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22. 合同作戦


 雑貨屋から出たところで「警ら隊」のメンバーに捕まった。

 捕まったといっても逮捕されたわけじゃないよ。


 なんでも、フレンド登録していないので、朝から私たちを探し回っていたらしい。

 アルクがさわやか笑顔で、挨拶したかと思うと、真剣な顔で語りかけてくる。


「探しましたよ。例のオオカミ、一緒に討伐しようと思いまして」


「人数は?」

「全部で9人。ミケさんたちと俺たちと、あとは白魔法使いとそのメイドです」


「メイドさん? AIとかじゃなくて、本職の?」

「はい。ちょっと知り合いまして。宿屋でジュース飲んで待ってます」

「露店さっと見ていっていい? 新アイテムとかあるかも」

「そうですね。ついていきます」


 私たちは一緒になって、露店を回る。

 ウサギの干肉塩味を量産した人がいた。100個ほど売っている。1つ140セシル。

 プリン産の「錆びた銅の斧」があった。要相談、参考価格4,000セシルらしい。


 簡単な形の寄木のキーホルダーを売っている人がいた。

 木工ペンダントを見かけて、自分でも挑戦したらしい。


 ●寄木のキーホルダー

  縞模様の寄木のキーホルダー。

  種別:アクセサリー(キーホルダー)

  レア度:4  ランク:2

  攻撃力:1

  魔攻力:1

  命中:1

  耐久:20/20

  作成者:ダダンテ


 お値段は3,000セシル。

 色の違う木を並べて接着して、それをのこぎりで切って釘で紐に留めてある。

 キーホルダーは小さいので、そこそこ数が揃っている。

 ダダンテさん最初の作品だそうだ。


 警ら隊は4人分、おまけしてもらい11,000セシルでお買い上げしていた。


 露店を見終わって、宿屋に向かった。

 そこには、椅子に座る9歳ぐらいの小さな女の子と、私たちより少し上の年齢の女性がいた。

 女の子は膝の上に、30cmのぬいぐるみを抱えている。

 茶色い猫かウサギかクマのどれかだ。


 私たちは自己紹介をする。


「こちらはヒカリお嬢様。わたくしはメイドのコマチです」

「始めまして、ヒカリです。本名じゃないですよ。それで、こっちがウサギのマイケル」


 ぬいぐるみはウサギさんだった。

 ヒカリちゃんは、犬耳族で125cmぐらいのスレンダーボディーだ。

 髪の毛は黄緑のツインテールにしていて、目は深い青だ。

 ほっぺた、ぷにぷにで二重の丸顔をしている。


 コマチさんは、ほっそりした顔だちのエルフで、肩より少し長いぐらいの赤い髪をポニーテールにしている。

 あと、どう見ても、私たちよりおっぱいが大きい。

 背丈も少し高い。


「マイケル見ていいよ」


 ヒカリちゃんは、マイケルを差し出してくる。


 ●茶色ウサギのぬいぐるみ「マイケル」

  一針一針頑張って縫ったぬいぐるみ。癒しの力が込められている。

  レア度:4  ランク:4

  種別:アクセサリー(片手装備)

  防御力:10

  魔防力:15

  回復力:20

  耐久:60/60

  作成者:ヒカリ

  使用者制限:ヒカリ


 なんだこれ。どう見てもユニーク装備だし、ランクとか4だぞ。

 アルクが補足する。


「ヒカリちゃんは、見かけた中で最年少にして最高の白魔法使いだ」

「まだヒールしかできないけどね」


 ヒカリちゃんはくすぐったそうに笑った。天使だ。天使がいる。

 これなら、勝てそうだ。


 私たちは連れ立って、森へと向かう。


 ヒカリちゃんは足が短いので、遅くなりそうだが、懸命についてくる。

 疲れたとか文句も言わず、コマチさんの斜め後ろを歩いている。


 パーティーを束ねる、レイドの形になるらしい。

 一応システム設定があり隊長は、どういうわけか私である。

 ただし実際の指揮系統はアルクさんに一任してある。

 今回はそのまま3パーティー構成だった。


 私たちは、たまに薬草を採取しながら、森の中を進む。

 ウサギが複数単位でよく出現するのでさくっとやっつける。

 オオカミ単体とも戦闘になったが、取り囲んでタコ殴りにした。


 アルクさんがつぶやいた。


「本当に昼間からオオカミも出るんですね」


 ヒカリちゃんは左手でマイケルを、右手で初心者のロザリオを持っている。

 ということは、まだ出番がないけど回復力はさらに高いということになる。


 ヒカリちゃんたちは、クエストを通じて仲良くなった農家にお邪魔しているそうだ。

 そこで、裁縫セットを借りて、マイケルを作成した。

 外は見て分かる通り、草原ウサギの毛皮でできている。

 中に詰まっているのは、プリンの欠片だという。


 私たちは、森の中をボスを求めて歩いていく。


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