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帰りたい(312回目)  突破口だ!!


 駆け寄ってきたセルマは、そのまま背中越しに扉を閉めた。


「“ハイ・バリア”!」


 そうして、完全に扉を塞ぐ。

 起き上がったアタシは、セルマの隣に駆け寄った。


「すまねぇ。でもいいのかよお前」

「元々そういう作戦でしょ。外からの援軍が頼めない、けどみんなで脱出しなきゃいけない時は、アデク隊が殿しんがりになって戦うって」

「そう、だけどよ」


 捕虜や隊の中には、重症人だっていたはずだ。

 今癒師いやしのセルマがパーティーから離れるのは、怪我人が放置されてしまうことになる。


 それはマズいんじゃないのか────


「怪我人した人たちは止血して、ヘリアさんに任せてきたわ。すぐに地上でララさんに観てもらえば、多分大丈夫」

「そっか、ごめんな。アタシひとりで闘えてりゃ……」

「止めてよ」


 腰の辺りを杖の柄で小突かれた。脇腹が弱いから変な声が出そうになる。

 戦闘中だぞ、そういうの止めろよ!


「今いるメンバーで一番クレアちゃんと連携して戦えるのは、自分だもの。

 それに、この人はクレアちゃんだけの敵じゃなく、皆の敵よ。自分が来たからには、ここからは通さない!」

「迷いなく戦闘を選ぶか! やはり私の目に狂いはない! 女術師、貴様はやはり合格!」


 おっさんはビシリとセルマを指差す。

 またセルマが喜ぶ前に、アタシは耳打ちした。


「とりあえず情報共有させろ。あのおっさんはさっきも見た通り、指を弾くことで岩を爆破させる能力みてぇだ。

 さっきのレンガも爆発させやがった。爆発の威力はそんなに高くなさそうだけど、当たったら厄介だ」

「さっきミリアちゃんが当たったやつよね……」

「それとあんなんでも動きが素早い、パワーも真正面からだと押し負ける」


 さっきのレンガを爆発させたのを見るに、隙を見せれば下は地雷だらけも同然だ。

 しかも敵のタイミング次第で起爆は自在。この瞬間にも敵の攻撃で、地面が爆発しないとも限らない。


「あっ! あと気を付けろ、そいつすぐ点数つけてくるから!」

「それ関係ある!?」

「調子が狂うんだよ! 合格合格ってうるせぇから!」


 きっとアタシたちのペースを乱す作戦だ。

 そういう心理戦にアタシは弱いのかもしれない。


「じゃあこっちからも情報共有。さっき重傷者だけでも避難させようと思って使ってみたけど、外への転移魔法は既に使えなかったわ……」

「緊急用のバリアを、ラディウス様が魔物を使い纏わせたのだ。外との転移魔法での行き来は出来んものと思え。

 それは無論、いま術師の貴様が懐に隠している、予備の魔方陣で逃げると言うことも叶わんと言うことだ」

「丁寧に御解説どうも……」


 セルマが苦々しげに言う。やっぱりそう来たか、その状況は想定内だ。

 要は避難が終わったからアタシたちだけポンと逃げる、が出来なくなったってことだろ?


「そんなのコイツを倒しちまえばいいだけだ! どうせ逃げも隠れもしねぇよ!」

「その意気や良し! 貴様の気迫だけで、値合格だっ!」

「そうかよっ!」


 アタシは飛び出してボードで切りかかるが、おっさんは体勢を低くして難なく避ける。

 そのまま飛んできた足払いを、アタシはボードを一瞬浮かせて避けた。


「ならばこれはどうだ!?」

「なっ!?」


 おっさんがいつの間にか手に持ったレンガを、こちらへ放ってきた。屈んだ瞬間に床から取り出したのか!!

 爆発するっ! 反射的にボードを前に出して防御体勢をとってしまう。


「いい判断だが不正解だな、こちらが本命だ!」

「がっ!」


 不意のパンチに、ボードの盾を駆使しても強烈な衝撃が来て、アタシは吹き飛ばされる。

 そして飛ばされた先には────岩の壁!?


