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私たちだけ24時間オンライン生産生活
滝川海老郎
ゲームVRゲーム
2024年08月03日
公開日
106,895文字
連載中
VR技術が一般化される直前の世界。予備校生だった女子の私は、友人2人と、軽い気持ちで応募した医療実験の2か月間24時間連続ダイブの被験者に当選していた。それは世界初のVRMMORPGのオープンベータ開始に合わせて行われ、ゲーム内で過ごすことだった。一般ユーザーは1日8時間制限があるため、睡眠時間を除けば私たちは2倍以上プレイできる。運動があまり得意でない私は戦闘もしつつ生産中心で生活する予定だ。

1. 医療実験


 私こと大野おおの真美まみ、18歳は女子高をこの春、無事卒業した。行きたい大学に合格できなかったため、予備校生をしている。

 私はネットで見かけた、2か月間24時間連続VRダイブ医療実験の被験者に友達と応募し、それに当選した。


 VR技術は実用化寸前の段階まで進み、関連医療機器などの開発も急ピッチで進んでいる。

 募集要項は、18歳以上の健康な方で親しい3人ひとグループ単位。家族の同意が得られる方。免責事項の書類に同意できる方のみ。

 ちょうど夏休みの2か月間の時期と重なり問題なかった。

 このゲーム内時間は加速世界が採用されていて6倍のスピードで時間が進むため、実質2×6で1年間行われることになる。

 体感期間が長いこともあり、高額の謝礼金も出る。


 ゲームの名前は「Wonderland Virtual Reality Online」通称WVROである。

 剣と魔法の少し不思議なVR世界だ。

 オープンベータ終了後はそのまま本サービスに移行する。

 本サービスは月額課金制を予定しており、ゲーム内ではアイテム課金はないので、課金者が有利になるわけでは無い。

 クローズドテストまでは、守秘義務が課せられているためか、プレスリリース以上の情報はほぼ公開されていなかった。


 WVROが開始される3日前、私たちは、秋立総合大学病院に集まった。


「やっはろー、真美」

「はろはろ、みくる」


「おはようございます。真美さん」

「おはよう、さくらちゃん」


 それでは、これから1年間一緒に冒険する仲間を紹介しよう。

 三人は同じ高校出身だ。

 まず私。身長148cm。体重は軽いほう。なぜか胸だけ大きくなりそこそこある。

 黒髪で肩までのストレートヘアをしている。

 顔は友人曰く、ロリ系で頬っぺたが膨らんでいて可愛いらしい。

 運動は苦手。得意なのは数学と読書と図工。小学校の図工では、よく作品がクラス内の賞を取り、2回市の公民館に展示されたこともある。


 次は安達みくる。18歳。身長155cm。体重は軽いほう。

 胸は、残念ながらぺったんこだ。いや、膨らみかけだ。

 顔は普通。どちらかというと、すっきり顔の美人系かな。

 運動はできる方だが、勉強はあまり得意ではないようだ。


 次は春巻桜。18歳。身長は160cm。体重はたぶん見た感じ軽め。

 スタイルはかなり良い。髪形はロングですべすべ、さらさらしている。うらやましい。

 勉強は何でもできて、運動は普通だ。絵がすごくうまい。写実的なのもアニメ調もできる。

 あまりしゃべらないタイプだけど、話すとですます調でお嬢様キャラが似合っている。


 三人とも集合時間には間に合って、説明室へと案内される。

 しばらくすると、イケメンの眼鏡をかけたお医者さんが入ってくる。


「今日からよろしくお願いします。私は、この実験の責任者の丸木まるきです」

「「「よろしくおねがいします」」」


 加速世界への長時間のダイブは、まだ実験があまり進んでいない。

 理由は簡単で、長時間過ごすだけのコンテンツが読書ぐらいしかVR世界にまだなかったからだ。

 そこでちょうどサービスが開始されるWVROで過ごす実験が提案された。

 私たちは、毎週または何か問題が発生した時にレポートを提出すれば、あとは自由にゲームを進めていいと言う。

 後たまに、ゲーム内で丸木さんが問診をするそうだ。

 なお、普通の人たちは現実時間で1日8時間のログイン制限が課されている。


 丸木さんに案内されて、私たちは5階にある部屋に案内された。

 そこには、最新のVRヘッドギア連携の寝たきり介護用ベッドが置かれていた。

 ギアには筋力低下を抑えるための機能が備わっている。


 今日はVRヘッドギアのセットアップと、体に異変が出ないかの事前チェックだった。


 私たちは、入院着に着替えた。そして、VRヘッドギアを付けてベッドに寝た。

 脳波測定、身体チェックが行われ、VR空間に降り立つ。

 そこは、簡単な部屋になっていて、姿見、コタツ机、ベッドがあった。


「私そっくり」


 私は思わずつぶやいた。ゆったりしたルームウェアを着た私と瓜二つのアバターが鏡の前に立っていた。

 視界の隅には「メインメニュー」なるものがホログラムで浮かんでいる。

 ここはまだWVROのゲーム内ではなく、VRヘッドギアのプライベート空間だった。

 私たちは、半日かけて専用のミニゲームをして6倍の加速世界をひとまず体験した。

 ジャングルジムにロッククライミング、パラグライダー、テニスなどだ。

 現実で体験すると危険な遊びも、ゲーム内なら安全だ。


 健康診断や様々な事前検査が行われ、あっというまに準備の2日間が過ぎた。

 明日から、いよいよ長い長いVRゲーム生活が始まる。


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