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27. 月食


 突然であれなんだけど、なんか良く分かんないけど、今日は月食らしい。

 だから何だっていうんだけど、一時的に暗くなるので、夜間の戦闘しにくいとかなんとか。

 それから魔術的な意味があるそうだ。


 まだ、警ら隊とヒカリちゃんたちが帰ったばかりで、10日目の午前8時ぐらい。

 彼らはリアルで寝るそうだ。


 ウサギさん帽子は村で装備していると、まだ目立ちすぎるため、外している。

 そのうち量産されて、皆つけるような感じになるかもしれない。


 露店をチェックして、森へ行って、夕方帰ってきて、村長の家でお肉を干して、今に至る。

 広場にNPCをはじめとする人が集まってきていた。


 今日は、夜なのに中央広場で屋台が出ている。

 祭りみたいな感じになっている。


 まず、ウサギの肉串を焼いているのは、もう一つの宿屋のご主人だ。

 焼きたての肉串はかなり売れているようだ。

 ボノックじいさんは隅の方で「装備の補修賜ります」と掲げている。

 でもあんまり繁盛していない。


 雑貨屋のジェイクが今日は「ジャガイモのポタージュスープ」の屋台をやっているようだ。

 隣にトラニー君もいて接客を担当していた。


 他にも村人の屋台があり、ビールとトマトジュースの店があった。

 トマトジュースを飲んでみたけれど、かなり酸っぱいわこれ。


 どうやってきたのか不明な流れの商人が「入門用ロザリオ」を売っていた。


「回復役に転向したい人にお薦めだよ。普段は前衛で、副業で回復役をする人にもおすすめの逸品だよ。数はあるから見てってよ」


 気になったのでロザリオの補正を確認。


 ●入門用ロザリオ

  入信したばかりの信者が使うロザリオ。木製の量産品。

  種別:武器(ロザリオ)

  レア度:2  ランク:2

  魔攻力:3

  回復力:10

  耐久:90/90


 初心者のロザリオとほぼ同性能だ。これは初期武器から変更したい転換者向けの装備のようだ。

 掲示板で確認したところ、他の村でも同様のロザリオが売りに出されているようだ。

 お金があるなら、パーティーに1つあれば余裕ができると書いてあった。


「ポーションより、回復役を連れていた方が何かと便利ですし、不味くないからいいよ」


 NPCもポーション不味いの知ってるなら改良してくれよ。

 ちなみにお値段7,000セシルだ。はっきり言えば高い気がするわ。


 村長のアブダヒデは村の警備員と一緒に、見物して回っていた。

 一応この村にも警備員の2人組が3交代でいる。

 とりあえず、挨拶だけはしておいた。


 冒険者ようはユーザーたちは、ゴザをひいて露店をしつつ月を眺めたり、その辺に立ったまま、月を見上げたりしている。


 なかには、カップルだろう二人組が、ゴザに座って肩を組んで、やはり月を見上げている。

 ちょっとうらやましい。


「あー。わたしたちは女の友情を深めようね~。はに~」


 クルミは小さい声でそう言ってきた。


「あ、うん。これからもよろしく」

「ミケっちはたんぱくだな~」


 他にも適当に会話した。

 そのうち、月が横から欠けてきた。

 でも欠けたところは、暗い赤色をして、完全に見えなくなるわけではないようだ。


 そのうち、どんどんかけて、最終的に全部が暗い赤になった。

 皆既月食だ。

 もっとも、この世界は少し不思議で毎日月が夜出ているので、天体の動きがどうとかは、適当みたい。


 ブラスミ君がいる。

 遠くからボノックじいさんの補修屋を眺めていた。


「こんばんは。ブラスミ君」

「ミケさん、こんばんは」


「修理のボノックじいさん、気になるの?」

「はい。武器の扱いになれてるみたいだったので」

「あのじいさん、鍛冶屋だったから、弟子になってみれば。引退したみたいだから無理かもしれないけど」

「やっぱりそうなんだ。俺、ちょっと声かけてきます」

「一緒に行ってあげる」


 私たちは、ボノックじいさんに声を掛けた。


「お嬢さんたちかい。冒険者がたくさんいるのに、全然、客が来んわい」

「この人はブラスミ君。鍛冶屋を目指してるんだけど、教えてくれる人が見つからなくて、ボノックじいさん、教えてあげてくれませんか?」

「あん。わしは引退したんじゃが、どうしても、と言うなら触りだけならいいぞ」

「あ、ありがとうございます!」

「まずは補修の仕方からだぞ」



 ブラスミ君は、無事入門を果たせるようだ。


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