埼台市にも市民プールがある。
だいぶ年季が入っているが、改修工事もしばしばしていて、去年には最新の流れるプールが完成して人気を博していた。
今年もきっと人が多いと思う。なんといっても入場料が安いのが売りだ。なんでも売店などの売り上げがけっこうあるため、それでも儲かってるとかなんとか。
「ということで市民プールへ行こう」
「はいっ、また泳いじゃいますぅ」
「私は流れるだけにしようかな」
「一緒にいっぱい流れましょうねぇ」
「うん」
なんだかあまり乗り気ではないハルカをよそに、ララちゃんは積極的だ。
歩くのも面倒なのでバスをちょちょっと乗って市民プール前で降りる。
市内循環バスができて時間間隔が十五分に一本と利用しやすくなって便利になった。
そのかわり市外など遠くの方へ行くバスは本数が減らされてしまってお年寄りは少し困っているとか聞いたことがある。
アキラは夏期講習があるとかでお休みになっております。
「プールですぅ。プール、プール、プールぅ」
「ララちゃん今日はご機嫌だね」
「はいですぅ。ケート君にお嫁さんにしてもらえるようにいっぱいアピールしちゃいますよぅ」
「お、おう」
そういう冗談も言うようになったか。なかなかやる。
まあなんというか元気になってきたなら結構なことだ。
「景都にアピールって無言で立っててもかなりのアピール部位があるのに」
ぼそりとハルカが言う。
まあその、なんだ、この前から微妙にエルフ感のある緑の水着それもビキニのメロンちゃんがアッピールしまくってるからね。
ハルカだってそこそこのアピール力だから他人のことは言えないだろうに。
「着替えてきますね、また後で」
「ああ、いってらっしゃい」
男女別の更衣室に入る。
近年になって建て直した更衣室も入る管理棟があるので、海の家にくらべると格段にいい環境だった。
男子更衣室でさえ広くて明るい。
シャワーも新しいのがついていて鏡やトイレ、使いやすいロッカーなどもある。
これなら女子更衣室もかなりの出来だろう。
俺はそそくさと水着になってプールサイドへと向かった。
「お待たせしましたぁ」
「くぅ」
ハルカがすでに脅威の格差社会でダメージを受けているが、しかたがない。
「二人とも今日も似合っているよ」
「やったぁ」
「ありがと」
同じ水着なのでこれといって違いはない。
単純に言うなら、おっぱいがね、すごいね。
実を言えば紐ビキニなので下もかなり面積が小さくて結構際どい。俺が女の子だったとして、こんなの着るところを想像したら恥ずかしくなってしまいそうなくらいだ。
それでも女の子はこういう服を着るんだから大変だ。
「ポテト買いましょう」
「おう」
そう言ってみんなでさっそくポテトの列に並ぶ。
ここのポテトはもう長いことやっていて老舗のレベルなんだけど、一部の人たちに美味くて量が多いとして有名だった。
「はいフライドポテト、一つ」
「ありがとうございます」
電子カードでちゃちゃっと払う。
俺が小さいころは小銭だったが今ではここもカード一枚で済む。
ズボンのポケットにカード入れておけばいいだけだから楽だ。
「あつあつ、美味しいですぅ」
「いつ来てもサックサクね」
「ああ、あのおっちゃんはベテランだからな。俺が小さいころから同じ人だ」
ポテトが美味い。
水で遊びに来たことを忘れそうになるくらいだ。
「さて手も洗ったし、泳ごうか」
「はい、流れましょう」
「うん」
一人一台。大型の浮き輪を借りてそれにお尻を乗せる。
そうしてプールで流れていく。
ララちゃんの近くにいると気が付くことがある。それは視線。
俺だけやハルカと一緒にいるときもしばしば視線を向けられてきた。
でも段違いにララちゃんといると視線が刺さる。
たまに浮き輪も揺れるとララちゃんのおっぱいも揺れてぼいんぼいんとなる。
男たちの熱い視線がそれに吸い寄せられるのがなんだかハエ捕りホイホイみたいな感じがある。あのコバエが吸い寄せられるのに似ている。
男たちは揃って鼻の下を伸ばしているのでよく分かる。
あー本当に感情って顔に出るんだな、というのも情けないものだ。
まあね。俺もさすがにメロンが流れてきたら注目すると思う。
「うぉおおおおおおお」
俺たちは順番にウォータースライダーを滑っていた。
まず先に俺。そしてララちゃん、最後にハルカだ。
ざぶぅーーん。
下まで降りると小さいプールがあるのでそこに着水する。
そしてララちゃんが降りてくる。
ざぶぅーーーん。
「きゃああ」
うぉおおとララちゃんが両手で胸を押さえている。
紐が取れてしまったらしい。
俺が慌てて駆け寄る。
「大丈夫?」
「はい。でも紐取れちゃって」
「正面立ってるから今のうちに」
「分かりましたぁ」
ララちゃんが俺に隠れながら背中の紐を縛る。
ふうぅ、なんとか元に戻せたようだ。
前の方も位置を微調整していた。あまり人には見せたくない。
ララちゃんのおっぱいが大公開とかになったら、さすがの俺も苦しい。
「あの、ありがとう、ケート君。うれしいですぅ」
「なに、なにもしてないさ、立ってただけだよ」
「それでも、心配してくれて、うれしかったですぅ」
「まあな」
そう言ってギュッて抱き着いてくる。
おうぉおおおお、おっぱい、ほぼ生のおっぱいが直に当たってる。
ワザとやってるんだろうけど、すごい衝撃だ。
めちゃくちゃ柔らかい。なんだこれ。地球上の物質じゃないみたいで。
そういえばララちゃんのおっぱいは本当に地球上の物質じゃないかもしれないんだった。がっでむ。
俺は、この日、最大の衝撃を受けた。