しばらくして三人はコンテナから出て行った。外から扉をロックする音が閉じられた空間に響く。
コクピットを覗き込んできたタブレットの男は、結局何もせずに降りていった。複雑に並んだパネルや計器類には、手を出す事が出来なかったのだろう。多分彼等は、
「……よし」
なんとか縄が外れて自由になったが、おかげで手首が血まみれだ。口にハンディライトを咥え、救急セットから包帯を取り出してシワが出来ない様に丁寧に巻いていく。
災害支援用とは言っても、
問題はこの後、どう行動するかだが……
相手が何人いるか解らないけど、このままここに監禁されているよりはずっといい。
ポケットからアクセスキーを取り出して差し込むと、搭載されているコンピューターのOSが立ち上がり、計器類等の表示パネルがボワっと光りだした。同時にメインモニターには『
HVライセンスカードをモニター横のスロットに差し込み
メインモニターに登録者名の『REIJI-B』の文字が表示され、その下で『|Authentication Completed《認証完了》』が点滅している。これで
「電装系チェックOK、と」
オレはメインモニターに表示されているシステムマネージャーを目で追いながら、各駆動系のアライアンスチェックの色が全て緑に点灯した事を確認した。エネルギー残量は30%弱と言った所。これは、もし万が一の事故があった時の為に、輸送時は化石燃料を最小限にするルールがあるからだ。
「それでも、これだけあれば20分は全力で動けるか」
コンテナを破って大通りから空港方面に走れば、エネルギー切れを起こす前に警察が駆けつけるだろう。公道を
そしてここからはスピード勝負になる。本体のエンジンを回せばすぐに音で気付かれてしまうだろう。
一般に流通している作業用
だけど今はガッツリとパワーが必要な場面、静かでクリーンなんて建て前はどうでもいい。なんたって、コンテナの扉をぶち壊さなければならないのだから。手や額に汗がにじみ出て来た。人生でここまで緊張した事はない、自分の命がかかっているのだから当然と言えば当然か。やるしかないとは言え、自分で設計した災害支援マシンの初仕事が
オレはゆっくりと息を吐きだしながら、首元に人差し指を入れてネクタイを緩めた。頭の中がフラフラと揺れる感覚を我慢し、そして、目を瞑る。
「頼むぞ、オレの
数回深呼吸をして覚悟を決め、スターターボタンを押した。
けたたましい音がコンテナ内に響く。閉じられた空間に反響して、普段の何倍もの音になって返ってきた。『このまま勢いをつけて扉を壊す!』そう思って一歩踏み出そうとした時……突然、ガクンッと揺れて動かなくなった。苦しそうなエンジンの音だけが虚しく唸っている。
「え……なんで動かないんだよ……」