「こんにちはこんにちは! デリバリーはここであってますよね? 私に任せてください、すぐに地上まで掘り進めますよ!」
なんかうるせぇのが来たぞ────!
「えっとこちらの指揮官様はどちらでしょうか!? ヘリア様がいると聞きましたがいらっしゃるのでしょうか!?」
軍服ではなく、支給のTシャツにヘルメットを被っている彼女は、穴掘りが得意と聞いている。
この地下の牢獄から横穴を掘って、外へ脱出する作戦だ。
「えっ、あー、ヘリアさんならあの人だぜ」
「ありがとうございます! ジュール・ジュリエットb-1級、行って参りますっ!」
ヘリアさんを指差すと、ジュリエットと名乗る女軍人はやかましく駆けていった。
あの人、潜入任務には絶対向いてないだろ────
「あぁ見えて、穴掘り技術は軍でイチバンらしいわ」
「アタシ何も言ってねぇけど」
「眼が言ってたから」
隣のセルマにはバレてた。でもそんな話は会議の時アタシも聞いてたから、余計な注釈だ。
「ほいほい、場所は大体把握しました。ここならこっちの方向に掘り進めば地上に最短出てれましょう。じゃあ掘りすっすめますよぉ~!」
そう言うとジュリエットは壁の岩を砂のように掘り進めていく。
彼女の【ドリル・アーム】は、一定時間崩れないトンネルを地面や岩盤に作ることが出来るらしい。
そんなことをしていると、勝手に持ち場を離れていたミリアが戻ってきた。
「入り口の方には、もう人はいなかったよぉ~」
「勝手にどっか行くんじゃねぇよ……」
「ごめんねぇ────おっとと」
ついでに床につまずいて壁にもたれかかる。
この女、敵の拠点なのに全く緊張感ない。仮にもa級にまで昇進してたハズなのに。
あとでエリーに叱ってもらおう、アタシらが言っても気にしそうにない。
「全くよぉ……」
しかしそのとき、たまたま視界に入った光景。
ミリアが背にする奥、ここへ入るときに使った入り口。
その扉が、外側から空いた────
「っ!!!!! ミリア敵だ!!」
「えっ……?」
こっちに向いて歩いてきていたミリアの反応が遅れる。
「油断っ!!!」
そう敵が叫んだ右手で指をパチンと鳴らす。
その瞬間、ミリアから少し離れた岩が爆発した!
「があっ!!」
「ミリア!!?」
爆風で吹き飛ばされたミリアは、そのまま突っ伏して動かなくなる。
硬いレンガの床に、静かに血溜りが広がっていく。
「セルマ援軍!」
「やってる! だけど呼べな────」
「“ドラッヘ・アクスト”!」
セルマが言い終わらないうちに、アタシは敵へボードで突っ込んだ。
避ける間もなく土手っ腹に、金属の先端部が直撃する。
「ぬっ!?」
「ぶっ飛べっ!!」
衝撃に耐えきれず、敵は廊下の一番奥の壁まで吹っ飛び激突した。
土煙が立ち、壁の一部が崩れていく。
「悪く思うなよ……」
見回すと扉の近くに、見張りをしていた奇襲隊の2人が転がっていた。
どちらも殴られたような痕ができている。
火傷はナシ、爆発音も外から聞こえてこなかったから、ミリアみたいに爆発に巻き込まれたわけじゃないのか?
「セルマ、ここに怪我人2人! 治療早く!」
「了解!」
セルマが駆け寄り、鎖とバリアを使って2人を扉の奥へ運ぶ。
「早く地上に運んで手当てを────」
「ふん、このオレが敵と分かるや否や、即座に攻撃に入ったな? 味方に飛び火せぬよう、遠くへ吹き飛ばすことを優先したか」
「なっ……!?」
背後からの声、振り向くとガラガラと崩れる岩を押し退け、敵が立ち上がる。
まともに喰らって起き上がるとは思いもしなかった。
吹き飛ばす威力は少なくとも、アタシの本気だった。
「速かったな、それに比例する威力。その若さで大したものだと評価させて貰おう。合格だっ!」
「おっさん、まだ立ち上がんのかよ。ムリすんな!」
強がってみたけど、ヤバいのはアタシの方だ。
この状況で怪我人もいる背後の仲間達が脱出するまで、このおっさんと戦わなければいけない。
おっさんは岩を爆発させる謎の魔法だか能力を使ってくる。更なる敵だって現れる可能性もある。
「ちっ、だったら速攻でケリつけてやんよ! “ドラッヘ・シュナイデン”!」
「ふん?」
ボードの先端の刃で斬りかかるが、敵は軽々と避ける。
結構な巨体のハズなのに、動きはかなり素早い!
