森をリソース・サーチで探した。
結果はウサギが3か所、遠くにウルフの反応ありだ。
それからスライムが沢山。
ちょっとよく分からない。
しかたがない。魔法「エリア・サーチ」。
私の魔力が100だと仮定して、リソース・サーチは魔力消費2。エリア・サーチは魔力消費8くらいだろうか。
予測値だからあってないかもしれないけれど、そんな感じ。
少し魔力を使うけれど、広めにモンスターも検知しよう。
あとエリア・サーチのほうが魔力を使うぶん、いわゆる逆探知リバース・サーチとか魔力感知を使える人やモンスターは探知されたことに気づくことがあるらしい。
リソース・サーチのほうが魔力が少ないので、探知範囲も狭いが逆探知されにくいのだ。
隠密系とかいると、こちらは探知に失敗して、相手には逆探知でばれて奇襲される恐れもある。
だから私が密かにこういう魔法を使うと、エミリーさんも気づくかもと思ってたけど、魔力探知系は持っていないようだ。
「あのエミリーさん、魔法はどれくらい?」
「ああね。私は短剣が専門で、あと火魔法がちょっと使えるくらいだね。風とか探知とかはからっきしでねぇ」
「なるほど」
「そういうトエちゃん、何か使ってるのかな。魔力は分かんないけど、動きに迷いがないわね」
「うっ、ええ、ちょっとサーチを」
「そうなのね。それなら言ってくれればいいのに」
「信用できるか、測ってたので、ごめんなさい」
「いや、いいよ。小さいのにしっかりしてるのね。あはは」
「えへへ」
「それで反応は?」
「近くにウサギ3つ、北東の遠くにウルフの群れがいます。あとは遠くにウサギが10匹以上ばらばらに。スライムはたくさん」
「了解。じゃあ近くのウサギ3匹くらいは狩って帰ろうか」
「はい」
適当にスライムを倒しつつ、ウサギのところへ。
ガサガサ。
「ウサギ発見、うにゃああぁああ」
右側にいたミリアちゃんがウサギ、正確にはホーンラビットを発見、即座に攻撃をする。
今回から鉄の剣なので、そこそこの攻撃力だ。
ただこの剣、切れ味はあんまりよくなくて、分類としては打撃武器に近い。
ということで、ぶん殴られたウサギはそのままお陀仏さんになった。
血はほとんど出ていなくて、綺麗なままだ。
「もう動かないね」
「……ウサギ死亡」
「私はあと2匹、倒してくるね。サエナちゃんはついてきて」
私は了解を取って他のウサギ2匹を探し出して剣で一突きにする。
最後の1匹は場所が分かっている私が探して、サエナちゃんに攻撃させてゲットしてきた。
そうして集合してから切れ味のいいナイフを取り出して、血抜きをしてしまう。
「いつも血抜きはしているの?」
「はい。ダメでしたか?」
「いいや。サーチ使えるみたいだからいいけれど、他の子はウルフとか他のモンスターが血の臭いで集まってくることがあるから、気を付けるのよ。周囲への警戒は続けてね」
「「はーい」」
「よろしい。もし周囲にまだ敵がいるなら、血抜きは最優先ではないわ。血抜きしたほうが美味しいのはその通りなんだけどね。その辺の判断は難しいわね」
まあそうだろうな。
一応、リソース・サーチで周辺を探る。
「ウルフは近づいてきてないみたいです。大丈夫」
「はい。ありがとうね」
「いえ」
血は剣で軽く穴を掘り、そこへ捨てている。
血抜き作業が終わった。
穴を埋め戻して目立たないようにする。
「はい、後処理も終わりです」
「けっこう手慣れてるわね。感心ね」
「えへへ」
「小さな森で、こういうことはしてましたから」
サエナちゃんが補足してくれる。
「それなら、あまり言うこともないわね。ただ小さな森ならウルフとか出ないと思うけど、外の森はフォレストウルフが2チームほど縄張りにしているわ。あと流れてくる敵がたまにいるの。ゴブリンとかコボルトがそうね」
「「はーい」」
お姉さんの知識は正確だ。
自分の知識とも相違がないことを確認して、納得する。
私たちは血抜き地点から素早く移動した。
「さてそろそろお昼にしましょうか」
「「はーい」」
「わわ、お昼にゃああ」
ちょうどいい感じに大きな広葉樹の下に来た。
ここはこの木の周りが少しだけ拓けていて、他の場所よりもいくぶんか明るかった。
「ここ、いい場所だわ。ここでいいかしら?」
「「いーです」」
適当にみんなで座る。
お昼ご飯はというと、ギルドで貰った携帯食料だ。
「「いただきます」」
もぐもぐ。もそもそ。もぐもぐ。
「あんまり美味しくないね」
「もそもそしてる」
「にゃぁ、口の中があばばばにゃあ」
携帯食料は小麦粉にハーブを入れて固めて焼いたみたいなもので、黒パンと同じくらい固い。
それからもそもそしていて、口の中の水分をみんな吸い込んでいく。
「ごめんごめん、今、飲み物出すね」
私は井戸水の水筒とコップを出していって、みんなに配る。
「はぁ、助かるわ。お水お水、んくんく」
「……お水」
「にゃはぁ、お水だにゃぁ」
「ああの、エミリーさんもいります?」
「ああ、ありがとう。でも大丈夫、自分のはあるから」
さすが先輩冒険者。ちゃんと持っているようだ。
私は夏ミカンを1つ取り出して、ナイフで剥く。
5等分してそれをみんなに配っていく。
「甘ずっぱいね」
「……ミカンおいち」
「ミカンにゃミカン」
「エミリーさんもどうぞ」
「ああ、ありがとう。……うん、美味しいな」
ふむ、まあまあ美味しいようだ。
私も食べてみる。
少し酸っぱいけれど、甘い。食べたことがある夏ミカンの味だ。
なかなか美味しい。
「もう1個、いる?」
「「はーい」」
「ください、にゃあ」
「うふふ、もらえるかい?」
ということだったので、もう1個剥いてみんなに分けた。
本来ならまだ活動時間なのだが、袋がいっぱいだ。
夏ミカン、シメジ、ホーンラビットでぎゅうぎゅうだ。
「さてもう入らないわね。一度戻りましょう」
「「はーい」」
こうして来た道を戻り、西門から入って中央の冒険者ギルドに向かうのだった。