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24. 夜の森


 北東の森のエリアボスが討伐されたメッセージは全ユーザーに告知された。

 その反応は、掲示板始め、雑談、夜の食事の話のネタとして、かなり話題になった。


 戻ってきてから、また先に宿屋へ行ってもらい、トラニー君から料金と薬草と空き瓶を回収する。

 私たちは、今度はフレンド登録をして、ボスの話はしないことにして、宿屋で今日もステーキをご馳走になった。

 ヒカリちゃんも口をおっきく開けて、ステーキをほおばっていた。

 そしてツグミジュースがお気に入りみたいだ。


 その日の宿屋の夕食のときに、周りの席の人たちは、ボスの話をかなりしていた。

 どうやら、夜時間は狩りができず、連続ログインができなくて、皆ストレスがたまっていたらしい。

 そこへ、このメッセージである。


 ユーザーたちはこぞって、パーティーで夜の森へ進んでいった。

 命知らずのソロ君も何人かいた。

 しかし「オオカミが群れない」という表示だったので、依然としてオオカミ自体は出没するということだ。

 だから多数派は、前衛どうしだろうと、臨時パーティーを組んで、森へ出発していった。


 ありがたいことに「誰が」ボスを討伐したかは表示されなかった。

 メッセージからすると、2週間はリポップ(沸きなおし)しないようなので、時間沸きモンスターの扱いなんだろう。

 2週間というと長いように感じるかもしれないが、現実時間では2日とちょっとなので、すぐだ。


 薬草とタンポポ草、そして白キノコ40個は、全部私たちのものになり、代わりにヒカリちゃんたちにはお金を支払った。

 ウサギの毛皮とオオカミの毛皮灰色は、ヒカリちゃんが引き取って行った。

 ウサギ帽子を私たちの分も作ってくれるらしい。

 警ら隊は、武器屋と魔法の情報料だと言って、お金は受け取らなかった。

 支払額は6,700セシルになった。残金は107,605セシルだ。

 チームは解散して、それぞれの道に分かれた。


 私たちは、夜間訓練の名目で、夜の森を行くことにする。


 明かりは、宿屋のおばさんに借りた。室内外両用カンテラだった。

 手が空いてるのは私だけなので、私が左手でカンテラを持つ係だ。


「はー。夜の森はなんかいやだね~」

「ワタクシも、夜は苦手ですわ」


「大丈夫、怖いのはオオカミだけだよ」

「全然大丈夫じゃありませんわ」


 前衛の2人は、あまり夜のお散歩は好きではないらしい。


 虫の鳴き声とか聞こえてくるし、葉っぱが風でこすれる音もする。

 上を見上げれば、木々の間に、無数の星が散らばっていた。


「ちょっと上見てよ。星がきれいだよ」


 後ろ側の空には、月も出ている。

 というかこの世界、夜間行動しやすいようにか、ずっと夜は月が出ている。

 まあ、ファンタジーだしね。それくらいはいいよね。


 たまに草をかき分けて、オオカミが出てくる。

 群れないので、倒すのは、もう簡単だ。

 クルミの動きもよくなっているし、アイスブリーズでの足止めもできる。


 森の奥の方までくると、森の白キノコが、月光に照らされて、蛍光色に発光していた。


「わー。キノコちゃん光ってるぅ~」

「あらあら、まあまあ。幻想的ですわね」


 草をかき分けてくる音がするな。

 オオカミかな。


 色白で水色の髪の男性エルフ。あー、あれは、リング・ウッドこと、丸木先生だ。


「先生なにやってるんですか?」

「いやね。森のボスが初めて討伐された。しかも『君の女の子たち』だと運営から聞かされて、様子を見に来た」


 先生は、私たちの映像こそ見れないが、居場所は分かるように、取り計らってもらっているそうだ。


「君たちは、ログイン時間が長い分、強くなりやすい。どうしても目立つけど、もうしょうがないとして、諦めるよ」

「じゃあ、掲示板とかで騒いでもいいですか」

「それはやめてくれ! 噂が立つぐらいならいいって意味だよ」

「わはー。わっかりました~」


 先生は何故か私たちに付いてくる。

 そして、攻撃手段がちょっと変わっている。

 ポーションの瓶のようなものを、オオカミに投げつけて、爆発させて攻撃している。


「俺は医者だから、科学者だ。科学者といえば錬金術師と相場は決まっているんだ」


 良く分からない理論だが、まあいいや。


「ゲームには、なじんできたみたいだね。よかったよ。では、また検診で。そうそうレポートは頻繁に出してくれていいよ。冒険談も教えてくれ」


 そういうと、森の中なのに、先生は去って行った。


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