「突然斬りかかる蛮勇────でもないな。背後の捕虜達を守るために、自分に目を向かせる気か」
「そうだよいちいち説明してくれんなっ!」
アタシは隙をついて、敵の腹を蹴りあげる。
「っ!! 無粋だったな、しかしその判断の早さも評価に値する! 合格だ!」
「知らねぇよ」
敵は距離を取って、すぐさま構える。お互いにジリジリと睨み合いが続く。
とりあえずコイツは指を弾くことで岩を爆発させることが出来るのは分かっている、それもミリアを一撃でのす程の威力。
ただし、どうやらそれには少なくとも目視が必要だ。扉の内側にいるミリアを覗いてから爆発させたのが証拠。
それ以上は敵の能力がどういうものかは分からないけれど、考えてもしょうがないからとりあえずはそれだけ分かってればいい。
敵は扉に近づけさせない、爆発させる隙も与えない、やることはそれだけだ。
少なくともセルマも同じことを察して、牢屋部屋の扉を閉めておいてくれている。
「チーム同士よい連携だ、そこにも合格点をくれてやる!」
「いちいちうるせぇ! 女に点数つけんなって教わんなかったのか!?」
「女として点数をつけているつもりはないな。ここに立つならば戦士、性別など二の次だ。そらっ!」
敵が指を弾くモーションに入った瞬間、アタシは背後にボードを構える。
瞬間、真後ろから2つとなりの岩が爆発して、アタシは吹き飛ばされた。
「くっ────!」
受け身を取りつつ、壁から充分に離れていることを確認して、立ち上がる。
するとさらに敵が迫ってきて、こちらに鋭い蹴りを放ってきた!
「ぎっ!」
「その飛ぶ板は盾になるか。うまく防御するもんだな、合格!」
「聞き飽きたよ……!」
ギリギリと力の押し合い、拮抗が続く。
「若いの、凄まじいな。敵基地で油断するような不合格の輩がいる集団だと無意識に甘く見たが、少し本気を出さざるを得んかもしれん……」
「ちっ」
ミリアをバカにされたのは腹が立ったけれど、アイツが油断して今死にかけてるのは事実だ。
頭に登りかけた血を、必死にクールダウンさせる。
「本気をだしたら、どうなんだよ」
「今から捕縛は諦め、殺す事を優先して戦わせてもらう。
冥土に行く前に名を聞いて行け! 私の名はメイナード・グランダ! この牢獄の看守長だ!」
「聞いてねぇし行かねぇよクレア・パトリス!」
こちらが名乗ると同時に、敵の力がさらに強まる。
「いい名だ」
「うおぉっ!?」
そして力任せに押されたアタシは、ボードごと背後に吹き飛ぶ。
「いって…………!」
臨戦態勢に戻ると、敵が指を構えていた。また爆発がくるのか!?
けれど、壁には充分に離れている。
一体どこが────
「下っ!?」
床に敷き詰められていたのは、無数のレンガ。
気づいた瞬間、アタシは前方に跳んだ。
「遅いっ!」
爆発が起き、アタシは地面を転がる。
赤い炎と、爆音が基地内に響く。
「っ────あぁっ!!」
身体が痛かった、火傷するような熱さも感じた。
けどアタシ、まだ生きてる?
「間に合った!!!」
「セルマ!?」
起き上がると、牢部屋から出てきたセルマが立っていた。
爆発の直前にバリアを張ってくれたんだ、助かった!!!
「もうひとり気骨のありそうなヤツが増えたな! 今の状況判断、そこの術師も合格だ!」
「え? なんか分かんないけど────や、やったー?」
喜んでんじゃねぇよ!