もうすぐクリスマスだ。
今年はちょっと奮発してクリスマスツリーを新調した。
前は小さいころのもので三十センチくらいの小さいのだったが、これは一メートルくらいある。
「えへへ、お兄ちゃんとクリスマス祝えるなんてねぇ」
「だよなぁ、今までだったら考えもしなかった」
今までなら妹を一人病院に置いてとてもクリスマスなんて気分ではなかった。
でもエルフのララちゃんの魔法のおかげで回復、無事退院したからには、こりゃイエス様にも感謝を申し上げる。
本当は羊飼いが山に行く季節なので少なくとも冬生まれではない、みたいな話も聞いたことがある。
ということで正確には冬至やイエス様の誕生を祝う日であって誕生日ではないらしい。
「ツリーの飾りつけ頑張っちゃうね」
「おう、頼んだ」
こうしてニコニコのララちゃんとハルカとエリカの三人でツリーの飾りつけをやってもらった。
俺は見てる係。
銀色に輝くよく分からん丸い飾りとかをつける。
あとは靴下、ミニサンタ人形とかもある。
お茶を淹れたりするのが俺の仕事だ。
「プレゼント貰えるといいね」
「ああ」
そういえば父親はいないのでプレゼントをくれる人がない。
「病院はどうだったの?」
「あのね、お菓子とか貰ってた」
「そういえばそうだったな」
入院中もナースさんたちのご厚意でプレゼントなどがあったそうな。
別に検査しても悪いところがないので食べ物を貰っても問題なかった。
俺がサンタをやってもいいが。
「クリスマスは楽しみにしててよね。お兄ちゃんっ」
「お、おう」
なぜか妹にぐいぐいと迫られて言われたので、なにかサプライズがあるのだろう。
碌なことがないのでちょっと心配だが中高生にできることなんてたかが知れているから大丈夫だろう。だといいな、希望的観測、うん。
メリークリスマス!
十二月二十四日。今日はクリスマスイブ。
両親は年末に帰ってくる予定だ。
「クリスマスイブだよ、お兄ちゃん、おめでとう」
「おお、ハッピークリスマス」
いえいっと掛け声をかけてハイタッチする。
だいぶ妹も元気になった。本当にちょっとでも動くと咳き込んでいたのが嘘みたいな回復力だった。
黒髪ロングが美しい。まるで清楚なお嬢様だ。病院にいた関係で美容院にもいけず伸ばしているままだったという理由が主だけど、それのおかげで茶色に染める機会もなく、長く伸ばすしか選択肢がなくて、黒髪ロングの女の子の完成だ。
せっかくだからそのまま清楚系でいてほしい。
ギャルとかになったらお兄ちゃんは泣いてしまう。
「お昼は牛丼」
「やった」
これは近所から少し歩いた先の国道にある牛丼チェーン店のものだ。
牛丼並み盛りを三つ、普通に買ってきた。お味噌汁もある。
もぐもぐ、とみんなで食べる。
「これが牛丼ですかぁ」
「うん、そういえばここ半年、出したことなかったっけ」
「そうですねぇ」
ララちゃんも長く住んでいるが、そっか今回が初めてだったか。
まだまだ食べたことがない料理はいっぱいあるな、そういえば。
そして夜になる。
夜ご飯はうちでは唐揚げだ。悩みに悩んだ末、以前両親もいたころの風習をそのまま継続することにした。
「はい唐揚げでーす」
「やった」
「うれしいですぅ」
「それから飲み物はシャンメリー」
「「わーい」」
みんなで唐揚げご飯を食べる。唐揚げに白米が美味い。
学食のものも美味しかったが、醤油が効いている我が家の唐揚げもなかなか美味しい。自画自賛。
しゅわしゅわするシャンメリーもこの時期ならではだ。
「美味しいですぅ」
「美味しいよ、お兄ちゃん、結婚しよ」
「結婚、ごほごほ」
「やっぱり料理が上手な人と結婚したいし」
「そうか、そうか」
まあ妹とは結婚できないけどね。ララちゃんも義妹としてハルカと結婚しそうな感じでまとまりつつあるものの、分からないけども。
「ケーキもちゃんとあります」
「わーいケーキ」
「ケーキですぅ」
ケーキを一人いちピースずつ食べる。
今年はノーマルのイチゴのショートケーキとなった。
ちょっと奮発してスーパーではなく駅前の有名店のだ。
「美味しいですぅ」
「おいちい」
もぐもぐと口いっぱいに頬張る妹がかわいい。
「「「ごちそうさまでした」」」
片付けをしてお風呂にも入ってダラダラしているとき。
ピンポーン。
「こんばんは」
ハルカだ。なにやら荷物を持ってうちにやってきた。
「どうぞ、どうしたこんな夜に」
「プレゼントを届けにね、にひひ」
なにやら企んでいるご様子。
二階へ行って妹の部屋に行く。
そうしてララちゃんもいつの間にか合流していて、部屋から三人が出てきた。
「じゃじゃーん」
「おまえら……」
ミニスカサンタの誕生だった。
いや厳密にはサンタはララちゃんだけだ。ハルカとエリカは頭に角が付いているので分類上はトナカイのコスプレなのだろう。
三人とも首から下はお腹とおヘソ丸出しの胸まで覆っている赤いミニシャツと、マイクロミニの赤いスカートを穿いている。足には白いニーソックス。
シャツはノースリーブで代わりにロンググローブが二の腕までを覆っている。
「どうお兄ちゃん?」
「景都、メリークリスマス」
「ケート君、クリスマスおめでとうですぅ」
三人がポーズをとって俺に見せつけてくる。
「記念写真撮りましょうね」
「「おおお」」
なぜか俺も連れてかれて一緒に写真に納まった。
なるほど、かわいい格好のサンタさんそのものがプレゼントだったわけだ。