8月も後半に入り、夏の暑さが残る日々が続く中もサバイバルゲーム生活は続いた。
清志と優子は冷房使用による電気代の高額化に気を付けながら生活していた。
『本日、不審死を遂げた被害者・島雄二氏の殺害に関与したとされる男が身柄を拘束されました…』
「あらあ…物騒ねえ」
テレビに流れるニュースを見ながら優子は洗濯物を畳んでいた。
夜勤で疲れている清志は寝ており、その間優子は家事を担当していた。
「9月までこの暑さが続くと思うと憂鬱ねえ…」
クーラーの温度を調節しながら水分を取っていると、玄関からゴトンという音がした。
「なにかしら」
玄関に確認しに行くと、ドアの配達受けに小包が入っていた。
「清志君は寝ているし、私が確かめておこうかしら…」
表面には運営の名前が記載されており、小包を開けると中には赤と黒の小型の携帯端末と手紙が入っていた。
『参加者にイベントを通達します。
このイベントは女性参加者のみに通達しております。お手元の携帯端末の写真機能を使い「水着」を着た写真を送ってください。題して『ドキドキ☆水着コンテスト』を実施します。写真はパートナーに取ってもらっても良し。水着はアウトレットショップにあるので各自購入してください。写真を送らない場合は『失格』とするので明日の夜までに送ってください』
「嘘でしょう…。水着コンテストって言っても私はもうおばさんよ…!」
突然のイベントに驚愕する優子。子供もいて、30歳を超えた自分が水着を着るなど考えられなかった。だが最後に書かれている『失格』の文字を見て考える。
(水着を着るなんて恥ずかしい…。だけど失格になれば秋穂がどうなるかわからないし…)
清志を起こさないようにして優子はアウトレットショップへと向かった。
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―あずさ・葵ペアの部屋
「あずさちゃん。どうかな」
「似合ってるよ」
淀川葵はあずさが選んだビスチェの黒い水着を着ていた。葵の雪の様に白い肌に映えていた。
「恥ずかしいな…」
「私も水着なんだから平気でしょ?」
あずさはフリルの装飾が付いたクロスタイプのビキニを着ていた。
「あずさちゃんはいつも自信があってすごいよね。私はスタイルがそんなに良くないから…」
「そんなことはなないよ。葵には葵の良さがある。ふくよかな肉付き、私は好きだよ?」
「あずさちゃん…」
「互いに再開した時に約束したじゃん。絶対大金を得て一緒に暮らそうって…」
「うん。ずっと言ってたものね」
2人の関係は友情を超えた、愛情の関係だった。
女子高で会ってから互いに趣味や性格は違うがウマが合い、放課後や休日では相手の家に遊びに行くほどの中になっていた。
だが世間はジェンダー平等が広がりつつあるものの、同性同士の付き合いを許すほど浸透しておらず。卒業と同時に2人は泣く泣く別れて別の道を歩んでいた。
異姓のパートナーを得た者の、あずさも葵も上手くいかず相手に借金を残されるという最悪の結果に終わっていた。
あずさはこのゲームに参加した後、清志と生活しながら葵と時々あっていた。そして約束を交わしたのだ。大金を得たら2人で静かに暮らそうと。
「社会は厳しいよね。ベーシックインカムも同性同氏だとパートナー制度の申請が出来ないし」
「仕方ないよ。昔よりは厳しくないけど、制度はまだまだ追いついていないから…」
「だけど…だからさ」
あずさは撮影端末を置いて葵に抱き着く。互いの吐息が当たるほど密着し、体温が伝わっていく。
「もっと愛したくなるじゃん。好きだからさ」
「あずさちゃん」
「写真とったからさ、布団にいこ?」
そういって葵を連れて寝室に入った。
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―夜11:00頃
「それじゃ行ってきます」
「気を付けてね」
清志が夜勤に出かけるのを確認し、鍵を掛けると着替えを始めた。アウトレットショップで買ったワンピースタイプの水着を着る。
「これならあまり体のラインも目立たないわよね」
水着に着替えて洗面台の鏡を見て確認する。
「年をとったものね…」
体型に気をつけていたものの、どうしても若い世代に比べると見劣りする自分の水着姿に自信を失いかけるが携帯端末を起動させて写真を撮る。
「送らないと失格になるからダメ元で取るしかないわね…」
2~3枚とっては確認し、よさそうなものをピックアップしていく。その中で送るための写真を1枚選び、指定されたメールアドレスの送付先に写真を送った。
「これでいいわね…」
気疲れした優子は着替えてシャワーを浴びると寝た。
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―太田・洋子ペアの部屋。
「どうかな太田君?」
「洋子さん良いですよ! 鍛えられた肉体に競泳水着が良く似合ってます!」
洋子は太田に撮影を任せ、水着は着やすそうという理由で競泳水着を選んでいた。
「ありがとうね。いい写真を撮ってよ」
「勿論です!」
同居している参加者に写真を撮ってもらったり、自撮りしたりと参加者それぞれが写真を取りコンテスト用に送った。