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18 外の森と携帯食料


 森をリソース・サーチで探した。

 結果はウサギが3か所、遠くにウルフの反応ありだ。

 それからスライムが沢山。

 ちょっとよく分からない。


 しかたがない。魔法「エリア・サーチ」。


 私の魔力が100だと仮定して、リソース・サーチは魔力消費2。エリア・サーチは魔力消費8くらいだろうか。

 予測値だからあってないかもしれないけれど、そんな感じ。

 少し魔力を使うけれど、広めにモンスターも検知しよう。


 あとエリア・サーチのほうが魔力を使うぶん、いわゆる逆探知リバース・サーチとか魔力感知を使える人やモンスターは探知されたことに気づくことがあるらしい。

 リソース・サーチのほうが魔力が少ないので、探知範囲も狭いが逆探知されにくいのだ。

 隠密系とかいると、こちらは探知に失敗して、相手には逆探知でばれて奇襲される恐れもある。


 だから私が密かにこういう魔法を使うと、エミリーさんも気づくかもと思ってたけど、魔力探知系は持っていないようだ。


「あのエミリーさん、魔法はどれくらい?」

「ああね。私は短剣が専門で、あと火魔法がちょっと使えるくらいだね。風とか探知とかはからっきしでねぇ」

「なるほど」

「そういうトエちゃん、何か使ってるのかな。魔力は分かんないけど、動きに迷いがないわね」

「うっ、ええ、ちょっとサーチを」

「そうなのね。それなら言ってくれればいいのに」

「信用できるか、測ってたので、ごめんなさい」

「いや、いいよ。小さいのにしっかりしてるのね。あはは」

「えへへ」

「それで反応は?」

「近くにウサギ3つ、北東の遠くにウルフの群れがいます。あとは遠くにウサギが10匹以上ばらばらに。スライムはたくさん」

「了解。じゃあ近くのウサギ3匹くらいは狩って帰ろうか」

「はい」


 適当にスライムを倒しつつ、ウサギのところへ。


 ガサガサ。


「ウサギ発見、うにゃああぁああ」


 右側にいたミリアちゃんがウサギ、正確にはホーンラビットを発見、即座に攻撃をする。

 今回から鉄の剣なので、そこそこの攻撃力だ。

 ただこの剣、切れ味はあんまりよくなくて、分類としては打撃武器に近い。

 ということで、ぶん殴られたウサギはそのままお陀仏さんになった。

 血はほとんど出ていなくて、綺麗なままだ。


「もう動かないね」

「……ウサギ死亡」


「私はあと2匹、倒してくるね。サエナちゃんはついてきて」


 私は了解を取って他のウサギ2匹を探し出して剣で一突きにする。

 最後の1匹は場所が分かっている私が探して、サエナちゃんに攻撃させてゲットしてきた。


 そうして集合してから切れ味のいいナイフを取り出して、血抜きをしてしまう。


「いつも血抜きはしているの?」

「はい。ダメでしたか?」

「いいや。サーチ使えるみたいだからいいけれど、他の子はウルフとか他のモンスターが血の臭いで集まってくることがあるから、気を付けるのよ。周囲への警戒は続けてね」

「「はーい」」

「よろしい。もし周囲にまだ敵がいるなら、血抜きは最優先ではないわ。血抜きしたほうが美味しいのはその通りなんだけどね。その辺の判断は難しいわね」


 まあそうだろうな。

 一応、リソース・サーチで周辺を探る。


「ウルフは近づいてきてないみたいです。大丈夫」

「はい。ありがとうね」

「いえ」


 血は剣で軽く穴を掘り、そこへ捨てている。

 血抜き作業が終わった。


 穴を埋め戻して目立たないようにする。


「はい、後処理も終わりです」

「けっこう手慣れてるわね。感心ね」

「えへへ」

「小さな森で、こういうことはしてましたから」


 サエナちゃんが補足してくれる。


「それなら、あまり言うこともないわね。ただ小さな森ならウルフとか出ないと思うけど、外の森はフォレストウルフが2チームほど縄張りにしているわ。あと流れてくる敵がたまにいるの。ゴブリンとかコボルトがそうね」

「「はーい」」


 お姉さんの知識は正確だ。

 自分の知識とも相違がないことを確認して、納得する。


 私たちは血抜き地点から素早く移動した。


「さてそろそろお昼にしましょうか」

「「はーい」」

「わわ、お昼にゃああ」


 ちょうどいい感じに大きな広葉樹の下に来た。

 ここはこの木の周りが少しだけ拓けていて、他の場所よりもいくぶんか明るかった。


「ここ、いい場所だわ。ここでいいかしら?」

「「いーです」」


 適当にみんなで座る。

 お昼ご飯はというと、ギルドで貰った携帯食料だ。


「「いただきます」」


 もぐもぐ。もそもそ。もぐもぐ。


「あんまり美味しくないね」

「もそもそしてる」

「にゃぁ、口の中があばばばにゃあ」


 携帯食料は小麦粉にハーブを入れて固めて焼いたみたいなもので、黒パンと同じくらい固い。

 それからもそもそしていて、口の中の水分をみんな吸い込んでいく。


「ごめんごめん、今、飲み物出すね」


 私は井戸水の水筒とコップを出していって、みんなに配る。


「はぁ、助かるわ。お水お水、んくんく」

「……お水」

「にゃはぁ、お水だにゃぁ」


「ああの、エミリーさんもいります?」

「ああ、ありがとう。でも大丈夫、自分のはあるから」


 さすが先輩冒険者。ちゃんと持っているようだ。


 私は夏ミカンを1つ取り出して、ナイフで剥く。

 5等分してそれをみんなに配っていく。


「甘ずっぱいね」

「……ミカンおいち」

「ミカンにゃミカン」


「エミリーさんもどうぞ」

「ああ、ありがとう。……うん、美味しいな」


 ふむ、まあまあ美味しいようだ。

 私も食べてみる。

 少し酸っぱいけれど、甘い。食べたことがある夏ミカンの味だ。

 なかなか美味しい。


「もう1個、いる?」

「「はーい」」

「ください、にゃあ」

「うふふ、もらえるかい?」


 ということだったので、もう1個剥いてみんなに分けた。


 本来ならまだ活動時間なのだが、袋がいっぱいだ。

 夏ミカン、シメジ、ホーンラビットでぎゅうぎゅうだ。


「さてもう入らないわね。一度戻りましょう」

「「はーい」」


 こうして来た道を戻り、西門から入って中央の冒険者ギルドに向かうのだった。


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