もうすぐ九月十八日。それは俺の誕生日だ。
「ケート君が前に作ってくれたカレンダーによれば九月十八日はケート君の誕生日ですぅ」
「おう、そうだったな。十六歳」
「なにがいいですか?」
「ん? 気持ちが籠っていればなんでもいいよ」
「えへへ、じゃあ一日中私を好きなようにできる券とか」
「いやそれはエッチだからダメ」
「そんなぁ」
好きなようにできるとか、どう考えてもエロい。
「できれば記念に取っておける物がいいな」
「そうですね。それとは別にケーキも食べましょう」
「うん。最近は一人だったから祝ったことないや」
「そうなんですか? あのハルカさんとは?」
「実はな俺たち中学の時はクラスも別だったんで少し疎遠だったんだ」
「そうなんですかぁ、高校はなんで?」
「同じクラスにたまたまなったからだな、うん」
「よかったですね、同じクラスで」
「ああ」
俺とハルカ。思春期にもなれば周りの目も気になる。
特に中学生は堂々と付き合ってるやつもいたが、周りの視線を気にして隠れて付き合ったり、俺たちみたいに疎遠になる子も少なくなかった。
もう小学生のような子供同士ではなく男女なのだという自覚があったから。
「一緒にプレゼント見に行きましょうか? それともハルカさんと見に行って秘密のほうがうれしいですかぁ?」
「どっちでもいいけど、そうだな、ハルカと見てきてくれるか?」
「分かりましたぁ」
ということで基本一緒に行動する俺たちだったが、日曜日は別行動と決まった。
日曜日、俺は一人家でララちゃんが選んでくれたハーブティーを淹れてボーッとテレビを見て過ごした。
◇
えへへ、今日は日曜日。ケート君のプレゼントを見に行く日となっています。
ピンポーン。家のインターフォンが鳴ってハルカさんが入ってきます。
「こんにちは。じゃあララちゃん行こっか?」
「はいっ。今日はおデート、よろしくお願いしますぅ」
「そうね。女の子同士楽しんできましょう」
ハルカさんと手をつないで歩いていきます。
彼女もおっぱいが大きくて歩くとぽよんぽよんとしています。
私のおっぱいはもっと大きくてばるんばるんという感じです。
道を通る人たちが私たち二人のおっぱいを見てくる視線を感じます。
でもこれは取ることができないので、しょうがないと諦めています。
男の人だけでなく女の人もよく見てきます。これはもう哺乳類に生まれてきた本能なのだと思います。
エルフ族の女の子は人族よりもおっぱいの小さい子が多いです。
エルフの里にいた頃は大きなおっぱいはよく羨ましがられました。
大きなおっぱいはエルフ族にとって偉大なる女神の象徴として大切なシンボルです。だからこのおっぱいそのものは誇りに思っています。
私を世界で唯一受け入れてくれて一緒に住まわせてくれているケート君が大好きです。
でもそれと同じように一緒に活動してくれる彼女さんのハルカさんも好きです。
それから病院にいる妹のエリカちゃんも。
みんな家族同然で長く一緒に暮らせたらと思います。
女の子はいい匂いがするし柔らかいし気持ちいいので、好きなのです。
男の人はすこしがっちりしていて頼りになる感じが好きです。
ケート君はどちらかというと優男ですが、それはそれで悪くありません。
どちらも捨てがたい別々の良さがあります。
最寄り駅の東川駅前に到着しました。
「それじゃあ、どこのお店から見る?」
「道順に気になるお店があったら入りましょう」
「分かったわ」
こうしてお店をハシゴしていきます。
男の人はこういう見て回るのが苦手なのかケート君もあまりいい顔はしません。
もちろん優しく大丈夫だよとは言ってくれますが、顔はお疲れのことが多いです。
緑のゴブリン人形が売っていました。
「これなんかはどうでしょう、ハルカさん?」
「さすがにそれはないわー」
「そうですか? かわいいと思いませんかぁ?」
「それならエルフ人形のほうがいいよ」
「エルフ人形っ」
ピピッとこのとききたのです。エルフ人形。そう、これです。
私のようなエルフの人形をケート君にあげる。
素晴らしい案です。
「それいいですね。是非そうしましょう」
「おぅおお?」
「エルフ人形です。私の分身を肌身離さず持っていてもらいますぅ」
「ずいぶん積極的じゃない。本当に好きになっちゃった?」
「はいっ」
「はっきり言ってくれるわ。あはは。私も負けないですからね」
「もちろんです。三人でいい家庭を築きましょうね。あ妹さんも」
「あ、うん……そう真っすぐ言われたら、敵わないなぁ」
えへへと笑うとハルカさんも照れ笑いを返してくれました。
みんな家族で一緒に暮らす。いい未来像だと思います。
◇
九月十九日の夕方。
ケーキを買ってお家に戻ってきた。
「ハッピバースデー、ケート君」
「ハッピバースデー。景都、おめでとう」
「あ、ああ、ありがとう、二人とも」
ケーキを前にして謝辞を述べる。
今日はコーヒーとケーキを分ける。
それからなぜか目を潤ませたハルカから「ハルカちゃん人形」だという濃い茶髪ふわふわセミロングの人形を受け取った。
「あ、ありがとう……」
「次は私でーすぅ。エルフちゃん人形でーす」
「ララちゃんも人形なのか。ありがとう」
こちらはエルフちゃん人形というだけあって耳が尖っている。金髪碧眼だ。
なるほどよく特徴をとらえている。
「あのそれから副賞のキスがあるから」
「あっ、はいですぅ」
「んんっ」
「んんっ」
ハルカとララちゃんから顔をサンドイッチされてほっぺにキスをされた。
「大好きですぅ、ケート君」
「好き、だよ、景都」
なぜか愛の告白を受ける俺。
「ああ、二人とも俺の大事な家族だから」
「うん、ありがとうですぅ」
「はい。ありがとう」
えへへと二人とも顔を赤くして笑う。
「通学カバンに着けて、毎日一緒に登校しましょうねぇ」
「そうする」
こうして俺にはハルカとララちゃんの分身ともいえる人形をお供とすることが決まった。
あっああ、ハルカともほっぺだけどキスをしてしまった。
ほんとちょっとずつだけど俺たちの距離は縮まっていた。