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異世界転生して貴族だったけど孤児院に捨てられた私は這い上がる
滝川海老郎
異世界ファンタジースローライフ
2024年08月03日
公開日
57,981文字
連載中
【コミカライズ】領主一家の貴族だった私は異端児として孤児院に入れられてしまう。しかしそこは女の子の楽園だった。周りには広い庭から森まで続いていた。そうだここで採取とかしてスローライフして過ごそう。ついでに生活も改善していこう。女の子たちは立ち上がる。
まずは裏庭の薬草、続いて裏の森からキノコ、苺、一角ウサギ、スライムの核などを採取してくる。そうしているうちに院長先生から冒険者をやってみないかと誘われる。冒険者ギルドへ行き森探索などをすすめ、夏ミカンなど新たな食べモノをゲットし、魔法を覚え、ついにウルフを狩るまでになるのだった。女の子だってたくましい。冒険はまだまだ続く。

1 孤児院へ追放


 トエリーナ・フォン・エストリア。

 それが私の名前だったものだ。


 私が物心ついたときには前世の記憶があった。

 地球世界、女子高生。

 それが転生してエストリア伯爵家の4人目の子で次女になった。

 私はもうすぐ8歳になる。


 今まで基本的な読み書きもメイドさんに懇願して教えてもらった。

 本も読んだけれどそればかりだとよくないので、意識して運動もしていた。

 適当な重さのものを手に持って、ダンベルみたいにしたり。

 庭の散歩とか、ダッシュしてみたりして、体も鍛えた。

 ちなみに一応、鑑定、基本四属性の魔法、アイテムボックスは使えないこともない。もちろん秘密だ。

 あぁ、魔法の練習はばれてしまった。


 転生知識と知能で調子をこいてぺらぺら喋ったり上記のような活動をしていたので「神童」と持てはやされるはずが、そんなこともなく裏ではむしろ「悪魔憑き」として気味悪がられていた。



