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第6話 エルフちゃんは授業を受ける


 エルフちゃんといえども授業に例外はない。

 ララちゃんは後ろから前を眺めていた。


 俺は隣の席なので、ちらちら見てみるものの落ち着いているようだ。

 今は数学の時間。四十代の男性の先生もちらちらとララちゃんを見ていた。


「では次の問題。ララちゃんはどうだ、分かるか?」

「はいっ」


 ララちゃんが勢いよく手を挙げる。


「じゃあララちゃん」


 椅子を動かしてララちゃんが立ち上がる。


「うぉおお」

「うわっ……」

「おお、眼福」


 ちらちら声が聞こえる。

 それもそのはずララちゃんが立ち上がったところを見たクラスメートはみんなそれを目撃したのだ。

 ララちゃんのおっぱいがぼいんと揺れるところを。


「えへへ、えっとサインシータは……」

「はい、正解。みんなもボケッとしていないように」

「あはは」


 クラスに笑いが起きる。

 その間にささっとララちゃんが座った。

 今度は見ている人が少なかったのか、そこまで注目されていなかった。

 先生の突っ込みのおかげだろう。ナイス先生。


 この先生もララちゃんのおっぱい目当てかと疑ってしまったがどうやら違うらしい。

 ごめんな先生。


 座り直したララちゃんはエルフ耳が赤くなっている。

 ほっぺだけじゃなくてエルフ耳も赤くなるんだよな。

 まあ恥ずかしかったのだろう。

 そしてそれはすごい目立つ。なにぶん左右に飛び出ているので。

 幸いにして一番後ろの席だからそれほど言われないけど、思ってる生徒は多いだろう。


 みんなそういうのをちゃかしたりはしない。高校生にもなると少しは空気を読むのも分かってくるらしい。


 授業も順調に進んで昼休みになった。


「それじゃあ、学食へ行こうか?」

「はいっ」


 俺たちは並んで学食に向かった。

 また腕を組もうとしてきたけど、さすがに学校内では遠慮をした。


「むぅ」

「いや、目立つんだって」

「まぁそうですけど。だって私、全身もとから目立つんだもん」

「そう言われると困るな」

「でしょ」


 ララちゃんが勝ち誇ったような顔をして手を腰に当てる。

 そういう仕草がいちいちかわいい。


「でもダメ」

「ぶぅぶぅ」


 ララちゃんが不貞腐れた顔を作っているけれど、これもこれでかわいい。

 もうぎゅってしたくなってくる。もちろん俺は男だからしないけど。


 廊下を歩いていくと視線がすごい。

 なんとか食堂前までやってきた。


「おい、あれ」

「ああ、かっわいい」

「美少女じゃん美少女」

「エルフに見えるんだが、俺がおかしいのか」

「いや東欧出身とかなんじゃないの?」

「なるほど」

「だってエルフなんてこの世界にいないでしょうに」

「分かんないだろっ」

「いねえってラノベアニメの見過ぎだ」

「そっかなぁ」


 いや、分かるよ。俺もそう思ったもん。

 でもこれは現実であってゲームではない。

 もちろんラノベでもアニメでもない。


 ここはまぎれもなく現実で俺たちの生活空間だ。

 そこをエルフちゃんが普通に歩いていく。

 めっちゃ目立つ。場違い感がすさまじい。


 俺が券売機でカレーを買う。


「私もカレーにします。一度食べてみたかったんですぅ」

「おう」


 スカートの隠しポケットから小さい小銭入れを出してさらに小銭を出す。

 ガチャンと券売機に入れて普通に購入した。


 券売機の前にエルフちゃん。なんだこの絵面。

 いやかわいいから絵にはなるんだけど、すごい違和感がある。

 エルフちゃんも随分庶民的だこと。


 順番待ちの列に並ぶ。

 前後の子が二度見してくる。そりゃまあそうだろう。

 俺だって最初のとき玄関の外を三度見したもの。


「エルフちゃん?」

「いや北欧系だって」


 また別の人が同じことを言っている。


「ここがガクショクとかいうアニメで見た風景」

「おう、そうだよ」


 順番待ちを消化してカレーを受け取る。

 給食のおばちゃんも金髪碧眼なのを見てびっくりしていた。


「外国人さんかい、えらい別嬪べっぴんだね」

「えへへ」

「たんとお食べ」

「ありがとうございますぅ」


 トレーを持って空いてる席に二人で座る。


「いただきます」

「いただきますですぅ」


 スプーンを神妙な顔つきで持ってカレーをすくって一口食べた。


「うぉおぉおん。美味しいですぅ。辛さとスパイスの不思議な匂いがしてとってもデリシャスですぅ」

「そりゃよかった」


 周りの人もなんだかホッとした顔をしていた。

 みんな注目していたらしい。


 そこからは一口、また一口と次々と食べていく。

 俺も負けないようにカレーを口へ運ぶ。


「日本のご飯はなんでもおいしいですねぇ」

「ああ、美味しいものが多いらしいね」

「そうなんですねぇ、羨ましいですねぇ」

「あはは」


 たまにお水を飲みつつ、カレーを食べ進める。


「家でもカレーって食べられるんですか?」

「ああ、レトルトもあるしルーも売ってるから作ろうと思えば作れるよ。妹が入院しちゃってからは一人だったんで作ったことないけど」

「そうですかぁ、じゃあ今度お願いしてもいいですかぁ?」

「もちろん」

「やったぁ。おうちのカレーはどんな味か今から楽しみですぅ」

「そりゃ頑張って作らないとな」


 楽しく初めての学食でお昼を食べた。

 ちょっと人前に出てハラハラしたけど、なんとか大丈夫そうだ。


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