『は〜い、赤く煌めく劣等星、赤羽アカネと〜?』
『みんな〜、こんアヤカ〜! 柊アヤカだよ〜!!』
:待ってました!
:キッチャ!!
七月三日、十九時。アカネさんとアヤカが二人で息ピッタリに画面上に登場すると、待ちに待った配信のスタートにコメント欄は爆速で流れ始める。
個人勢トップである赤羽アカネと、Vの活動を始めて半年、順調にファンを増やし続けてこれが初コラボとなるアヤカのオフコラボ配信。この配信は始まる前から既に注目を集めており、「アヤ羽オフコラボ」と名付けられたハッシュタグは、現在トレンド入りもしっかりと果たしているほどだ。
『いやぁ、ついにやって来たねこの日が。どう? アヤカちゃんは緊張とかしてる?』
『勿論ですよ! ずっと憧れていたアカネさんの配信部屋に入れただけじゃなくて、そこで一緒に配信しちゃってるんですもん!!』
『ふふ、嬉しいな。アヤカちゃん裏でも一緒に話したりしてると本当に楽しそうにしてくれて。あ、リスナーのみんな? ちなみにだけどアヤカちゃん死ぬほど美人だよ? 胸のサイズも嘘偽りないです』
『な、急に何言ってるんですか!?』
:アヤ羽てぇてぇ……
:ブフォッ(吐血) ¥500
:本当に、G……なのか……
:ダメだ、これ配信終わる頃にはみんな尊死してるやつだ( ・∇・)
楽しそうに話してくれて、ねぇ。アカネさんの方が色んな意味でよっぽど楽しんでいたと思うが、まあそれは言わないお約束か。
あ、ちなみに今俺はというと、流石に配信部屋に一緒に行く訳にはいかないのでリビングでアカネさんから一台タブレットを借りながら、自分のスマホと合わせて二人の枠を同時視聴中である。
きっと俺も一リスナー視点でいられたならてぇてぇなんて甘えたんだろうが……正直な話、不安しかない。いつの日かアカネさんに俺もアヤカも貞操を奪われてしまいそうだからだ。
『さて、雑談はこれくらいにして。今日はゲーム配信をします。まだアヤカちゃんにも何をするか発表してないから、ここで言っちゃうよ〜』
『どんどんぱふぱふ〜♪』
『今日やるゲームのタイトルはズバリ……バイオヴィレッジです!』
『…………へ?』
「え?」
アヤカが力の抜けた声を漏らすのと同時に、俺の口からも同じように音が漏れる。
バイオヴィレッジ。幅広い年齢層から知られている大人気シリーズのゲームであり、趣旨としては次々と出てくるゾンビやら化け物やらを倒しながらストーリークリアを目指す……いわゆる、ホラゲである。
『ぇぇぇぅっ!? 嘘ですよねアカネさん!?!?』
『本当ですよアヤカさん。ほら、覚悟を決めて?』
『今日の配信はここで終了です!! もうアヤカお家帰りますから!! ここから出してぇぇぇ!!!!』
『無駄だよ。この配信部屋の扉には入る時にコッソリ細工をしておいた。開ける方法は私しか知らないから、配信が終わるまでは出られないよ』
『いぃやぁぁあぁぁぁぁっっっ!!!!!』
:駄々をこねるなアヤカッッ!!
:流石は赤羽アカネ……俺たちの欲しがってるものを分かっている!!
:お礼金 ¥10000
:ホラゲキチャァァァァー!!(((o(*゜▽゜*)o)))♡
:これは、約束された神回!!!
:アヤカちゃん、本気で嫌がってて草ww
『はいはい、諦めなさい。私が隣にいるから大丈夫だよ』
『大丈夫じゃないですが!?』
『所詮は画面の中の話だよ? どこかの黒髪ロング前髪女みたいに、変なビデオから飛び出してくるわけでもないし────』
『こ、こここ怖い話しないでください!! あー! あーーーっっ!! アヤカは何も聞いてません!! 何も聞こえてませんからーーっっ!!!』
『あはは、ゲーミングチェアの上で丸くなっちゃって可愛い。でも今した話を怖い話と認識してる時点で内容は耳に入ってるってことなんだよねぇ』
:この二人、姉妹みたいw
:いいぞ、もっとやれ(^ω^)
:これはこれは楽しい二時間になりそうですなぁ
:アヤ羽しか勝たん ¥2000
『さて、このままアヤカちゃんの小さなお耳に優しく怪談を吹き込んであげてもいいんだけど、それじゃあリスナーさん達が退屈しちゃうからね。早速ゲーム始めていきますよぉ〜。あ、ホラゲ苦手な人はここで見るのやめておいてね』
『アカネさんの、ばかぁ……う、うぅっ……怖いの嫌だよぉ。誰か、助けてよぉぉ……』
アヤカの震えた声を聞きながら『ふふっ』と小悪魔じみた微笑みを浮かべたアカネさんは、早速Smitchに電源を入れ、ソフトを起動させる。
『ドゥルルルーン。バァ⤴︎イオ、ヴィレェーッジ』
『ピギィッ!?』
ガタッ! と椅子を大きく揺らす音を配信上に響かせながら、アヤカは声にならない奇声をあげる。
この配信で変なトラウマとか、植え付けられなければいいが……。心配だ。