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第31話 カラオケデート2

「ん〜〜っ! やっと、終わったぁぁ〜!!」


「よーし、じゃあ早速行くかぁ!」


 心理学に続き社会学の受講を終え、今日の講義を完璧に終わらせた俺たちは、二人でそのまますぐに大学を出た。


 時刻は十二時半。そろそろ腹もすいてくる頃だが、昼飯はカラオケの中で注文することになったので、あとはさっさと移動するだけだ。


(よし、アイツらは付いてきてないな……?)


 時折周囲を確認しながらサキと隣に並んで二人で歩き続けると、やがてすぐに大学近郊の大手チェーン店であるカラオケ屋へと辿り着く。平日の昼間と言うこともあって、客はほとんどいない。


「いらっしゃいませ〜……って、サキ?」


「え? あれ……優子? こんなところでバイトしてたの?」


 長く綺麗な茶髪を靡かせ、エプロンの上からでもよく分かる立派なものを備えている一人の美人店員さん。初めて見る人だが、サキの知り合いなのだろうか。


「うん。ここだと大学から近くて楽だからねぇ〜。それより、サキの隣にいるその人は?」


「え? あ、えっと……!」


「あー、はいはい彼氏ね。ほほぅ、この人がサキが言ってた和人君かぁ」


「ど、どうも。黒田和人です……」


 俺がそう言うと、まるで品定めでもするかのように俺の全身を視線で一周してから、店員さんは改めてニッコリと笑う。


「私は前川優子。サキとは高校からの友達で、同じ大学の外国語学部だよん。よろしくね〜」


 サキの、高校からの友達か。サキって物静かであまり誰かと話しているところを見なかった印象だったけど、ちゃんと女友達はいたんだな。ちょっと安心した。


「和人君、ねぇ。サキから聞いてたよりは少し頼りなさそうに見えるけど……普通にイケメンじゃん。何より優しそう」


「ちょ、優子! 余計なこと言わなくていいから早く案内してよぉ!!」


「えぇ〜? あの″男嫌い″のサキに彼氏ができたんだよ? 気になるじゃん〜」


「そうだぞサキ。俺も前川さんからぜひお前の高校時代の話を色々組まなく聞いてみたい」


「おっ、和人君ノリいいねぇ。あ、私のことは優子でいいよぉ〜♪」


「では、改めまして優子さん。ぜひ、サキが高校でどんなだったのか詳しく────」


「もぉ! 二人ともやめてったら!!!」


 何故だろう。優子さんとは初対面のはずなのに、めちゃくちゃ気が合う気がする。特に何と言ってもサキを弄るという面で、この人にはかなり光るものを感じるのだ。


「じゃあ和人君。とりあえずLIMEでも交換するかい?」


「ええ。喜んで」


「ダメ! ダメだって!!」


 優子さんを友達として追加するためのQRカード画面を俺のスマホで読み取ろうとしたその時、横からサキがそう叫んでスマホを取り上げた。


 シャァァ、と猫のように優子さんを威嚇するその姿を見て、思わず吹き出しそうになるのを我慢してスマホを取り返そうとする。


 だが強情にもサキはスマホを手放そうとはせず、ついには自分のカバンの中に仕舞ってしまった。


「あらあら、サキったら嫉妬ぉ? もぉ、可愛いんだからぁ♡」


「嫉妬なんかしてないもん! ただその……和人が私以外の女の子と仲良くするのは、嫌なだけで!!」


 それを嫉妬と呼ばずして何と呼ぶのか俺には分からないが、とりあえずサキと優子さんのこの独特な雰囲気が見ていてとても面白いので、しばらく放置しておくとしよう。


「いやいやぁ、和人君は幸せ者だねぇ。こんなに可愛くておっぱいも大きな女の子からここまで好かれる人なんて、この世にそういないよ?」


「な、何言ってるの優子!? 私は別に、そんなんじゃ────!!」


「じゃあ聞くけど、和人君のこと……好きじゃないの?」


「ぅっ……」


 サキがそう聞かれ、チラリと横目で俺を見る。それは助けを求める目にも見えたが、とりあえずサキからの返答がめちゃくちゃ気になるので、無言で見つめ返すことにした。


 一瞬で孤立したサキは俺と優子さんからの視線を受け、すぐたじたじになって。そして漏らすように、言った。


「その質問は……ずるぃ……」


 ドクン。心臓が、飛び跳ねた。好きとも嫌いとも言わない、そんな曖昧な解答だというのに。決して、まだ俺の欲しかった言葉は得れていないのに。もう、身体が満足しているようだった。


「……ふぅん。どうやら、これは″本気″みたいだね。お互いに……」


 優子さんはそうして固まっている俺とサキを見て「ふふっ」と微笑みながらどこか満足そうにそう呟くと、俺たちに部屋番号の書かれた紙を渡し、加えてドリンクバーのコップをそっと差し出す。



「ごゆっくり、どうぞ」


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