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10. 雑貨屋の一番弟子


 3日目。今日は何しよう。

 とりあえず朝食はウサギの干肉だ。たくさんあるし。


 村長さんの所に、今日も御用聞きに行く。


「村長さん、今日はいかがでしょう?」

「うむ、今日は特にないな。最近冒険者が増えてきたからジェイクが、売り物が品切れになったりする、と愚痴を言っていたのじゃ」

「分かりました。ジェイクさんの所に行ってみます」


 雑貨屋のジェイクさんの所へ来た。

 例によって会話担当はパーティーリーダーの私だ。


「よく来たな。3日前から急に冒険者が増えただろう。それで明日には補給がくるんだが、今日はポーションと携帯食の在庫が心もとない」

「ポーションなら作れますよ。材料があれば村長も作れるけど。携帯食はないですが、ウサギの干肉なら提供できます」

「ウサギの干肉か。普通の食い物は、うちでは扱いたくないな。そういうポリシーなもんで」

「そうですか。でも私たち露店で目立ちたくないんです」

「そうだ。一番弟子のトラニーを付けるから、露店の売り子を頼めばいい」


 そういうと、ジェイクさんは奥へ行って、トラニーを連れてくる。

 トラニーは、猫耳族のようで茶トラ模様の9歳ぐらいの男の子だった。


「トラニーです。よろしく」

「こちらこそ、よろしくね。トラニー君」


 クルミとサクラちゃんも挨拶を交わした。

 ウサギの干肉50個とついでに5級ポーションを6個渡しておく。

 干肉は200セシル。5級ポーションは450セシルでお願いした。


「任せてください。午前中で売り切ってみせます。あ、買い取りはどうします?」

「じゃあ、空き瓶を15セシルでお願い」

「分かりました。どんと来いです」


 手持ちの干肉は残り7個だ。

 ついでに何か生産設備的な物を買っていこう。


「ジェイクさん。携帯料理器具セットとか置いてありますか?」

「あぁ、初心者携帯料理器具セットならあるぜ。君たちは村長に気に入られてるみたいだし、特別に売ってもいいぞ」

「ありがとうございます」

「ああ。薪は道中拾うといい」


 料理セットは、魔法の火打石、まな板、初心者の包丁、底が平らなフライパン兼用の鍋、鉄串だった。

 全部合わせてお値段1,000セシルなり。


「塩と胡椒あと香草、それから竹串が欲しいです」

「塩胡椒と香草で250セシルな。串はないな。村人は木の枝を削って使ってる」

「じゃあそうします。ありがとう」


 残金は1,650セシルだ。


 私たちはさっそく森に向かう。

 今日も、ウサギ狩りをする。狩りをする。ウサギばっかりだ。

 今日はたまに2匹同時に出てきたりする。

 そういうときは、1匹をサクラちゃん。もう1匹はクルミが相手をする。

 クルミは槍をうまく使って、相手を近づけさせない戦法だ。

 サクラちゃんは今日から盾を左手で持ち、右手でナイフを使っている。

 私は、適当に早く倒せそうな方を狙ってマジックボールを使う。


 クルミはHPが減ってきたため、しぶしぶ初心者ポーションを飲む。


「うー。うげえ。我慢できなくないけど渋いわ~」

「しょうがないね。頑張って避けるしかないよ」

「クルミさんファイトですわ」

「ねー。ミケ、白魔法覚えてよ」

「それなら渋いの飲まなくていいね。でもどこで覚えるの?」

「あー。わっかんねー」


 私はまだ初心者ポーションまるまる10個残ってる。

 この初心者シリーズ。すべて使用者固定属性が付いていて、売っても0セシルなのだ。

 キャラクター再作成は1時間に1回までと決まっているんだけど、初期アイテムを売って儲けることができないようになっているらしい。

 空き瓶は10セシルだから、10個で100セシルにしかならないね。


 今日はあまり深い所まで行かずに薬草を積極的に探すことにする。

 タンポポ草もたまに生えているので、頑張って根っこごと抜く。

 この森の土はフワフワなので、なんとか手でも掘りだすことができる。


 私は何か新発見っぽいアイテムがないか目を光らせて歩いているけれど、ピピンとくるものはあまりなかった。

 とりあえず、枯れ枝は拾い集めている。


 途中で小休止をした。真っすぐな枝を選んで串にする。

 最初はサクラちゃんがやっていたが、クルミが面白そうと言って、ナイフを借りて作業しだした。


「ふっふふー。わたし木材加工、向いてるかも~」

「大発見ですね。それじゃあ木工はクルミさん担当にしましょうか」

「まっかせておいて」


 枝を削るだけだけど、クルミとサクラちゃんには「木工:Lv1」が付いていた。

 私も1本だけ作ったんだけど、付かなかったんだけど。


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