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第27話 視聴者参加型、スマファザ配信1

『みんな〜、こんあやか〜! いやぁ、最近暑くなってきたねぇ。私、今日コンビニ行っただけでも溶けちゃいそうだったよぉ』


 あはは、と談笑しながら配信を始めたアヤカは、ふぅ、と一息を入れて、早速本題へと入る。


『さて、今日は予告していた通り、初めてのスマファザ配信だよぉ。視聴者参加型だから、アヤカがパスワード言ったら早い者順で入ってきてねっ♪』


 今日は、アヤカ初のスマファザ配信。まだプレイ歴がめちゃくちゃ浅い分いつもの「アヤ虐」が巻き起こること間違いなしだが、配信を始める前俺に「今日は楽しめればそれでいい」と言っていたので、まあ心配はいらないだろう。


『んー、と。はい、とりあえずルームは作成したから、これからパスワード発表しまーす。口で言ってもいいんだけど、せっかくだしチャットに流そうかな。多分みんなの元に届くには一分くらいラグがあると思うから、いつ流れてくるかドキドキしながら構えててね〜♪』


 そう言って、カチャカチャとタイピングの音を響かせると、アヤカはチャットにパスワードを流した。


 『誰が来るかな〜誰が来るかな〜』と呑気そうにゆらゆら揺れながら視聴者の参加を一人で待っているアヤカ。当然ルームにはまだ誰も入っては来れない筈なのだが、その数秒後。一人のプレイヤーがルームへと現れる。


『あれ? まだパスワード流れてないよね……あっ!? さては適当に打って当てたの!?』


 スマファザのルームパスワードは、数字四桁。適当に打って当てるにはあまりに選択肢が膨大だが、もしアヤカが何か自分に関連性のある数字を設定していたなら解読は不可能ではない。


(コイツ、何パスワードにしたんだ……?)


 と、その一人に続いて四人のプレイヤーが一瞬で入室すると、あっという間にルーム上限の六人が達成されてしまった。ちなみに、まだチャット欄にパスワードは出現していない。


『あ、ルーム埋まっちゃった……。流石に、私の誕生日は安直すぎたか……』


 なんだ、誕生日かよ。確かアヤカの誕生日はサキと同じで七月七日だったか? つまりパスワードは「0707」ってことになるな。まあ、そりゃすぐ当たる奴も出てくるだろう。


『ま、埋まっちゃったもんは仕方ないしね♪ とりあえず最初の対戦者さんたちは、この人達ってことで!』


 てっきり作り直すのかと思ったが、どうやら続行するらしい。


 正々堂々とタイピング勝負をしようとしていた奴もいるだろうに……不満がある奴が出てきてしまうのでは?なんて危惧していたが、チャット欄では


:アヤ虐はこの有能ニキ5人に託す


:パスワード考えて誕生日瞬時に打てる変態ニキすこ


:この決断が、凄惨なアヤ虐に繋がることを彼女はまだ知らない……


 と、不満どころか今の状況を面白がる者達ばかり。全く、相変わらずアヤカのリスナーこと柊親衛隊は民度が高くて助かるなぁ。


『もぉ、みんなまたアヤ虐アヤ虐って! そりゃあ私はゲームセンスないし、スマファザだって買ってまだ一週間経ってないけどさ? ちょっとくらい応援してくれたって……!』


 だが、どうやらこの状況にアヤカは不満があるようで。みんな自分が虐められることばかりを期待していて、応援してくれる人や自分が勝つと思ってくれている人がほとんどいないことが、あまり嬉しくないらしい。


「相変わらず、可愛い奴だなぁ」


 ならば俺が応援してやるしかないだろうと、クロサキの名前を使用してチャット欄に応援コメントを残した。


『こうなったら、この人達をアヤカがボコボコにして……って、あっ。クロサキさん、応援ありがとう〜!……えへへっ♪』


 ん!? なんだ今の最後の照れは! 可愛すぎか!?


 普段のアヤカからは発されることのない、心の底からの乙女の声。俺からすれば皮が剥がれてサキが出てきただけの出来事だが、リスナー達は大発狂中だ。


:なんだ今の声!?


:アヤカがメスになってる!?!?


:メスアヤカ!! メスアヤカだ!!!


 !と!?の入り混じったコメントが爆速で流れていく中、それに気づいていないのかアヤカはご機嫌の様子で、ルームの五人のうちの一人とのマッチングを進めた。


『じゃあ、嬉しい応援の言葉ももらったことだし! 早速始めていこうかっ!!』



 この時、柊アヤカの同接数は一瞬で500から1000まで増え、アヤ虐に続く語録に「メスアヤカ」が追加されることになってしまうのだが、まだそのことは、知る由もなかった。

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