浮遊感がなくなると、村の広場の中に立っていた。
村の家々は木造で屋根も板ブキ、木の窓だった。
周りにも、何人か男性がいる。
そのうちの一人が声を掛けてきた。
「君、何ちゃん? 可愛いね。暇そうだから一緒に冒険しない?」
「いえ、友達を待っているので」
「でも、今暇そうじゃん」
「すぐ来ると思います」
私が強めに言うものの、まだ引き下がらない。
そこに水色髪のエルフの男性が割り込んで来た。
「ちょっと失礼、その人は私の知り合いなので、お待たせしてすみません」
エルフは名前を「リング・ウッド」と名乗った。
「リング・ウッドさん? ああ、先生!」
「そういうこと。リング君と呼んでください」
「ちっ」
責任者の丸木先生だった。
ナンパ男は舌打ちをして去って行った。
「俺も視察にちょくちょくログインするから、よろしく」
「はあ、そうですか」
その後は特にしゃべるわけでもなく、二人を待った。
目の前に、黒髪ロングの子が降り立った。
すぐ桜ちゃんだと分かった。
他の人に聞こえないように小さめで声を掛ける。
「やあ、桜ちゃん」
「あらあら、真美さん?」
「そうだよ。私は『ミケ』魔法使いにした」
「ワタクシは『サクラ』。盾キャラにしてみましたわ」
「本名プレイとは恐れ入ります」
サクラちゃんはヒューマンで、重めの革の鎧に大盾を装備している。
しばらくしゃべっている間に、みくるがやってきた。
「わたしは『クルミ』槍使い。敵を刺しまくるぞ。ぶはははは」
みくる改めクルミもヒューマンで、軽い鎧を装備している。
丸木先生ともども、フレンド登録を済ませる。
「では俺は行くよ。皆は基本ログアウトできないけれど、ログアウト機能自体は死んでないから安心してください」
「わかりました、さようなら」
丸木先生は手をひらひら振りながらどこかへ去っていった。
「なにしよっか。普通は冒険者ギルドとか行って、クエスト受けるんだろうけどもね」
私は疑問を口にした。
村の規模はかなり小さい。正直ギルドがあるように思えない。
「はー。なんとかなるっしょ。とりあえず村人捕まえて、村長の家とか行けばいいんじゃね」
「そうしましょうか」
クルミは適当なことを言うが、サクラちゃんも同意したので、そうする。
私たちは村人を捕まえて、村長の家を訪ねる。
クルミは、しゃべるとき「あー」とか「うー」とか付ける癖がある。
サクラちゃんは、お上品な感じにしゃべる。
「ようこそ、おいでくださいました。神の使いの冒険者さま」
私たちはそれぞれ名乗る。村長は「アブダヒデ」と名乗った。
「ちゃんと名乗ったのは、お前さんたちが初めてじゃな。感心感心」
「それで村長さん。何か手伝えること、ありませんか?」
「そうじゃな。薬草を10個ほど、取ってきて下さらんか? 北東の森で明るい所に生えておりますじゃ」
「はい」
「ドクダミご存知かの。それっぽい草じゃ。夜は危険だから帰ってくるといいですぞ」
「わかりました。失礼します」
システムのホログラムに「クエスト:村長の
家を退出する。
まずは、私はアイテム類を確認した。
アイテムは、腰からぶら下げている謎の魔法の袋に入っている設定だ。
取り出すには、思考操作で行えるらしい。
●初心者ポーションx10
渋みがある。飲むと100%の効果が出る。体に掛けた場合、飲んだ場合の20%しか回復しない代わりに即効性がある。非売品。
種別:ポーション、飲み物
レア度:1 ランク:1
HP回復:1分で50上昇
利用者制限:ミケ専用 ※他者には効果がない
●初心者携帯食x10
ぼそぼそしてほとんど味がなく、不味い。非売品。
種別:食べ物
レア度:1 ランク:1
満腹度:30上昇
利用者制限:ミケ専用 ※他者には効果がない
●初心者復活薬x10
仲間が死亡したときに対象に使用すると、復活させることが可能。非売品。
種別:ポーション
レア度:1 ランク:1
他者復活:HP+10
利用者制限:ミケ専用
ポーションに満腹度が付いている。大量に飲むとお腹がいっぱいになるんだろう。
再使用可能時間はないが、飲むための時間が必要だ。
そして時間当たりの利用上限は満腹度で制御されているようだ。
強さとかの数値は表示されないけど自分のステータスを確認する。
Lv:1
HP:100/100
MP:100/100
満腹度:55/100
装備
初心者の杖
初心者のローブ
初心者の靴
スキル
マジックボール:Lv1
ちなみに、所持金はゼロだ。
私たちはさっそく北東の森に薬草取りに行く。
「ねえ、ミケ、サクラ。ドクダミわかる?」
「それくらいならワタクシ分かりますわ」
「私だって分かるよ」
「おう、シスター。分からないのは、わたしだけか。うがー」
「見つけたら教えてあげる」
クルミはドクダミを知らないようだ。