『イヤッッ、イヤァァァァッッッ!!! ゾンビ!? アカネさん助けてぇぇぇ!!!!』
『はいはい、お姉さんに任せな』
『ピィッ!? なんかいる! なんか犬っぽい変なのいるよォォォ!?!?』
『わ、人面犬? 気持ち悪いねこれ……』
ズドン、ダダダダダッッ。
叫んでばかりで役立たずなアヤカの後ろから、的確に落ち着いた様子でアカネさんがヘッドショットを決めていく。
そう、このゲームは銃で迫り来るゾンビやら変異種やらを撃ち抜いて進んでいくゲームな訳だが。今現在、アヤカは精々敵の存在を知らせる警鐘としての役目くらいしか果たせてはいない。
『アカネさん、先に行ってよぉ……』
『ダメだよ。それじゃあアヤ虐助かるにならないだろう?』
『ならなくていいんですよぉ!! アカネさんの鬼!!!』
『はははっ』
きっと今、画面の向こうでサキは涙目でアカネさんの肩をゆっさゆっさしているのだろうか。そうしている様子も、そしてそんなサキを見てニヤついているアカネさんも。容易に想像できてしまう。
『まあ安心して? アヤカちゃんを襲う敵は私が一匹残らず倒しちゃうから。だから安心して私の前を歩いてていいんだよ』
『アヤカのことを思うならアカネさんが前に行ってくださいって!!』
『別にいいけど、背後から襲われてもしらないよ?』
『…………ピィ』
:アヤカちゃん、完全に弄ばれてて草
:流石はアカネだ。俺たちの喜ばせ方をよく分かってる ¥200
:あ、同接数7000超えた。てか、ドンドン増えていってるww
:これは、配信終わる頃にはアヤカちゃんも人気急上昇してるかもなぁ。おじさん嬉しいよ( ^ω^ )
アカネさんに圧をかけられ、渋々廃病院の中をアヤカは進んでいく。時折恐怖からか唸り声のようなものをあげていたが、それもリスナーには好評であった。
ちなみに、同接数は今アカネさんの枠が7000後半、アヤカの枠は6000ほど。今日の朝まで十万後半だった登録者はいつの間にか十一万を超えることとなっていた。サキのやつ、喜ぶだろうなぁ。……この配信の後に、そんな体力が残っていればだが。
『いやはや、アヤカちゃんは本当に可愛いねぇ。リスナーのみんなからは見えないだろうからお伝えすると、実は今私の右腕、アヤカちゃんの巨峰の中に埋まってるんですよねぇ』
『へ、変な言い方しないでください! ただちょっと、怖いから腕を借りてるだけです……っ!!』
:( ・∇・)タスカル
:赤羽氏、ただちに感触の程を私達に詳しく伝えなさい。いいか、これは上司命令である! ただちに、迅速に報告せよ!! ¥20000
『感触? そうだなぁ……私、今までこんなに柔らかな凶器を腕に押し付けられたことなんて無いから分からないかも。ただ、これだけは言えるよ。……アヤカちゃんのおっぱい、めちゃくちゃ気持ちいいよ。枕にしたら永眠できる』
『ちょ、人の胸で食レポみたいなことしないでくださ────ん゛っ、に゛ゃ!?!?』
『おっとまずい、手元が疎かになってたよ。ちゃんと群がってくる奴らをぶち抜いていかなきゃねっ』
バンッ、バンッとゾンビの攻撃モーションと同時に画面が赤く染まり、そして揺れ動いて。アヤカがダメージを受けているのに気づくと、アカネさんは再び自慢の手腕でゾンビたちを撃ち殺していく。相変わらず、アヤカは逃げ回っているだけである。
『って、言ってる間になんか怪しい扉があるね。血塗れで……凄く頑丈そう。この先がボス部屋的な感じかな?』
『あ、アカネさん……もうアヤカ無理れす……。目を閉じて耳塞いでてもいいですか……?』
『ん、いいよ。でもその間、私に何をされても絶対に抵抗しないでね。絶対に、だよ?』
『ごめんなさいなんでもありません頑張りまひゅッ』
『よろしい』
:介護配信草w
:アヤカちゃん、今日の夜ちゃんと一人でトイレ行ける?www
:よし、俺がアヤカちゃんのトイレに付き添おう。なぁに、ちょっと扉に耳ピトして音を聞いておくだけさ。気にしないでくれ(・∀・)
:ド変態ワンダーいて草
:でもなんやかんや、ちゃんと頑張ってプレイしてるアヤカちゃんすこ。チャンネル登録しときます ¥2000
『さぁ、頑張るよアヤカちゃん。いざ、ボス部屋へ!』
『う、ぅぅ……えいっ!!』
アカネさんが背中を押すと共に、アヤカが先頭を切って扉の鍵を銃で撃ち、破壊して。強敵の待つボス部屋へと、足を踏み入れたのだった……。