日曜日。俺とララちゃんは埼台駅前商店街に来ていた。
俺たちの住んでいる東区の東川駅から電車で一駅だ。
毎年七月上旬の土日を含む七日前後には七夕祭りが開催される。
「お飾りがいっぱいありますぅ」
「おう、これが名物、七夕祭りだよ」
「カラフルで素敵です」
「そうだね」
赤青黄色。飾りは色とりどりの上にキャラクターものとかもある。
小さい子からお年寄りまで近隣の住民が見学に来ている。
そこそこの人出だった。
俺たちの地域では七月開催だ。
地域によっては旧暦準拠の八月開催のところもある。
「旧暦の七日は上弦の月で、これが天の川を渡っている船に見えるんだそうだ」
「へぇ、面白い風習ですね」
「それで彦星が天の川を渡って織姫に会いに行く。逢瀬だね」
「逢瀬……ケート君のえっちですぅ」
「なんでやねん」
顔を赤くして上目遣いで見つめてくる。
ララちゃんも変な下ネタを言うようになったか。
成長したな。ふむ。
それで竹の枝の先から吊るした造花をくっつけて作った飾り物を商店街の左右にずらっと並べてある。
下半分には紙テープみたいなものがずらっと吊るされて垂れていた。
「あっ、ミーニャちゃんですぅ」
「おうエルフだよな。最近流行りのアニメに出てくる」
「そうですぅ。血の濃いエルフなんですけど小さくてかわいいんですぅ」
「まあそうだな」
金髪碧眼の幼い少女だった。ミーニャちゃんは緑の服を着ている。
エルフといえばエルフっぽい。
「エルフの地位と認知度を上げてくれるからうれしいですぅ」
「なるほどな」
彦星がアルタイル、織姫がベガだ。
そんでデネブはよく分からん。
俺も夏休みに夜空を見上げて彼女と星を指さして、あれがアルタイル、ベガとか言ってみたいものだ。
この辺は夜になっても街が明るいので天の川は見えないし、星も暗い。
竹の飾りの他にも短冊が大量にぶら下がっているものもあった。
「これはなんですか?」
「願い事を短冊に書くと、願いが叶うと言われているらしい。よくは分からん」
「へぇ」
「これは近所の幼稚園の子がみんなで見学に来て書いていくのが伝統なんだ」
「へぇ」
「俺も小さいころやった記憶があるし」
「どこかにケート君の願い事ありますか? 見てみたいですぅ」
「さすがに昔のはもう付いてないと思うよ。これは今年の分」
「へぇぇ。パパとママが仲良くできますように、だそうですぅ」
「あはは、喧嘩中なのかな」
「こっちにはカレーライスが食べたいです、と書いてありましたぁ」
「カレーならまた作ろう」
「はいっ」
少し進むとまだ短冊が少ない竹があった。
横に
「お、お兄さんと異国のお姉さん」
「なに?」
「短冊キャンペーンやっていますっ。この短冊に願いを書いて竹に飾ると、商店街で使える百円クーポンが貰えますよ」
「おおぉ、そりゃお得だ」
「やります、やりますですぅ」
ララちゃんもやる気だ。
ささっと置いてある机で短冊に記入していく。
『世界と異世界が行き来できるようになりますように――ララ』
おお、ララちゃんらしい願い事だ。そうだよな、お互い通行できれば寂しくなくなる。
『今後もララちゃんと楽しく生活できますように――景都』
俺はこのように記載した。
そういえばララちゃんは日本語を話せるだけでなく、文字も普通に勉強したようで書ける。
特に苦にもしていないところをみるとかなり勉強できる子なのではないかと。
「わわ、うれしいです。ずっと一緒にいましょうねぇ」
「おう、ララちゃん、ちょっと」
「えへへ、うれしいです、うれしいです」
ララちゃんが抱き着いてくる。
しかも正面からなのでおっぱいがもろに当たっている。
なんだかいい匂いもするし温かいし柔らかいしでもう困った子だ。
「はいはい、ララちゃん落ち着いて」
「はーい」
テヘッてしてペロッとやる。テヘペロじゃないか。かわいい。
そうそうちなみに今日は日曜日なので珍しく私服だ。
薄ピンクのシャツとミニスカートは派手だけど金髪碧眼によく映える。
どこぞの読者モデルみたいである。
ララちゃんはメイド服とかゴスロリとかも似合いそうだ。
似合うどころじゃないな、そのために生まれてきたみたいな感じになるに違いない。
ちょっと見てみたい。
あとドイツの民族衣装、田舎のビアガールが着てそうな胸を強調した服のディアンドルとかめっちゃ似合いそう。
一度見てみたい。コスプレとか趣味にしないかな。
今度それとなく聞いてみるか。
ララちゃんのメイド服。ふむぅ。
そうそう便秘だけどコンニャクとかサラダあとヨーグルトとかを食べさせて、水も意識して飲むようにしたら少し良くなったらしい。
「えへへ、お腹へっこんじゃいました」
とか言ってニコニコしていたから。
プロポーションは前から完璧だったので、とても羨ましいボディーをしている。
得意げにセーラー服をめくってお腹を見せてくれた。
かわいらしいおヘソがこんにちは。うむ、眼福眼福。
ただなんか俺はセーラー服のコスプレのいかがわしいお店で接客されているような気分になってしまったので、俺の心は汚れているのかもしれない。
とにかくララちゃんはかわいかった。