ボスに勝ちみんなで、よろこび合う。
ドロップも拾っておいた。
レアドロップみたいなのも期待したけど、まったくない。
えーって感じがしないでもないけど、現実を直視するしかなかった。
ボスの部屋の奥に、いつの間にかワープポータルらしき光の柱が出現していた。
「あれ、ポータルだよね?」
一応、私は確認する。
「あー。あれ、ああいうのよくあるよ。ダンジョン歩いて帰るとか面倒くさいじゃん。ゲームなんだし」
「まぁそうだけども」
「いいじゃないですか。ワープポータルで帰りましょう。楽ですわ」
「ほら、サクラちゃんも賛成してるし、ポータル行こうか」
全員でポータルに乗ると、景色が暗転して、浮遊感が少しある。
再び光が戻ってくると、そこは豪華な屋敷の庭にある東屋みたいな場所に出現した。
「どこここ」
「さぁ?」
クルミと私が疑問に思う。
「ここは、領主館でしょうね」
さすがアルク知ってるらしい。
「そうなんだ」
「ほら、門番が走ってくるよ」
確かに門番が2名も走ってくる。デルタ町についたときにいた、門のところと同じような感じの兵士だった。
「失礼します! ボス攻略パーティーの人たちでしょうか?」
「はいっ!」
「さようですか。では領主様が時間を見て、なるべく早くお会いになります。建物の中でお待ちください」
「そうですか。案内、お願いします」
私たちは門番に案内されて館の中に入っていった。
豪華な建物は、さすが領主様という感じがする。
応接室に入れてもらい、紅茶とクッキーを出されてしばらく待った。
扉が開くと、豪華なドレス姿の女性が一人入ってくる。
歳は30歳ぐらいだろうか。歳の割には若い感じの人だ。
「わたくしが、エレノア・K・デルタです。以後、お見知りおきを。神の使いの人たちもついにダンジョン攻略まで来たのですね。これから忙しくなりそうですわ」
「あはは」
「では、さっそくですが、ボス攻略の金貨を見せてください」
「はい」
私たちは金貨をアイテムボックスから出して見せる。
「いいでしょう。ではこちらに名前を記載してください。それと記念硬貨を4枚差し上げましょう。これは商人などワープポータルを使う人にあげてください。ポータルの通行証になります」
「「「ありがとうございます」」」
ポータル通行証の代わりの金貨だった。
本人分とあと3人、知人を紹介することができるということになっている。
使い回すとかするとどうなるかは知らないが、どうだろうか。
「あの、金貨を使い回すことは……」
「別に構いませんわ。一度に1人の攻略者に対して4人まで、という決まりさえ守っていただければいいんです」
「そうですか。ありがとうございます」
「いいえ」
「他には、質問などありますか?」
「いえ。あ、ポータルはどこに?」
「それなら、屋敷の正面すぐにありますよ」
「あ、分かりました。ありがとうございます」
「他には?」
「いいえ」
「では、よき旅を。神にお祈りさせていただきます」
「ありがとうございました」
あー疲れた。口には出さないけど、偉い人と会談とか緊張する。
私たちはそのまま、屋敷を正面ゲートから出た。
「これがポータルか」
そこには地面に書かれた魔法陣と、その中央にある大きな魔法石が澄んだ青色を輝かせていた。
しばらく観察していると、商人の人が金貨をゲート管理の人に見せて、ポータルで飛んでいく。
「よし、私たちも飛んでみよう」
「おお」
「今すぐにかしら?」
「うん」
何事も挑戦だ。帰ってこれないということもないと思う。たぶん。
商人と同じようにゲートの人に金貨を見せて
「王都へお願いします」
そう言ったらすぐに景色がまた暗転して復活したら、そこは王都だろう大都市のど真ん中、テレポート場だった。
新しい町だ。ついに、やったんだ。ここまできた。なんだか景色を見て、感無量、うれしさががぜん湧き出てくる。
ボスを倒したときは、なんだかぱっとしなかったけど、これはすごい。
ボス攻略の実感をかみしめた。