ゴールデンウィーク休暇になった。
といっても映画を見に行くくらいしかすることがない。
人気監督のアニメ映画を見に行くことにする。
隣の埼台駅にある総合複合施設に映画館が入っていた。
「えっとカップルなのかな」
「違うと思う」
俺とララちゃんとハルカとエリカなのでカップル券は使えない。
どこからかエリカが貰ってきた割引チケットがあったのでそれを使う。
大災害から日本を守るという男女の恋愛系のようなアニメ映画だ。
主人公の高校生の男子はひょんなことから不可解な事件に遭遇する。
その謎を追いかけるうちに一人の女子高生と出会う。
女子高生のヒロインはずっとこの大災害の発生を防ぐために長年苦労をしてきたのだという。
二人は協力し合い愛の力もあってそれで大災害の呪いを封印することに成功する。
という筋書きみたいだ。
映像はとても綺麗で昔とはだいぶアニメに感じる雰囲気も違った。
道理でカップルばっかりだと思いましたよ。あはん。
途中右のララちゃんとポップコーンの手が当たってしまってちょっと照れたりした。
なんだか薄暗い映画館の中ヒロインと主人公がいい感じになってキスをするシーンとか見ているとこちらまで女の子たちといい感じになりそうになったけど、自制した。
ちょっと手をつないだくらいまでは許してもらおう。
怪物が出てくる怖いシーンがあったのだ。
ララちゃんも反対側のエリカも手が震えていたからアレで正解だと思う。
ただしそれ以上はしない。左右の子といちゃいちゃしてももう一人のハルカが黙っていないだろうし。
アイスカフェラテを帰り際にごくごく飲んで、それからハンバーガーを食べることに。
店員がにっこり笑顔のスマイルで聞いてくる。
「ご注文をお願いします」
「あっえっと、あの、私ハンバーガー初めてで」
「あれそうだっけ、ララお姉ちゃん大丈夫?」
「頑張りますぅ」
頑張るでどうにかなるならいいんだけど。
とりあえずみんなトマトレタスバーガーにしたようなのでララちゃんも「同じものを」と注文していた。かしこい。
ポテトとハンバーガーと飲み物のセットだ。
さっきも飲んだので今度はソーダ水にしておく。
ララちゃんもソーダが好きなのでこういうときはソーダ水らしい。
こうして手掴みでハンバーガーとポテトをもぐもぐする。
手掴みでポテトを食べるのに
郷に入れば郷に従えとはよくいったものだ。
「えへへ、ポテトは手で食べるんですねぇ」
「そうだよ。エルフィール王国では手で食べないの?」
「いえ、こちらにきてからフォークとナイフとお箸があったので」
「向こうはどうだったの?」
「お肉とかも手掴みでしたよ。豪快にこうパクッと」
そう言って手で掴んで食べる真似をしてくれる。
「女の子でもそうなの?」
「はいっ」
「エルフってもっとお淑やかなのかと思ってた」
「それは偏見ですよぅ」
「そっか、それはすまない」
「いえ、分からないですよね。異世界なんて、あはは」
こうして映画を見てハンバーガーを食べてそれっぽいことはした。
夜。
「お兄ちゃん」
「ケート君ぅぅん」
「どうした二人して」
寝ようと思ったら部屋に二人してやってきた。
「あのね、笑わないでね。あの映画に出てきた怪物が怖いですぅ」
「そうなの。怪物を思い出してしまいました」
二人して震えて俺にくっついてくる。
さすがにこんなになっている子を追い出したりできない。
「今晩は一緒に寝てください」
「えっ、ああ……」
一緒に寝る。今まで実は頑なに避けてきたことの一つだ。
山キャンプのときは並んで寝たけど別々の寝袋だった。
それが怪物が怖くて一緒に寝てほしいという。
さすがに震えている子を追い出すほど俺は鬼畜ではない。
「分かった。いいよ、一緒に寝よう」
「ありがとうですぅ」
「やったあ」
二人が俺のベッドにごそごそと入ってくる。
なんだか左右からいい匂いがする。二人の匂いは少し違う。
そう思うと途端に恥ずかしくなってくる。
左右から柔らかい体に挟まれてぽよんぽよんしている。
妹も胸は薄いが体が全体的に柔らかいのだ。
人肌を薄いパジャマ越しに感じて、ドキドキしてくる。
「お兄ちゃん、おやすみなさい」
「ケート君、おやすみなさい」
左右からほっぺにちゅっと口づけをされた。
俺はドキドキのピークでもうそれどころではなかった。
すぅすぅ。
左右から規則正しい寝息が聞こえる。
どちらの顔も天使のようにかわいい。
無邪気に寝ているけれど俺はこの子たちに信頼されているから一緒に寝ているんだ。
手を出してはいけないとは言われていないしきっと手を出しても怒られないだろう。
でも、と俺は最後の壁を作る。
妹と国際問題のエルフちゃんだ。どちらも倫理的にはまずい。
問題しかない。手を出すのはダメだ。
それに俺たちはまだ成人でもない。
俺は自分を律して左右に挟まれた天国で眠りについたのだった。
のだけど全然眠れねぇ。どうすんのこれ。俺は途方に暮れた。