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29. タコ戦


 私たちは草原でタコ型モンスターと戦闘中だ。


 普段なら、サクラちゃんが盾で抑えながら、皆で攻撃するところだ。

 しかし「美味しそう」と言う割りには、気持ち悪がっていて、盾で接近することを拒んだ。


「タコさんは盾はやめましょう。きっと取られてしまいますわ」


 それも一理ある。

 サクラちゃんとクルミは剣と槍を振って、触手を切断しようと奮戦している。

 私はアイスブリーズが効くようなので、長い詠唱を唱えて凍らせて動きを止めさせる。


 タコはクルミの槍の突き攻撃をぎりぎりでかわして、槍の穂先に触手を絡ませた。

 次の瞬間、電撃エフェクトを全身に発して、槍伝いにクルミを感電させてきた。


 クルミはビクンとなって膝をついた。


「うぉー。ビリビリしてるよ~。立てなくなっちゃった」


「なんとかしなければ、いけませんわ」


 サクラちゃんが、思い切って盾をストレージにしまった。

 片手剣を、すごいスピードで振り回している。


 なんか、別人みたいにサクラちゃんからすごい気迫を感じる。


「乙女のピンチですわ」


 それ、この前も聞いたぞ。しかもオオカミに殺された時だ。

 私も必死に、アイスブリーズで攻撃する。


 感電効果は思ったより長かった。

 クルミの復活まで1分程度必要だった。


 復活したクルミは、槍を構えなおして、3連撃を、今度は触手ではなく、目の近くの頭を攻撃する。


 タコが目に見えて、怯んでいた。


「ふー。タコっぱちの弱点は頭への攻撃みたいだ」


 サクラちゃんもクルミと連携して、タコの頭を狙うが触手が邪魔だった。


 私がアイスブリーズを詠唱付きで唱えて、タコが硬直したタイミングで、前衛の2人が頭を狙って攻撃した。


 ついにタコは、伸ばしていた触手を地面に伏せて死亡したようだ。

 新敵恒例、ドロップ確認。


 ●平原タコの身

  タコの身。生でも食べられるがあまりお勧めはしない。

  種別:素材、食べ物

  レア度:1  ランク:2

  満腹度:50回復


 ●魔物の核

  錬金素材。魔物のエネルギーが凝縮されている。

  種別:素材

  レア度:3  ランク:2


 加工は例によって、タコの串焼とか、タコの干身とかだろうか。

 そういえば、オオカミの肉もかなり残っている。腐らないといいけど。


 弱点が分かれば、対処はしやすい。

 それと盾でガードすると、たぶん電撃を食らうのでダメだろう。

 サクラちゃんの予想とは少し違ったけど、行動は正しかったのだ。


 オオカミも倒したし、テンタクルも余裕だろうと思って、情報収集を怠っていたのだ。

 気持ち悪いとかは見たが、掲示板をすべて読むと時間がかかるから、斜め読みしていた。


 その後も、単独のタコを何匹も凍らせて、頭を狙って攻撃した。

 魔物の核は、最初の1匹以来、1つも落とさなかった。どうやらレア枠のようだ。

 錬金素材なら、村長の領分なのかな。でも錬金と薬師は違うよな。


 私の魔法は、ターゲットは思考操作で指定しているだけで、どこの場所に当てるかまで正確なコントロールは今の所できていない。


 少し早めに切り上げて、タコ地帯とプリン地帯の中間にある、石の遺跡みたいなセーフティーエリアに寄った。


 ストレージから薪を出して火をつける。

 タコを焼いてみよう。

 これが本当のタコ焼きだ。


 料理「タコの串焼き(塩胡椒こしょう)」と「タコの干身塩味」が完成した。


 串焼きは3つだけ。

 例によってタコの身1つを一口大に切り、鉄串に刺して火であぶった。


 残りは全部干し物にした。


「わー。串焼き美味しいね。干しダコもビールにあいそう」

「淡白なうま味と、甘味がありますわね」


 ウサギもいいけど、タコも結構おいしい。よかった。


 これなら、まだ狩れるユーザーも少ないし、商売になるぞ。


 そうそう、ついでにオオカミの肉も焼いてみたけど、感想は以下の通り。


「なんか、肉がパサパサして固い気がする。ウサギの方が好き」

「柔らかくする下処理と、旨辛のタレが必要そうな、そんな、気がいたします」


 オオカミ肉まだ残ってるんだよね。どうしようかな。


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