今は五月。ララちゃんはゴールデンウィーク明けてすぐくらいに家にやってきた。
サクラの時期ではないのは残念だという話はした。
さて留学してきて早々、体育がある。
うちの学校には女子更衣室の教室があり女子はそちらで着替える。
ただしクラスの時間割の関係で男女が一緒に体育を受ける制度になっている。
男女別に分かれている学校もあるらしいとは聞くし、中学はそうだった。
「じゃあね。行ってきます」
「ああララちゃん。ハルカ頼んだ」
「任せてよね。じゃあララちゃん行きましょう」
「はいっ」
ハルカに手を引かれてララちゃんを女子更衣室に連れていく。
何も知らせないで放っておくと教室で着替えてしまいそうだったので、ちょっと危ないところだった。
男子たちの前でブラしているとはいえおっぱいとパンツ丸出しとかナシですよ、ララちゃん。
「さて着替えるか」
男子は普通に教室で着替える。
女子更衣室にはシャワーまで完備されているらしいが、詳しくは分からない。
女の子だけの秘密の花園の話を男子はしにくい。
あそこは女子トイレと並んで聖域だといってもいい。
男子にはきゃっきゃうふふとかないのでただ上着を脱いで着替えるだけだ。
まあ変なことしてくるやつが皆無ではないが。
「おい景都、景都、ララちゃん。楽しみだよな体操服」
「そう言うな
「そっかな。結構順応してるように見えるけど」
「視線は間違いなく集中するだろうからなぁ」
「あぁ……守ってやりたいが何もできん。正直すまん。その他大勢の俺は無力だ」
「どこがその他大勢なんだよ。学級委員だろ」
「その手があったか。強権を発動していいのか」
「それはダメ」
「なんだよ」
体操服は体育服とかいろいろな呼び方があるらしい。
とりあえずレオタードのことではなく白くて袖と襟に青いラインが入ってる動きやすそうな服のことだ。
このバカ友達は
俺の数少ない友達っぽ何かだ。
学級委員をやるくらいにはみんなに信頼されている。
バカだとはもっぱらの噂だが勉強はできる。
なお眼鏡は掛けておらず、俺だけ知ってる秘密だがコンタクトをしている。
眼鏡は真面目に見えすぎてダメだそうだ。
教師からの信頼力は上がるのだろうが女子受けが悪かったらしく高校で変身した。
モテる……のだろうか。見たことがないが。
「なに黙っちゃって」
「いや、アキラのプロフィールを
「うっ、そのことには触れてはいけない。キスはおろかおっぱいを触ったことすらないぞ」
「あ、ごめん、なんか」
「おまっ、それ、ひど」
「わりい、わりい」
「景都だってこの前まで童貞丸出しだったのに、なんだよ。今は左右から挟まれてるだろ」
「それは言ってはいけない。俺だってどうしたらいいか分かんないんだから」
「だよな、真面目そうな顔してたハルカちゃんまですっかり色ボケに」
「色ボケとか言ってやるな。可哀想だろ」
「まあララちゃんの天然に引っ張られてるということにしてやろう」
「事実そうなんだろう、あれ」
「だろうな」
俺たちの分析が終わる。
ハルカのおっぱいもだいぶ目立つ方だが、ララちゃんは……。
さてどうなるか。俺は心配しつつも少し楽しみな自分がいることに自分を軽蔑しそうだ。
外に出る。今日は午前中から外でトラックを走ってひたすらランニングらしい。
男子の中にはガッツポーズを決めている人もいたが、お前らホント好きだよな。
そそくさと体育服になった俺たちは靴を履いて外に出る。
女子たちも着替えてポツポツと出てきて集まっていた。
まだララちゃんとハルカはいないか。
集合場所で女子勢と落ち合う。
「おい、あっち見てみ」
「お、おう。ララちゃんだ」
男子たちが靴箱をちらちら見ていた。
そこには金髪の巨乳の子が一人。
どっからどうみてもララちゃんがいた。
耳も尖っているがおっぱいの前ではどちらのほうがインパクトがあるか迷うくらい。
ララちゃんが歩いてくる。
「ほほう」
「ふむ」
おっぱいソムリエのむっつりスケベたちが一挙手一投足を凝視してる。
ごめん、ちょっと真剣すぎて気持ち悪い。
俺たちを見つけるとララちゃんが俺に手を振って走ってくる。
「おぉぉおお」
「揺れる揺れる」
「地震かこっちは揺れてないぞ」
「すごい」
おっぱいが揺れている。慣性の法則の実験みたいだった。
遅れて揺れるんだ。一つ勉強になった。
先生がきて授業が始まった。
男女に一応最初は反対側に分かれてトラックを走る。
男子たちがガッツポーズをしていたのはこれだ。
女子たちは少し恥ずかしそうだ。
男子は荒い息を吐きながら好みの女の子の胸が揺れたり全然揺れないのをちらちらチェックしていた。
まったくそのスピードで走ってよくそこまで余裕あるよ。これだから運動部は。
俺は帰宅部というか実質病院部なので体力にはそれほど自信がない。
うっわ、ララちゃんのおっぱいすげえ揺れる。あれ大丈夫なのかな。
あんまり大丈夫ではなさそうだけど。
でも体力はあるみたいで結構スピード出して走っているのには感心する。
ハルカは息が上がってその後ろを一所懸命に追いかけていた。
ララちゃんのほうはアレが重そうなのに、よく走ること。
たぶん異世界の冒険者とかいうので体力があるんだろう。
なんとか無事全員が走り終わった。最後オマケしてもらった子もいるみたいだけど。
男女一緒に整列をし礼をして授業は終わりだ。
ララちゃんがささっと俺に近づいてきて笑顔を向けてくる。かわいい。
「えへへ、疲れちゃいましたね」
「おおう、ララちゃん大丈夫だった?」
「なにがですか? これくらいなら平気ですよ」
「それならいいんだけど……ごにょごにょ」
さすがに胸が揺れて大丈夫かとか聞くほど俺もバカではない。
聞く方がどうかしてるだろう、さすがに。
視線はそれなりだったようだが、俺が知る由もない。
本人が気にしていないなら本当に大丈夫なのだろう。
俺は一安心しつつ、教室に戻った。