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第9話 エルフちゃんと夜ご飯


 病院とホイコーズから帰ってきて家に着いた。


「ただいま」

「ただいま」


「ふふっ、おかえりなさい」

「おかえり」


 誰もいない家にただいまを言ったら、上りかまちでお帰りを言われた。

 なんだか非常にほっこりする。


 それがエルフちゃんなので、まるで西欧のお嫁さんと国際結婚した勝ち組サラリーマンみたいな顔になりそうだった。


「やっぱり人がいるっていいね」

「そうですね。私もここに来る前の研修中は寂しかったです」

「うちの親父は?」

「いたんですけど、朝から晩まで仕事していて、あまり顔も会わせなかったので」

「親父め、こんなかわいいエルフちゃんに寂しい思いさせるとか」

「あっでも、奥さんがいたので」

「あぁ母さんもいるよな、そういえば」


 父さんの出張には母さんもくっついていっている。

 つまり一緒に生活しているはずだ。

 他人なので実感があまりなかった。


 ご飯を炊く。


「炊飯器とかいうのですよね?」

「そそ」


 この炊飯器君。海外では珍しいらしいね。


 そうしてしばらくテレビとか見て過ごした。

 ララちゃんも大人しく椅子に座っている。

 うれしそうに体を動かしたりするとおっぱいがぽよんぽよんするので、すかさず見学する。

 テレビよりよっぽど面白い。


「さてそろそろご飯の支度をしますかね」

「はいはいっ、今日は私も手伝います」

「ありがとう」


 二人で台所に立つ。

 エプロンもつける。

 すげぇ。おっぱいがエプロンを持ち上げている。

 おっぱいの頂点から下は垂れさがっていて腰の紐でようやく体の前に戻ってくる。


「ごほんごほん、とにかく始めます」

「はーい」


 ララちゃんのかわいい返事に場が和む。


「お湯を沸かします」

「はいはーい」


 鍋で湯を沸かす。後でレトルトカレーを入れる。


 その間に付け合わせのサラダを用意をする。

 レタスを千切って、キュウリを刻んて、小さいチーズを散らす。

 あとはここにドレッシングを少々。


「サラダも美味しそうにできましたっ」

「だね」


 ララちゃんにはキュウリを刻んでもらった。

 異世界でも包丁はあるらしくベテランレベルだったので見ていても安心できた。

 これなら普段の料理でも十分戦力になりそうだ。


「そういえば異世界って水道とかあるの?」

「水道はないですねぇ。王宮とかならあるみたいですけど」

「へぇ、どうしてるの?」

「井戸があって朝に汲んできて水瓶に溜めるんです」

「なるほど」

「水って重いんですよね」

「そうだね」


 リッターで一キログラムはあるから、そりゃあ結構重い。


 まだ時間も余裕があった。


「せっかくなので目玉焼きとベーコンも焼こうか」

「はいっ」


 まずベーコンを焼いていく。

 しばらくしたらフライパンに卵を二つ落とす。


「えへへ、なんだか卵二つだと新婚さんみたいです。きゃぁ」

「だよねぇ、俺もそう思った」


 フライパンの上には目玉が並んでいる。

 今までずっと妹も入院していたので卵も一つだった。


 これでベーコンと卵が焼けた。

 塩コショウで軽く味付けをする。


「どの家庭でもコショウが普通にあるんですか?」

「え、あ、うん。コショウって高級品だったの?」

「はい。あのヒューマンの国の海の向こうから輸入されてるみたいで高かったんですよ」

「へぇ」

「でもエルフのうちはみんなそこそこ裕福なのでなんとか買えるくらいでした」

「そりゃよかったね」

「はいっ」


 エルフの家事情を少し聞いた。

 なるほど伝統ある長い家が多く、そういう家は比較的職業も受け継いでいて裕福だったと。

 次男三男は独立して家を作るから長男の家よりは裕福ではないけれど決して貧乏ではなく、みんな少し裕福くらいを維持できていたらしい。

 なるほど、結構うまく回っていたようだ。


 さてビーフカレー、チキンクリームカレー、エビホタテカレーを鍋に入れて茹でる。

 ご飯が炊きあがった。


 お皿にご飯を中央によそって左右にビーフカレーとチキンカレーを掛ける。

 共用のお皿にエビホタテカレーを入れて、こちらは後で食べよう。


「「いただきます」」


 スプーンで一口ずつ食べる。


「美味しいっ。これ、美味しいですね。ちょっぴり辛くて」

「だね。レトルトって昔は変な味とかしたらしいんだけど、今ってすごいよね」

「そうなんですねぇ。技術の進歩なんですか?」

「そうみたい」


 うん。昔のレトルトカレーって具が変な感じだったりよくしたらしいのだ。

 でも今は全然何も問題ない。普通の美味しいカレーだ。


「エルフの里にも茹でるだけで食べられるものとかあれば楽だったですね」

「ないの? レトルト」

「ないですねぇ。あぁ干しものならありますよぉ」

「ああ干しものね、うんうん」


 アジの干物とかホタテの貝柱とかだよな。

 それなら雰囲気は分かる。


「干しブドウなんかは子供のおやつの代表でした」

「干しブドウか。この世界にもあるけど、あんまり直接食べる機会はないかもね」

「そうですかぁ」

「でも探せば売ってると思うよ。今度買ってこようか?」

「はいっ、一緒に行きましょう。なんでも一緒がいいです」

「分かった、分かった」


 こうしてまた一つ約束をした。

 カレーを食べる。それからエビホタテカレーもよそって食べた。


「ホタテがいい味です。どのカレーも味が違ってみんな美味しいですぅ」

「だねぇ。どれもアタリだね。これなら毎日のように日替わりカレーを食べてもいいかもしれないね」

「そうですね。でも毎日カレーですかぁ」

「う、まあ三日に一回くらいで違う味のカレーにしようか」

「はいっ、ハンバーグとかシチューとか色々食べたいですぅ」

「そうだね。また色々作ろう」

「はいっ」


 ララちゃんのいい返事だ。

 この日も別々にお風呂に入り寝るのだった。


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