「おはようございますぅ~。朝ですよ?」
「ううぅぅ……」
俺がベッドで寝ていたら朝になったらしい。
ベッドのすぐ脇に立ったララちゃんのおっぱいが見える。
下から見上げるとほとんどおっぱいしか見えない。
おっぱい。
「はっ……俺、確か留学生が、それでエルフで、あっ」
「起きましたか? エルフのララちゃんですぅ」
「ごめんごめん。さすがに思い出した。ちょっと朝からおっぱいの攻撃で一瞬、頭が真っ白になったもんで」
「それは、ごめんなさい、私のおっぱいが悪いですね」
そういうと、なぜか胸を揉みだす。
ぐにょぐにょと動くおっぱい。
なんだこれ、すげぇ。
「んっ、んんっ、はぁ」
「もういいから……すまん」
「いえ、では、おっぱいは許してあげました。よかったです。取らなきゃならなくなったら大変」
「えっ?」
「もう、冗談ですよーだ」
「そうか、ふむ」
そうして俺が料理をする。
ベーコンと卵焼きだ。それから今日は買い置きのクロワッサン。
俺は目玉焼きやゆで卵よりは卵焼き派なのだ。どの派閥でもいいと思う。
料理は簡単なものくらいなら平気だ。
ところでおっぱいって取れるのだろうか。
手術で切除自体はできるが、そういう意味ではない異世界特有の謎かもしれないし。
おっぱいの謎は深まるばかりだ。
ベーコンをひっくり返す。いい感じに焼けた。
「ところで、俺は高校行くんだけど」
「はいっ、私も今日から同じ高校へお世話になるので大丈夫です」
「おおぉ、そうなのか。知らなかった」
「すみません。昨日、ちゃんと話しておけばよかったです。こっちは本当に留学生みたいですね」
「そうだな」
「あの、一応、エルフなのは秘密なので、アルクメニスタンからの留学生ということで」
「アルクメニスタン? そんな国あったっけ」
「ないですよ?」
「バレちゃわないか?」
「地図に載ってない、非国連加盟国なんです」
「そうだったか、なるほど」
「納得しないでください。異世界から来たなんて言えないですし」
「そうだった。嘘ばっかり言うから、どれが本当かだんだん分からなくなってくる」
「えへへ。そうやって煙に巻く作戦なんですよ」
実在の国を挙げたら、それはそれで色々聞かれそうだしね。
今はネットでも調べられるから、中途半端な噓ばっかり言ってるとバレるかもしれない。
それならいっそ架空国家か。これなら調べられても痛くない。なるほど。
「「いただきます」」
二人で挨拶してから朝食をいただく。
なんやかんや、妹がいなくて一人で寂しかったが、こうしてエルフちゃんと一緒だと俺もうれしい。
妹が入院してしまってから随分と経つけど、俺も寂しかったんだなって改めて思った。
ララちゃん、家族として大切にしてあげないとな。
バタバタと二人で協力して食器を片付けて、部屋に戻って着替える。
そうして再び部屋から出ると、そこには、ふむふむ、なるほどなるほど。
「どうですか? 変、じゃ、ないですかぁ?」
「ううん、めっちゃ似合っててびっくりしてる」
セーラー服エルフとかいうコスプレみたいな生き物がいた。
絵では見たことがあるけれど、マニアックだなぁとは思ったんだ。
それがリアルの目の前にいる。
めっちゃ似合ってる。かわいい。
「今すぐ写真撮って、全世界に紹介したいぐらい、かわいいよ」
「そうですかぁ、うれしいですぅ」
テレテレで頬を赤くするララちゃんも余計かわいかった。
「それでは、行ってきますですっ」
「おお、行ってきます」
誰もいないけど、俺たちはお互いに行ってきますを言った。
えへへと笑顔を向け合って、出発する。
「それでは家族なんですから手をつながなきゃですよね」
「え、ああ」
まあ手ぐらいならまあいっかな、と思ったんだこの時は。
指をつんつんとしたと思ったら、ガシッと腕を取られて、腕を絡めてくる。
ララちゃんは背が低いので肩と肩が当たることはなく、俺の手前に彼女が半分収まるような感じになっているのはいいんだ。
問題は例のアレだった。
胸が。おっぱいが組んでいる腕にダイレクトアタックを決めている。これだけで何ポイントも得点が入りそうな見事な連続技だった。
俺は腕を決められ、めっちゃくちゃ柔らかい感触がぐにゅぐにゅと当たる。
しかも歩いているので、動いてその変則的な柔らかさが尋常じゃないほど伝わってくるのだった。
「あの胸が」
「胸くらい当たっちゃいますよね。すみません」
「いや、いいけど、これ……」
まさかめっちゃ柔らかいからどけてとか幸せそうな笑顔を浮かべている彼女に言えるわけもない。
このままにするしかないか。
目に毒くらいならまだ平気だけど、直接の感触は心臓に悪い。
俺はドキドキしていた。
というか胸が当たっているので彼女の心臓の音さえ聞こえそうだ。
うっ、学校までこのままか。
心臓に悪いどころではなく、精神にきそうだ。天国にいるのに忍耐を試されている。
お風呂は気持ちいいが、熱いお風呂にはご注意みたいな感じというか。
もう何を言ってるか分からないが、とにかくそういうイメージだった。
しかも周りの視線がすごい。
そりゃあ俺んちの学校のセーラー服を着ていて、金髪碧眼。しかもよく見ると耳が尖っているとか、尋常じゃないですし。
それが絶世の美少女ときて、平々凡々な俺と腕なんて組んでニコニコで登校していたら目立つに決まっていた。
あぁ、もう俺ダメかもしれない。
初日に頑張ると決めたはずなのに。天国に召される日も近いのだろうか。
仏にでもなったような神妙な顔をして登校するのだった。