったわよ!」
「話はこれで終わりだ」
エミリーの言葉を遮り、会議室に現れた黒服の男達がライバー達を抑え込み目隠しをして連れていかれる。
「九樹さんの指示通りにしました」
「後は我々にお任せを。くれぐれも先生の恩を忘れないように…」
「わかっていますとも」
川田は黒服にお辞儀をして、彼らを見送った。
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―グアム島・ホテル
シャワールームから出てきた樒が九樹の隣に座る。ベッドには楠が寝ており、その隣で九樹はメールを確認し、新しいイベントの準備をしていた。
「新しいイベントを始めるの?」
「ああ、更に盛り上がること間違えない」
「ご苦労様、早く寝ましょう。今日は私と楠ちゃんの当番だもんね」
九樹はメールを打ち終えると、樒を抱き寄せ就寝についた。