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第6話「死のゴールデンウィー ク」

シェアルームの生活にも慣れてきており、お金を無駄遣いしないようにしながら暮らして数日が過ぎた。肉体も今の生活に順応してきており精神的な疲れもなくなりつつあった。


「もう読んじゃったか…」


暇つぶしに読んでいたマンガ本を手元に積んで、寝ころぶ。


「暇だ…」


朝起きて、掃除してご飯を食べて、銭湯に風呂に入りに行って寝る。このサイクルが日常として続き気付いたことがあった。


それはあまりにも退屈だという事だ。サバイバルとはいえ日常生活を過ごしているのには変わらない。ルームシェアであずさと住んでいるので気を使う事があるが数日もいると慣れてきてしまった。


数日前まで激務の仕事をして、動画サイトで時間を潰し、休みの日は寝るサイクルをしていた。仕事が無い分暇だったが、いざ無くなるとやることが無くて暇になる。コンビニで購入した雑誌や漫画を読んだり、テレビを見たりしていたが、やがてそれも飽きてきた。


テレビは相も変わらず似たような内容のバラエティーや過去のドラマの再放送や焼きました新作ばかりで面白くない。漫画も一度読んだら内容を覚えて何度も読めなくなっていった。そして清志はある考えに行き着く。


「あれ、この調子でお金が持つのか…?」


手持ちのお金を確かめるべく封筒の中のお金を取り出した。残りの残金は95万1427円。

僅か数日で5万円ほどの金が無くなったことになる。初日に生活に必要な物を買うために1万円位使ったのは仕方ないとしても1週間も経つ前にそれだけ減っていることに驚きを隠せなかった。


「不味い…。あまりくだらないことに使うとお金が足りなくなる…!」

所持金が無くなれば月末に払う家賃等の生活費が払えなくなり、すぐに失格になってしまう。そうなれば折角手に入れた大金を得れるチャンスも水の泡だ。

訪れる未来への不安。金が足りなくなり失格する事態。改めて自制することが必要だと考えた。



「とにかく無駄な出費は抑えないと…」


これまでの出費を思い出す。食材や生活物資の購入に使った金。銭湯を利用するために払った金、それ以外に暇つぶし用の漫画を購入するのに使った金。


娯楽のために使った金が1番無駄であることを知り、無駄なお金を使う事を避けるのを誓う。しかし、大金を持った人間はどうしても気が緩み、無駄な買い物をする。普段から我慢や節制で少ない手持ちを抑えている分、いざ金が手元にあると贅沢がしたくなるのが人間の性である。


やることが無いことによる不安は内なる恐怖を湧きあがらせ、100万に喜んでいた参加者からも余裕が無くなっていく。


「てめえ俺の冷蔵庫から食料をとったろ!」

「ちょっとくらいいいじゃねえかよ!」


参加者の竹田和俊と佐久間林太郎がくだらないことで喧嘩をしていると、スタッフが訪れ2人を抑えるとその場で失格を告げた。


参加者は残り38人となる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


それから数日たってゴールデンウィークが終わる頃にスタッフに呼び出されて清志達は公民館に向かった。


「せらぎねら☆九樹さんからの指令だ。今すぐ公民館に集合しろ!」


坂下は久しぶりに訪れ、住人たちを部屋から連れ出し公民館へと連れて行く。途中で他の参加者も合流し、公民館につくとゲームのルール説明を受けた場所に入らされ、そこには再びノートパソコンとプロジェクターが置かれていた。


「時間だ、動かせ」

「はっ」


坂下の指示に部下がノートパソコンを動かし、映像を動き出す。


【せらぎねら☆九樹のリアル実況チャンネル】のロゴがでて、Lure‘sのミュージックビデオが流れる。だが前回とは違うものだ。


『チャンス♪ チャンス♪ チャンス♪』


『金額選んで~♪ 現金獲得~♪』


『現れる救済~♪ 自分を信頼~♪』


『チャンスを掴め~♪ キャッシュバックアップ~♪』


Lure‘sの歌が終わると椅子に座ったせらぎねら☆九樹が画面に映し出される。


『どーみ、みなさんおはぎねらです! 皆さんいかがお過ごしですか?』

「うるせえ! 人を馬鹿にした態度をとりやがって!」

「静かにしろ!」


坂下が小坂を叱責し抑える。


『それは失礼しました。しかし私は今回参加する皆さんの為にあるゲームを用意して来たのです』

「ゲーム?」

『その名も【キャッシュバックアップ・ゲーム】! 参加してからすでに10日も経過してますが、手元のお金はいくらほどございますでしょうか? 過去の参加者にはパチンコ店に通い過ぎて半分も無くした方もいましたが…』


ここまでの生活で必要な食品・雑貨の購入、嗜好品の購入。ほとんどの参加者はそれで手元の金はすでに80万くらいにまでなっている。かなり不安な額だ。


『このゲームは指定した額を使っていただくことでその金額の倍の値段を参加者の方に与えるゲームとなっております』


せらぎねら☆九樹によるゲーム説明が行われる。


参加者は10万、5万、1万の使用する金額を選び、その額を今日の10時から17時の間に全額使ってもらう、もしくはぎりぎりまで使ってもらう。今日はゴールデンウィークだが各種の店が開いているのでそこで利用するとのこと。何に使ったのか各自持っているハンディカメラをつかって撮影して証拠として提出すること。食品を買った場合はその日のうちに食べないといけない。17時までに使いきれずに余った額は、10倍の値段で罰金となりキャッシュバックされるお金から減らされる。使用額が半分に満たない場合失格としてお金はキャッシュバックされない。パチンコなどギャンブルによるお金の消費は認めない。

またお金を廃棄することも認めなない。ルール違反が確認された場合は最悪失格の可能性もある。


清志は多くの参加者が10万円を選んでいたので10万円を選んで買い物をした。

アウトレットショップで暇つぶし用のゲームソフト・ゲーム機等を購入し、レストランの食事代に使い課題をクリアした。



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