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16. 白魔法師ミケ


 私たちは引き続き草原を狩りしながら移動していた。

 しばらくすると、近い所で、ソロプレイヤーの金槌使いがプリンと戦っている。


 ちょっと辛そうだな。私はそう思っていた。

 特に応援要請もないので、私たちはそれを眺めている。

 男性で背が低いようで、あれはドワーフだろうか。


 すると、プリンが火魔法を放ってそのプレイヤーは倒れてしまう。

 どう見ても死亡である。


「ちょっと、死んじゃった。見てくるね」


 私は近づいて声を掛ける。


「生き返らせましょうか?」

「う。お願いします」


 プリンはすでにこちらにターゲットを変えてきていたので、サクラちゃんに相手をしてもらう。


 私ははじめて手持ちの「初心者復活薬」というものを取り出した。


「可愛い猫耳さん、ありがとう」

「いえいえ! そういえば、猫耳だった。忘れてた」


 私はすぐに目標をプリンに変えて、マジックボールを叩き込んでやっつける。

 数回でやっつけると、武器をロザリオに変更して、ドワーフ君にヒールを掛ける。


「ヒールも使えるんですね。かっこいいです」

「ちょっと拾い物しまして」


 しかし私のヒール量はまだ10しかない。何回も掛ける必要があった。


「本職じゃないので、回復量が少ないみたいです」

「なるほど。でも助かりました。不味いポーション飲まなくてすんだので」

「そりゃそうですね」


 彼はまだ始めたばかりで、攻略情報とかも見ていなかったようだ。

 前回の戦闘では、ぎりぎりでプリンをやっつけて不味いポーションを飲んで回復したらしい。

 彼の名前は「ブラスミ」君だそうだ。

 ああ、ブラック・スミス、すなわち鍛冶職人の略ですね。

 まだ、鍛冶師になる方法は不明だ。


 せっかくなので、パーティーに入れて、4人で戦ってみる。

 プリン戦では、あまり役に立たないけれど、ウサギ戦では活躍してくれた。

 ハンマーは結構火力が高いのだろうか。


「なるほど。盾職がいると楽なんですね」


 現段階では、プリン戦の防御も盾が有利だ。

 しばらく、いつもの感じプラスおまけみたいにして、戦闘を続けた。

 私はウサギ戦と空き時間では武器をロザリオにして回復も使ってみた。


 途中お腹が空いたので、ウサギの干肉をブラスミ君に提供する。


「美味しい! 携帯食も不味いんですよ。助かります。食生活の大事さを実感するゲームです」


 なんかブラスミ君をすっかり餌付けしてしまったみたいで、好感度が上がっているようだ。


「僕も知り合いとかと一緒に始めたら良かった……」


 オープンベータは、かなりの人数を受け入れる予定らしいが、ログインは人数制限の抽選に当たらないと、始められない。

 もっとも、運営はパーティーを重視しているらしく、友人と一緒に抽選に参加できる仕組みがあった。

 ただ、VRギアも高価だし、なかなか手を出しにくいのが現状だろう。


「もしよければ、僕も固定パーティーに入れてくれませんか? お願いします」

「私たちはちょっと事情があって、固定に入れるのは難しいと思う」

「そうですよね。女性パーティーに入れてくれなんて図々しいですよね」

「そういうのとはちょっと違うんだけどね。まあいろいろと……でも、フレンド位ならいいよ」

「ぜひに!」


 私たちはフレンド登録をして、夕方別れた。

 彼は寝るのでログアウトするそうだ。現実ではそのうち朝方かな。

 普通の人の2倍は活動できるので、トップを独走ということもできる予感だが、生産系は効率からするとそれほどLvは高くならないので、大丈夫だろう。そう信じたい。


 ペンダントは全部売れたようだ。

 トラニー君から売り上げの約60,000セシルを受け取る。

 また、ウサギの毛皮を32個売って3,200セシル増加だ。

 残金は72,500セシルになった。


 村長の家を訪ね、ウサギ肉32個を干肉塩胡椒x16と干肉塩ハーブx16に加工する。

 いつもの宿屋に泊まり、今日もクルミたちはペンダント製作をする。

 私は読書とwikiと掲示板とweb情報を見て回った。


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