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42. 綺麗な水


 17日目。本日の天気は曇り。この世界で曇りなのは珍しいかも。

 美味しい朝ご飯のスープとパンを頂くと、畑に向かう。


 雑草を抜いたりして、畑の手入れをする。

 さっそく薬草の若いのが収穫できるころになったけれど、汲んでおいた湧水のいい奴の在庫がもうない。


 あれを手に入れるには、またトカゲゾーンを突破して、村まで戻ってさらに森の奥まで行って、湧水を取ってくる作業が必要だ。


 はっきり言って、めんどくさい。

 それならランクの低い製作で我慢しようかな。


 師匠のニコライドおじいさんに聞いてみた。


「実はだな。きれいな水を汲んでくると気分的には良いのだけど、浄化石という便利なものがあるのだ」


「なんですかそれ」


「泥水ではだめだ。井戸水ぐらいのある程度綺麗な水を沸騰させるだろ。そのときに浄化石を入れておくと、目に見えない汚れまで吸収してくれる。なにやら大量に微小な穴が空いているそうだ」


 私たちの苦労は一体なんだったのだ。

 もちろん、なんでもかじった程度にできるおじいさんは浄化石を持っていた。


「無限に使えるわけではないが、かなりの回数使い続けられる。薬師、錬金術師には必須アイテムだな」


 浄化石は、見た感じ理科の実験で使う沸騰石みたいな感じだった。

 丸くて白くて軽い石で、穴は小さすぎて見えないみたい。


 たくさんあるから、分けてくれるそうだ。


 今日取れた薬草40個をポーションにするときに浄化石を使ってみた。

 水は、お家付属の井戸から汲んで来た。

 水のランクは2で、普通の品質だ。


 汲んだ水をすぐストレージにしまうと、重い水を持って歩かなくていいことに気が付いた。

 あれこの前、警ら隊が水運びで苦労したって言ってたよね。

 彼らはしまわないで、担いでいったのかな。


 水に浄化石をいくつか入れてから、火にかける。

 見た感じはあまり変わらない。気持ち気泡が多いぐらいだ。


 無事ポーション(渋み控えめ)が完成する。

 ランクは最近作ったものと同じで4だった。


 ポーションが8個できて、売り物ポーションは合計128個になった。

 ポーションの賞味期限とかあるのだろうか、今の所特に未使用のものが腐ったとかそういうのはないけれど。

 質問してみた。


「ポーションは強い力があるから、普通は腐らないな」


 だそうだ。まあそうだよね。ゲーム的に考えて、管理がめんどくさいもん。

 例えばリアル基準で一週間ぶりにインしたらゲーム内で1か月経っていてポーションが全滅した、とかが発生するとポーション溜めてるライトユーザーは辛いことになってしまう。

 畑も育つのは速いけれど、すぐには枯れない親切設計だった。


 午後の後半戦、また川に釣りに来た。

 よく見ると川岸に浄化石と同じ感じの石が落ちている。


「ああ、あれは浄化石になる。この辺の川原には多いんだ。店にも売ってるけどね」


 今日も釣り大会が開催される。

 私たちは絡まない程度に離れて並んで、川に釣り竿を垂らす。


 本日も、ぼちぼちイロエマスの小さいのが釣れる。

 というか、小さいのしか釣れない。


 しかし、さすが師匠。

 ちょっと離れていた場所で釣っていたニコライドおじいさんは、ついに25cmのイロエマスを釣り上げた。

 他の魚はみんな10cm台だったから倍近い大きさだ。


「ほっほっほっ。さすがワシ。ほれ、こんなに大きいぞ」


 おじいさんが自慢してくる。いつもはもう少しクールな感じなのに楽しげだ。


 結局あとは10cm台のイロエマス12匹を釣った所で終わりになった。


 今日の晩御飯は、このイロエマスだ。

 料理担当は、おばあさんと私。

 イロエマスに塩、胡椒、ハーブと少量の小麦粉をつけて、オリーブオイルをひいたフライパンで焼く。

 ハーブはバジルみたいな奴です。


 大きいのはおじいさんの分になった。

 そしてクルミは私たちより一匹多くて4匹も食べていた。

 そんなに食べると、また最大満腹度が増えるぞ。


 表面がパリパリになって美味しい。

 マスなので、身はサーモンピンクの色をしていて食感は白身系だった。

 ホクホクしていて、甘みとうまみがあり、味付けとあわせて丁度良い感じになる。


 魚は足が早いので、この町ではお店で売っていなくて、自分たちで釣る位しか入手できないそうだ。


 美味しいご飯も食べたので、日課の作業をして、おやすみなさい。


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