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第21話「合格発表」

5人の面接官による面接ゲームは今まで感じた事のない緊張感と閉塞感の中ついに終わった。


15人全員の面接が終わり、精神的な疲労で帰宅した清志達は横になった。

先までの正解なのかどうかわからない空気で過ごした10分にも満たない時間は生きた心地を感じなかった。


「清志さん…。私達より疲れてなさそうね」

「まあ…。コンビニで働いていて、ああいうタイプの迷惑客みたいな方を相手にしていたのがいい経験になっていたのかもしれませんね」

「コンビニってそんな難しいの?」

「いえ、基本的な仕事を覚えれば後は時間ごとにあるタスクをこなしていく感じですね。面倒ごとが多いのは確かですが…」

「私、コンビニ店員無理かも…」


秋穂はぐったりしてテーブルに突っ伏した。


「正直あの人たちの質問いじわる過ぎるし、どう答えていいのか全然わからなかったし…」

「サバイバルゲームだから、ボクらを蹴落とそうっていう魂胆の方が多かったのかもしれません」

「だとしても…もうセクハラ…いえ、パワハラの域よ」


あずさは冷蔵庫から自分の名前を書いたペットボトル飲料水を取り出し一気飲みする。


「しかもあのバーチャルライバーみたいな奴は面接っていうかふざけた感じだし」

「へるどっぐ♡猫鳥さんでしたっけ? 登録者100万人いると話されていましたが」

「それは絶対嘘」


秋穂は否定する。


「なんかしゃべり方にセンスが無いっていうか。売れない芸人が無理して笑いを取ろっていう感じがしたんだよね」

「あー…確かに何かね。雰囲気はそれらしいけど、中身の人がかなり無茶してるってのは私も感じた」


へるどっぐ♡猫鳥に対してあずさも違和感を感じ取っていた。


「秋穂さんはライバーに詳しいのですか?」

「そりゃ休みの日はゲーム配信見ているし、好きなライバーは好きな時に推したいしね!」

「推し?」

「清志さんはそう言うの見ないの?」

「あまり見ないですね。配信よりも30分位の動画を観ていました」

「長時間観るのが得意じゃなければ切り抜きとか観るのが良いかも」

「切り抜き?」

「ライバーさんの配信とかを面白い所を抜粋してまとめている動画の事よ」


秋穂は清志にライバーの動画の観るのを進めていた。


「アンタら若いわね…。私はもう疲れて眠いわよ」


中井洋子は床に寝転がり、今にも死にそうな声で話す。


「あいつらマジで嫌がらせみたいな質問ばかりしてきてさあ…。本当に企業の人事担当って嫌な奴ばかりかって思っちゃったわよ…」

「それはどうなんでしょうね。彼らが本当に企業にいる人間なのか…」

「どういう事?」


清志の言葉に洋子が問いかける。


「バーチャルライバーの方はわかりませんが、仮にも企業を代表として方々がこんな素性のわからないゲームのイベントに参加するでしょうか? それに節々に人事部門を担当する割にはどこか責任感のなさや、身だしなみに緩さを感じました」

「身だしなみ?」

「ええ、ボクは人と話すときは顔を見るように言われていた職場の癖が残っているのでぼんやりですが…」


銀行員の久保沢は髪を後ろにまとめており清潔感にかけており、南は耳にピアスを付けていて企業に勤めている人間なのか怪しい印象があった。


「身だしなみが厳しいはずの大企業の方々が身だしなみに疎いはずが無いはずです。最も憶測ですし、必ず全員が気を付けているとは思いませんが…」

「だけど可能性である限り否定もできないわね」


あずさは清志の意見を肯定する。だがこれ以上話をしても机上の空論にしかならないので清志以外の3人は自分の部屋に戻って休むことにした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


―九樹の作業部屋


5人に報酬を渡した後せらぎねら☆九樹は映像を元に合否判定をしていた。


「中々頑張るね。参加者の人達」

「大金がかかっているからな。必死なのは当然だろう」


Lure‘sのメンバーである柊は面接を受けているメンバーを見ていた苦笑していた。


「だけど皆この面接の目的が『以下に面白い取れ高になるか』なんて知らないでしょう」

「伝えていないことで必死さが増すだろうかな」

「相変わらず悪趣味ですね」

「彼らが必死になる姿が視聴者にウケているんだから仕方ないだろう」


九樹が話しながら5人ほど決めていた所。


「彼は随分と饒舌だな」


清志の面接する姿を見て九樹は関心する。


「確か父親の借金の肩代わりで参加した子ですね。災難」

「だがそれでも折れずにゲームに参加している姿は視聴者受けがいいな。彼は合格としよう」


書類に合格印を押して次の参加者の様子を確認した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


翌日、公民館に集められた参加者達はスタッフにより合否判定の発表を受ける。


「ではこれより合格者10名を発表する! 発表されなかった5人は失格となる!」


スタッフからの発表に皆緊張しながら聞く。


「伊藤清志、東雲優子、天城あずさ、イ・チャンスウ、桝谷平太、中井洋子、白石健司、松山綾善、原幸広、チャン・フェイヤン! 以上10名を合格とする!」


「や、やったあ!!」

「これで大金を得れるチャンスが失わずに済む!!」


合格した参加者は皆喜びで声を上げた。


「不合格者である小坂学人、春野すばる、三上康平、宮野次郎、桐島修は失格とする!」

「ふざけんな!! あれだけやったのにそんな理不尽な事許されてたまるか!!」


小坂は結果に納得いかず殴りかかろうとするが、


「ぐあああっ!!?」


スッタフが取り出したスタンガンによって気絶させられた。


「不合格者は大人しくスッタフについてきてこの町を去る準備をしてもらう。こいつのようになりたくなければな」


その様子を見た不合格者は大人しくスッタフの指示に従い公民館から出て行った。


清志は合格し、ゲーム参加続行の権利を獲得した。



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