目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
63. 坑道攻略戦(2)


 オークが2匹、棍棒のようなものを装備して襲ってくる。

 こちらは盾も武器装備もいて、準備万端だけど、敵は大きいので迫力があった。


「エンジェルブレス」


 ヒカリちゃんのステータスアップのバフ魔法をかけなおす。

 このパーティーには敵に使うデバフ系の使い手はいなかった。


 アルクの盾がオークの一撃を受け止めた。

 その隙に、数名が剣や槍で攻撃を加える。


 2匹を相手に、数人ずつ分かれて戦闘になった。

 魔法も入り乱れて、ひたすら攻撃する。

 かなり固い。


 それでもこちらが断然有利だった。

 盾職はきっちり仕事をこなして、防御を固めている。

 ダメージをくらっても、ヒカリちゃんのヒールが飛んでくるので安心だ。


『グオォオオ』


 オークは叫びながら消滅した。


「オークの体はでかいから緊張したが、大丈夫だな」

「はい」


 アルクの感想は問題ないということだ。

 体が大きく、武器もちのオークはいままでとは勝手が違うところもあるけど、十分戦える。


 この後も、オークが3匹になったりしたものの問題なく戦闘を続けられた。



「鉄の扉が……」


 私は思わずつぶやいた。


「んー。ボスだよね、定番だよ」

「ついにボスですか。気合入れませんと」


 クルミとサクラちゃんは余裕があるみたいで、会話をしていた。


「じゃあ、扉の前で最後の休憩だ」


 アルクの提案でそうなった。

 戦闘地域だけれど、行き止まりで敵も出てこない。

 お茶をのんびり飲んで、余っていたお肉の串焼きを焼いて、軽食を摂った。


「お肉美味しいです」

「うまい、うまい」


 お肉はヒカリちゃんはじめ、みんなにも好評だった。

 串にさして、塩コショウで焼いただけの素朴な味だけど、それがいい。

 リアルではなかなかザ・肉という感じの肉料理はあまり食べないだろうから、ゲーム独特だった。

 最初は、他に材料も何もなかったので、それしかできなかったけど、今ではみんな、そういうがっつりした肉を食べるのも気に入っているらしい。



「では、隊長、ご命令を」


 アルクにそう言われたので、ゴホンと咳をして発言する。


「ボス攻略を始めます」


 まだ掲示板にもWikiにも情報の出てないダンジョンボスだ。

 緊張した面持ちで、アルクとサクラちゃんが鉄の扉を開いていく。


 中は薄暗く、しかし何もいない。


「とりあえず、中に入ろう」


 アルクの指示で、順番にボス部屋に入った。

 すると部屋が明るくなり、転移でボスがワープしてきた。

 2体いる。かなり大きなコボルトと、オークが1体ずつだ。

 両方とも鎧を着ていて、左手には盾を、右手にはソードを装備していた。

 名前はコボルトキングLv15、オークエンペラーLv17。

 流石はボス。それらしい名前をしている。


「2体か。分かれるぞ。コボルトはドングリとお米券。オークは警ら隊とヒカリちゃんでどうだ」

「「「了解」」」


 すかさずアルクの指示が飛ぶ。


「あー。これは2パーティーは最低いるね。ソロは無理そうだわ」

「戦闘では数の暴力といいますもの」

「そうだね! 自分たちだけで突っ込まなくてよかった」


 私たちクルミ、サクラ、ミケの順に意見を言った。


『グオォオオオオオオ!』


 オークとコボルトが吠えて、切りかかってくる。

 戦闘が始まった。

 サクラちゃんは盾で一瞬防ごうとしたのか、左手を上げたがすぐに避けた。

 コボルトの剣は固い地面にぶつかり、火花を散らした。


 おーすごい。まるでファンタジー映画みたいだ。

 と他人行儀に考えた。

 実際、そういうゲームだったと思い直し、今までの温い戦闘とは違うかもしれないと、気合いを入れる。


 巨大な敵が剣で切りかかってくるから、凄い迫力だけど、そこまでキツくはない。

 動きはゆっくりめで、しっかり見ていれば十分避けられる。

 ネタが分かれば、怖さもそれほどではなくなった。

 ここまで来た私たちだって、成長している。経験だってずいぶん積んだんだ。


 敵はサクラちゃんを執拗しつように攻撃している。といっても、上から剣を振り下ろしてくるばかりだ。

 サクラちゃんはそれを毎回ギリギリで避けていた。

 クルミはその隙に槍を突き入れる。相手のほうが大きいので戦いにくそうだ。

 メイドのコマチさんは懐に飛び込んで短剣で攻撃している。

 私とイナホおじいちゃんは魔法攻撃で後方からしかける。


 皆で攻撃しているけど、あまり手応えがない。攻撃が効いていなかったら、撤退も考えなきゃいけない。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?