時間は丁度ゲーム内時間でお昼の鐘が鳴った時、ワールドアナウンスが流れる。
『アップデートで苗字・聖名システムが実装されました。詳細は公式のお知らせをご覧ください』
街を歩いていたら、いきなりだった。
どれどれお知らせを見てみよう。
■苗字・聖名システム実装のお知らせ
西暦20xx年 8月 4
オンラインアップデートにより、苗字・聖名システムが実装されました。
苗字は、アップデート後、メニューのステータスからすぐに自由につけることができます。
現在のログインで設定しない場合は、次回ログイン時に仮想空間へ一時飛ばされて、苗字を設定後に、ワールドへログインできるようになります。
苗字に使用できるのは正しい発音が可能なカタカナの組み合わせだけです。
名前、苗字、その組み合わせなどでAIが公序良俗に反すると判断した場合、その苗字は設定することはできません。
既存のキャラクターネームに苗字を含めていた場合は、名前・苗字に分割することも可能です。
また既存の名前を苗字に設定し、名前のほうを新しくつけることも可能です。
いままで名前は重複を許可していませんでした。
新しく名前・苗字を設定するときに、名前および苗字の重複が可能になります。
苗字を設定できるのは一度きりなので、注意してください。
同じ苗字を設定した場合、今後、家族システムなどに使用される可能性があるため「兄弟・姉妹・親子」などにしたい場合は、同じ苗字を設定することを推奨します。
なお今後実装される結婚システムでの相手とは、別の苗字でも問題ありません。
予定されている結婚システムでは、夫婦別姓を採用する予定です。
聖名、ホーリーネームはシステムにより自動で設定されます。名前・苗字の両方が重複していたとしても、聖名により完全に同じ名前にならないように調整されます。
通常はアルファベット一文字で表示されます。
正式な聖名は長い名前となっています。
今後とも、WVROをよろしくお願いします。 WVRO開発チーム一同
三人で苗字について相談することになった。
「苗字どうしよっか? バラバラに決める? それとも三姉妹にする?」
「あー、お知らせによると今後三姉妹ってのもできるのか、うーん」
「ワタクシはどちらでも構いませんわ」
「別に実際に姉妹設定にしなくてもいいけど、姉妹を選択肢として残すなら、同じ苗字にしよっか?」
「じゃー、わかった。一人一つずつ候補言ってみよう」
しばらく苗字候補を考える。
「私はギルバート」
「あたしは、ブラウン」
「ワタクシは、アンドリューとかどうでしょう」
「りー、理由は?」
「私は何となく」
「わたしは、英語の教科書の最初の人っぽいやつ」
「ワタクシは格好良さそうなものを」
「それじゃあ、三択サイコロで決めるね。電子のシステムの神さまの言う通り――」
システムさんは親切で、色々な数の目のサイコロが実装されている。
3つ目のサイコロは正六面体のサイコロに同じ数字が2個ずつ書かれている。
ホログラムで上から降ってきて、手のひらの上で止まった。
「あ、2だね。ブラウンだわ」
いそいそと、それぞれホログラムを操作して、苗字と聖名を決定した。
「私はミケ・キャロット・ブラウン。ホーリーネームはCだったわ」
「あたしはクルミ・メープル・ブラウン。Mだね」
「ワタクシはサクラ・オイスター・ブラウン。Oですわ」
「なんだろう、ホーリーネームは食べ物なのかな」
「んー。そうかもしれない」
フレンドリストを確認してみたけれど「クルミ・M・ブラウン」と表示されるようだ。
他の人たちにはまだついていなかった。
お昼は、その辺で食べたい。しかし休みだ。
さっき肉串は食べたけど。