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ガチャで家を建てる!
るいす
現代ファンタジー都市ファンタジー
2024年08月03日
公開日
16,000文字
完結
30歳の普通のサラリーマン、田中一郎は、ある日突然「ガチャスキル」という奇妙な能力を手に入れる。このスキルを使うと、1日1回ランダムな物が現れるのだ。最初は小さな石像や缶詰といったハズレばかりで戸惑う一郎だったが、やがて金の延べ棒や未来の技術書といった大当たりを手にすることになる。

ガチャスキルで手に入れたアイテムを換金したり、特許を取得したりして資金を貯める一郎。しかし、使えない電子機器や偽物のブランドバッグなど、ハズレアイテムに悩まされることもしばしば。友人たちの協力を得ながら、彼は次第に資金を増やしていく。

第1話: 不思議なボタン

田中一郎は、いつものように朝の通勤ラッシュの中にいた。薄曇りの空の下、駅から会社までの道を歩きながら、彼の目は何気なく周囲の風景を見渡していた。サラリーマンたちの足音が響き、朝の忙しさが街に漂っている。

「今日はちょっと遅れそうだな…」と、一郎は時計をちらりと見る。毎日の通勤がルーチンになっているとはいえ、今日は何か違った。

ふと、彼の目に止まったのは、歩道の脇に落ちていた小さな光るボタンだった。周囲の人々は誰も気に留めていないようだったが、一郎はそのボタンに引き寄せられるように足を止めた。光を反射するそのボタンは、まるで何か特別なものを内包しているかのように輝いていた。

「これ、何だろう?」と一郎はつぶやきながら、ボタンを手に取った。手のひらに乗るそのサイズ感は、ちょうどいい具合で、何となく不安を感じさせるほどの魅力があった。

会社に着くと、一郎は早速そのボタンのことを同僚の佐藤美咲に話した。「見て、美咲さん。今日、道端でこんなのを見つけたんです。」

美咲は興味深げにそのボタンを覗き込み、「へえ、光ってる。なんか不思議な感じがするわね。何かのスイッチかしら?」

「試してみてもいいかもしれないですね」と一郎は微笑む。美咲の言葉に後押しされるように、一郎は自分のポケットにそのボタンをしまい込み、昼休みの時間に帰宅することを決めた。

昼休み、一郎は家に戻り、ボタンを取り出してテーブルの上に置いた。彼は少し緊張しながらも、そのボタンをじっと見つめていた。「さて、どうなるかな」と一郎は心の中でつぶやくと、ボタンを押した。

瞬間、ポンッという小さな音とともに、目の前に小さなカプセルが現れた。カプセルを開けると、中には小さな石像が入っていた。石像は一郎がよく知っている日本の古い神様の像に似ていた。

「これ、なんだろう…」と一郎は首をかしげる。石像は見た目には何の変哲もないが、一郎の心には少しだけ期待が残っていた。

その夜、一郎は家族と食事をしながら、今日の出来事を話題にした。「今日は変なものを見つけたんだ。光るボタンを押したら、こんな小さな石像が出てきてさ。」

妻の美咲は微笑みながら、「それ、面白いわね。でも、石像だけじゃ何も変わらないんじゃない?」

「まあ、そうなんだけど…でも、何かが始まるかもしれないし、もう少し試してみるつもりだよ。」と一郎は答えた。

その晩、一郎はボタンのことで頭がいっぱいだった。眠る前に、次の日もガチャを引こうと決心し、期待と少しの不安を抱えながらベッドに入った。

翌朝、一郎はワクワクしながらボタンを取り出そうとしたが、家の中で再びボタンを押すことができないと知った。どうやらボタンを使うのは一日に一度だけのようだと気づき、少しがっかりしながらも、「まあ、仕方ないか」と自分を納得させた。

「今日は家に帰るまでガチャはお預けだな…」と一郎はため息をつき、日常の仕事に戻るのだった。

一郎の心には、次のガチャに対する期待がますます膨らんでいった。次はどんなアイテムが現れるのか、その期待は高まるばかりだった。

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