 さらに際立ったのが私の容姿だ。

 父上は血筋の青髪に青い目、母上は水色の髪に青い目。自分以外の子供たちも、みんな青系統の色をしていた。


 しかし私はピンク髪に水色の目だったのだ。

 この髪の毛はどこから来たのか。そもそも屋敷の中の人を一通り見ても、他にピンクの子なんて皆無だった。それで余計、気味悪がられた。


 一家で食事が終わり、話があるという。


「トエリーナ、8歳の誕生日になる前に、孤児院へ入りなさい。そこで生活するのだ」

「え、父上」

「親の指示には従いなさい。いいかな?」

「はい、父上」

「よろしい。よく励むように」


 父上、エドワード・フォン・エストリアは不機嫌そうに言ったのだった。


 この世界には異世界転生してくるという人は他にいないらしい。

 のけ者にされて領主館から追放された。


 囚人のごとく馬車に乗せられた私は、付き添いのメイドと共に町の中を移動する。


 孤児院は領都エストリアの領主館とは別の小高い丘の上にあった。

 隣には女子修道院があり、その付属だ。


 孤児院では院長先生が待っていた。

 メイドは馬車とともに戻って行って、私ひとりだけが残された。

 このメイドの子とは多少なりとも仲良くしていたので、ちょっぴり寂しい。


「ようこそ、クエシニコ修道院および孤児院へ。トエリーナ様ですね。わたくしは修道院長兼孤児院長を務めております、サファエと申します」

「あ、私はトエリーナ・フォン・エストリアです。よろしくお願いします」

「いいですか。ここでは今からあなた様はトエです。他の人には領主様のご令嬢とは秘密にしなければなりません」

「分かりました。私はただのトエですね。修道院長様」

「賢い子のようですね。安心しました。では、案内します」


 孤児院は女子修道院の付属だから、こちらには女の子しかいなかった。

 4歳から15歳の子が全部で15人前後だろうか。


 そうして、私はただのトエと呼ばれることになるのだった。


 孤児院の女の子たちは、みんな貧しい服装をしていて痩せていた。

 太っている子はひとりもいない。

 年長の子の中には、おっぱいが大きくなりつつある子もいたのだけれど、それでも慎ましやかだった。

 院長先生をはじめとする女子修道院で暮らす女性信者の人たちも、みんな同じ感じで細かった。


 領主の館で不自由なく贅沢な暮らしをしていた私は、今からの生活に不安を感じていた。


 前世の記憶も頼りに、なんとか生活を改善したり、お金稼ぎをしなければならないだろう。

 私は内心、ぐっと決意をした。


 顔合わせは終わり、はじめての夕食になった。

 並べられた物はパンにスープにサラダだ。


「神スエルメティス様のご加護により、本日も食事をいただけることに感謝して」

「「――セドーレ」」


 祈りの挨拶だった。

 並べられた机と椅子の末席に座り、みんなの視線をじろじろ感じながら、私も真似をした。

 領主の館でも、季節のお祝いごととかで、同じ挨拶をしたことがある。

 ここでは毎日お祈りをするのかもしれない。


 大きな肉とかは出ないけれど、スープは具だくさんでこれが主菜なのだろう。

 干肉の欠片も少し入っている。薄味のスープの中では、干肉のその塩加減がちょっとだけ濃いめで美味しい。

 質素ではあるけれど、極貧とまではいかないようだ。

 ただパンのレベルは領主館と比べたら黒くて固くてぼそぼそしていた。このパンはスープに浸して食べるようだった。


「んふぅ、トエちゃんだっけ?」

「ん? そうだよ」

「私はサエナ。よろしくね」

「う、うんよろしく、おねがいします。えへへ」


 隣の可愛い女の子が声を掛けてきた。

 私と同じ8歳ぐらいだろうか。髪の毛は金髪。目は緑。まだ小さいけれどかなりの美少女だった。将来性は高い。

 ぐへへ。私はこう見えても、女の子には目がない。

 屋敷でもメイドに色目を使っていた。そんなことが気味悪がられる一因ではあったのだけど、前世の影響か、なんとなく女の子が好きだった。

 これは性癖なので、どうしようもない。


 サエナちゃんの頭を撫でて、うっとりする。

 彼女も気持ちよさそうに、目を細めた。


 まず一人目だ。だんだん仲良くなっていこう。

 ただ、羽目を外しすぎないように。慎重に。

 外堀から少しずつ埋めていくのだ。

 前世と領主については、秘密ということで。


 最初は領主館からすわ追放だと思っていたけれど、よく考えたら女の子ばかりの楽園では。

 ここは百合ハーレムを築く素晴らしい場所、天国に一番近い場所では。

 私は前向きに考えることにする。

 ただし、貧乏なのは間違いなさそうなので、なんとかしよう。


 二段ベッドの寝室に案内された。

 ひとりひとつ、ちゃんとベッドはあるらしい。

 ただし広めの部屋にベッドが4か所8個詰め込まれている。

 私は雑魚寝とか、同じベッドに入っていちゃいちゃしても全然かまわないけどね、ぐへへ。

 さて、私の妄想が受け入れられるわけもなく、普通にベッドで夜は寝ましたとさ。

 私の上はサエナちゃんだった。席順とベッドと部屋の順番が同じようになっているそうだ。


「おやすみ、サエナちゃん」

「おやすみ、トエちゃん」


 今は春。とても過ごしやすい夜でありました。

 朝になって、一日が動き出す。


「おはよう、サエナちゃん」

「おはよう、トエちゃん」


 うむ、朝一番から美少女を眺められて、私はうれしい。

 朝はサエナちゃんについて歩いて水汲みなど各々が仕事をしたら、朝食になった。


 昨晩と同じようなパンにスープにサラダだ。


 私の孤児院での生活が始まるのだった。


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