「そこだっ」

「っ! “グライフ・フランメ”!」


 爆発する岩に対し、アタシは空中で体勢を立て直してから、ボードからでた炎をぶち当てて一瞬相殺する。

 その隙間を狙って、セルマが間にバリアを展開した。


「“ハイ・バリア”!」

「がぁっ! あじいっ!」

「大丈夫クレアちゃん!? 全部は防ぎきれなかった!」


 駆け寄るセルマを、アタシは手で制す。


「大丈夫だっ、大丈夫」


 実際結構痛かったし服がちょっと燃えたけど、軽傷で済んだ。

 まだ両手足は繋がってるし、体も動く。


「なるほど、よいコンビネーションだ。飛ぶ大盾軍人、貴様にはよいサポートがついていると見える。責め方を変えてみるか……」

「なに?」

「そちらの女を狙うということだっ!」


 そういった瞬間、おっさんがセルマの元へ走る。

 けれど、そういう状況の対策をしていないわけがない!


「セルマ、そっち行ったぞ!」

「“魔力砲ファル”!」


 セルマの放った光線を、おっさんは難なく避ける。


「ふっ、甘────なにっ!?」

「かかった!」


 怯んだおっさんが、前につんのめる。その足元に絡まるのは、セルマの鎖だ。

 おっさんが迫ってくるのを見越して、光線で視界を奪いつつ足元まで鎖を伸ばしていたんだ!


「“通電エレクトロ”!」

「がっ! この、しびれは!?」


 鎖を通してセルマが雷の魔力を送り込む。

 その間に、アタシは杭打機パイルバンカーおっさんに迫った。


「“一角獣アインホルン・ラーゼン”」

「ちっ!」


 おっさんが指を鳴らすと、セルマとおっさんの間にあるレンガが爆発する。

 先程よりも軽い爆音が、トンネル内を抜ける!


「きゃっ!」


 セルマの鎖を爆発で無理矢理千切り、おっさんはアタシの横を抜けていった。くそ、逃がした!

 けれどさっきのやつは、いままでのどの攻撃よりも手応えがあった。


 あの素早さも拘束してしまえば、あまり意味をなさないみたいだ。


「ついに合格って言わなくなったな、ガキ2人相手に余裕見せれなくなってきたんじゃねぇのか!?」

「否定できん。不覚にも、な。どうやら後衛と見て無闇にその術師を攻撃すれば、それこそ手痛い目に遭いそうだ」


 そういって、おっさんはジリジリと距離を取る。

 ただそうやって強がってみたところで、アタシたちも攻め手に欠けている。


 何とかあの爆発を攻略するなり、隙を突くなりしないと。



 いや────そもそもあの爆発って、何だ?



「なぁセルマ、何で指を鳴らすと、岩が爆発するんだ?」

「え、それはあの人の固有能力が、【指を弾いくと岩を爆発させられる能力】だからじゃないの? それってエリーちゃんが何で猫と話ができるかって言ってるようなもんじゃ?」


 確かに、固有能力はある程度そういう理屈を押し退けて発動できる魔法が多いのは聞いたことがある。

 ただ今回の場合は、何か違う気がする。固有能力で片付けるには、違和感が多い。


 例えば────


「ミリアが攻撃された時、なんで一番近い岩が爆発しなかったんだ?」

「えっ!? それは…………」


 確かに、アタシもセルマも、ミリアが爆破される現場は見ていた。

 アイツが喰らったのは、2つ隣の岩だった。もしよろけて手を突いた岩が爆発していたら、アイツは即死だっただろう。


 負傷兵を出した方が、それに付き添う人間の分、敵を減らすことが出来るという話もあるけれど、ヤツは間違いなくミリアを殺す気で岩を爆発させていた。


 そもそも基地が崩れる心配はあるとは言え、即座にこの床を絨毯爆撃しちまえば、それでアイツは勝てるはずだ。



 それをしないってことは、どの岩やレンガでも、爆発できるわけじゃ、ないのか────?



「セルマ、ひとつ試させろ」

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