引き続き、夕ご飯で情報もらってばっかりいるチームドングリです。
「カナヘビはパーティーで倒せます。オスウシは倒せましたが、まだキツめです」
「なるほど。じゃあ、あれだ。坑道行ったか?」
「行きましたよ。上層の地図を買って、鉄が出るあたりまでです」
「そうか。それより下に行くとな。実はダンジョンになってて、敵も出てくるんだ」
「知りませんでした」
「深くなるほど敵が強い。だから、レベル上げに丁度いいぞ。下の方いけばボスもいる」
なんか、ネタバレほいほいみたいになってきた。
「というわけで、外の町に行きたければ、さっき言った飛空艇と、坑道ダンジョンボスを倒して領主に認めてもらって転移。それから湿地帯を突破して川下りだ」
「どれも面倒ですね」
「そうだな。まあ、無理することはない。まだ若いんだ。それと転移の許可は、領主に直接許可をもらった人に推薦してもらうこともできる。商人などへの対応だ」
「推薦いいですね」
「俺たちも転移できるが、1人につき基本3人までしか推薦ができない決まりだ。俺たちの分はもう使ってしまって残ってない。すまんな」
「いえいえ、とんでもないです」
コネで推薦、簡単転移とは行かないようだ。
「あれ、死んだときの町での復活。セシルが3割減になるんだが、あれどういうことなのか知ってるか?」
「え、それは、ゴニョゴニョ(ゲームだからでは?)」
「実はな、あれは教会の施した呪いなんだ。セシルを取られる代わりに、復活するように、過去に巨大な魔法により神々と契約しているんだそうだ。だから代金は教会に振り込まれるんだ」
「へぇ、そういうものなんですね(設定のこじつけしゅごい)」
「お財布魔法だって、庶民は知らないと思うが、国家による広範囲魔法によるものなんだそうだぞ」
「ほぉほぉ」
「と言う訳で、お金は冒険者ギルドに預けておけば安心だ」
教会というのは、この前行った例のウクレレ神とアクレレ神のところで、ツインスター教だ。
「忘れていた。こんな場所で悪いけど、君たちに称号を贈ろうと思う」
「称号ですか」
「そうだ。ま、とりあえず、ミケから、右手を胸の上まで上げて」
学校で手を上げるときみたいに、向こう側に手のひらを見せて、それを胸の高さにする。
「騎士『ザイール』の名において、この者、名を『ミケ』に『初級冒険者・魔法』の称号を与えん」
別に光るでもなく何でもなく変化がないように見えるが、ログを確認すると、確かに追加されていた。
「ありがとうございます」
詳細を確認すると以下の通り。
●初級冒険者・魔法
駆け出しの冒険者として認められた
種別:称号
レア度:1
魔攻力:3
魔防力:1
同じような文言で、クルミには「初級冒険者・攻撃」で「攻撃力+3、防御力+1」。サクラちゃんには「初級冒険者・防御」で「防御力+2。魔防力+2」を与えていた。
それぞれお礼を言う。
「こういう、称号を与えるみたいなことは、誰でもできるのですか?」
「いや、師匠とか一定の地位の人などができることになっているが、実際にできるかは神様しだいだ」
「つまり、その人と神様の両方に認められる必要があって、不正はないと」
「その通りだ」
「この世界の神様は、結構働いてますね」
「ああ、見たことはないが、確かに仕事はする。勤勉だし、監視も怠らない」
実際に神様、いわゆるGM、ゲームマスター、運営は、二十四時間私たちを監視下に置いて、不正、チート、犯罪などの監視業務をしているらしい。
昔のゲームではRMTの交渉はゲーム外で行われ、ゲーム内でアイテムの譲渡だけ行われたりしていた。このゲームでも状況は同じだけど、譲渡の段階でAIによる監視にばれてつかまってしまうので、RMTなどの不正はしないように、とのことだそうだ。
そういう訳で、MMOの暗黒面はかなりの部分で改善されている。一方で、がちがちの監視はプライバシーの侵害だとして、騒いでいる層もいるけれど、そういう人たちはそもそもベータテスターをやっていない外の人たちだったりする。
AIたちは、中立、個人情報の保護などを徹底していて、一般的な喧嘩などは仲裁に入らない。普段の生活には不干渉を貫いているので、その存在を忘れそうになる。
運営は膨大なAIの処理とサーバー処理をこなすため、データセンターに巨大な専用サーバーを抱えているそうだ。